3 初めて遭遇したのは美少女・・・人魚なの?
一人めのヒロイン登場。
それから、しばらくして俺は近くの木に背を預けて休んでいた。
膝の上にはさっきまで警戒して隠れていた羽がはえてる兎が穏やかに寝ている・・・何故かって?
なんか、あのあとに疲れた俺は木に背を預けて座ったんだけど・・・いつの間にか恐る恐る近づいてきた兎がほんとにゆっくり俺の匂いを嗅いでから・・・膝に座って寝はじめたのだ。
うん、自分でもなにを言ってるのかさっぱりだけどね。
でも、なんかそういう行動をしてから兎はやけに俺になついたのか膝にゆったりと座って寝ているのだ。
まあ、羽がはえてるけど可愛いものは可愛いしそのまま俺は膝に乗せてるけど。
撫でても逃げないようなので、俺は兎を撫でて考える。
あ、ちなみに兎の触り心地はなかなかいいよ。
野生の兎にしては毛の艶がよくて、触ると包み込むような柔らかさがあって心地いい。
おまけに、撫でてると気持ちいいのか時々「きゅー」と鳴くからなお可愛く感じる。
と、それはともかく、俺はさっきの神様(自称)・・・シーの言葉について考えていた。
正直、判断材料は少ないけど・・・少なくともこんな羽根つきの兎やら、さっきから時々上空に見える竜・・・それに、シーのような人間ではあり得ない美しさの美女という存在が俺に異世界という言葉を信じさせられる。
さて、ここが異世界なら・・・この先どうするかを考えなきゃダメだろう。
ラノベとかだと、元の世界に戻りたいとかって展開もありなんだろうけど・・・正直、元の世界に未練はない。
本来なら両親が・・・とかって心配もあるんだろうけど、俺はあの両親についてはあまり考えたくない。
まあ、彼らにも様々な事情があるんだろうけど、少なくとも俺は彼ら・・・両親が俺を心配しているとは微塵も思わないし、学校の連中も、ただ共通の敵が消えて新しい敵を作ろうとするだけだろう。
おそらく俺が消えた責任をその新しい敵役に押し付けて、また「皆仲良く」するために団結し直すだけ。
だから特に元の世界に未練はないのだが・・・この世界のことを知らなすぎるので、どうしたらいいのかもわからない。
シーの言う通り、この世界がほんとに人間の少ない世界なら、俺はもしかしたら・・・なんて幻想を抱けるけど、会ってみないことにはわからない。
神様と名乗っていたはずのシーからは特にこの先どうしろとか指示もヒントも貰ってない。
だから、この先俺がどうすればいいのか正直本気で悩んでしまう。
森の中を闇雲に歩いても方向が分からない上にどちらに行けばいいかも分からないし・・・この辺りには若干食用に見える果物もあるけど、この先にあるかは分からないし、何より異世界なら・・・魔物とかいそうで迂闊に動けない。
つまり、初っぱなで詰んでる状況なのだ。
「はは・・・クソゲーだな・・・」
思わず笑いが込み上げてくる。
異世界転移して、最初で躓くとか・・・これがらラノベの主人公ならマジでカッコ悪い・・・というか、今の俺って「クラス皆で異世界に飛ばされてから最初に調子に乗って死ぬモブ」並みのスペックしかないのにどうしろと?
「きゅ・・・」
「ん?どうした・・・って、なんかいるのか?」
そんなことを考えていると、膝の上で寝ていた兎が急に起きあがり、林の方向を見はじめた。
遅れて俺も何かが近づいてくる音が聞こえてきた。
林を掻き分けるような音はだんだんとこちらに近づいてきている。
「なんか・・・ヤバイか?」
これが知能のある生き物ならギリギリセーフ。
いや、人間なら盗賊とかもあり得るかも・・・それはアウトだな。
どのみち、人間なら全般的にアウトだな。うん。
まあ、とにかく知能のある生き物なら大丈夫かもだけど・・・野生の肉食の動物とかならピンチじゃね?
俺は現在丸腰で武器もない。
いや、あっても別に戦えないけど・・・
その上、装備も制服だから正直防御力は心もとない。
まあ、つまり・・・バッドエンドが見えたぞってことで・・・
「とりあえず、お前は逃げな」
俺は諦めてその場に座り直した。
どうせ逃げても野生の動物とかならもうおしまいだろうし、仕方ない。
でも、せめて兎だけでも逃がそうと俺は兎に言葉をかけた。
「きゅーきゅー」
「お前・・・一緒にいてくれるのか?」
「きゅー!」
兎は俺の逃げろという言葉にすがるように俺に抱きつき、そのあとの台詞に力強く鳴いた。
「そうか・・・お前は優しいな・・・」
「きゅー・・・」
兎の頭を撫でてやると兎は気持ちよさそうに目を細めた。
俺はそんな兎をみて、場違いにも嬉しくなった。
初めて一緒にいてくれると言ってくれた(言ってはいないけど)兎に俺はボッチな人間ならではのチョロさで籠絡されたようだ。
ガサッ
そんなほのぼのとした時間は目の前の草が揺れる音で終わりを告げた。
ああ・・・最後にお前と会えてよかったよ。ありがとう兎。
そんなことを考えて俺はその音がきこえた方向を静かに眺めて、最後の時を待った。
「え・・・・?」
が、草むらから出てきたものに意表をつかれて、その考えは消えた。
「女の子?」
草むらから飛び出したのは俺と同い年くらいの少女だった。
少女は草むからから出てくると、力尽きたようにその場に倒れた。
「えっと・・・大丈夫?」
俺は意を決して近づいてから・・・久しぶりに人に話しかけた。
いくら人間が嫌いでもこんな状況なら放っておくのは俺の良心に響く。
そんなことを考えて近づくと、少女は初めてこちらに顔を向けた。
その姿に俺はまたしても意表をつかれた。
少女は見たことないくらいの美少女だった。
水色の長い髪とサファイアのように煌めく瞳。
整った顔立ちに、服の上からでも分かるスタイルの良さ。
しかし、俺が驚いたのはそこではない。
その少女は足がなかった。
変わりにあったのは魚のようなまぶしい艶のヒレ。
下半身が魚のヒレなのだ。
「人魚・・・・?」
俺は思わずそう呟いていた。
少女は焦点の合わない瞳でこちらを見ていたかと思うと、力尽きたようにその場に倒れた。
慌てて俺は少女に近づいた。
ところどころに細かい怪我はあるけど、疲れて寝ているだけのようなので、俺はとりあえず少女に制服の上着を掛けて寝かせた。
少女を見つめて、俺はとりあえず呟いた。
「本気で異世界なんだ・・・」




