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30代からの婚活デビュー  作者: あまやま 想
第15章 春樹が残してくれたもの
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春樹が残してくれたもの①

 十月に入って最初の土曜日、花上家には花上道夫・美冴夫婦、鳥飼俊夫・富子夫婦と花上華・遥斗親子の六名が再び集まる。


 この日は運動会翌日の代休に突然現れた保険外交員が来て、正式に交通事故の損害賠償の手続きをすることとなっていた。思わぬ形で、春樹が残してくれたものの大きさにただ感謝するのみであった。


 この頃になると、春樹が職場で加入していたジフラルタル生命や二人で話し合って加入していたかんぽ生命、大手生保の死亡保険金の金額も確定した。


 一括受け取りしかできない分は、十月末に入金される。その額は約七千万円とのこと。分割で受け取れるものは分割にして、これから月ごとに十万ほど入金される。


 つまり、十月末から月に三五万円が毎月入るようになる。案外、春樹は自分が長く生きられないことが分かっていたのか?…とさえ思うほど、用意周到に保険加入していたことに華は改めて驚かされた。


 五人で話し合った末、一括受け取り金で小さなマンションかアパートを一棟買って、大家として家賃収入を稼いだらどうかと言われた。これなら、これから働かなくても生活できそうだ…。


 しかし、華は遥斗が三歳ぐらいになったら保育士として、再び働きたいと考えている。やはり、どんなにお金があったとしても、社会とのつながりがないと人としてダメになりそうな気がする。


 また、親が定年後もかつての職場の人々との交流を続けている姿を見て、どんな形であれ、人とのつながりは大切だと痛感させられたからだ。


「これで華さんと遥斗の生活も安定して、お互いに一安心ですな!」


「そうですね、道夫さん。一時期は本当にどうなるかと思いましたけど…。いや、本当、春樹君はちゃんと残された人のことまで考えていてくれていたんだと…」


 義父と父のそれぞれがしみじみとつぶやく。それを聞いた義母と母も、それぞれがうんうん…とうなずいていた。まあ、考えるよりも体が先に動くような人だったので、万が一のことを考えていても不思議ではない。


 彼とて人間だ…。捨て身で人助けをしていて、これはさすがにやばいと思ったことも当然あっただろう。それでも、このような結末を迎えるほどである。


「それでは、手続きは以上となります。保険金は毎月二八日に入金され、二八日が土日祝日の時はその直前の金曜日に支給されます。最後に、何かご質問等ございますか?」


 保険外交員は書面から顔を上げてから、五人を一通り見回す。五人とも質問がないことを確認すると…


「無いようですので、私はこれにて失礼致します」


 そう言って、外交員はあっと言う間に帰って行った。それにしても、いくつかの書類に署名と捺印をするだけで、三二年間に渡って毎月二五万が入ってくるとは夢のような話である。


 もちろん、加害者側の署名と捺印もすでに入っており、華は、加害者の母親である菅原澄子の名前を見るたびに、虫酸が走ったのは言うまでもない。

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