婚活の狂気が冷めた朝②
「よし、遅い朝食を食べに出かけるか! 田井島、お前、今日の予定は?」
「いや、特に何もないですね…。田吉さんは?」
「あるか! 何もないから、聞いているんだ。お前なあ、少しは会話の行間を読め!」
そう言って、田吉は朝の身支度を始めた。その合間に、田井島に洗いたてのタオルを渡す。口は悪いが気遣いはできる人なんだよな…と思いながら、台所で顔を洗う。
おっさんは、シャワーを浴びに浴室へ行ってしまった。顔を洗った後、既に付けてあったテレビをぼんやりと眺めながら、田吉を待つことにする。
「おい、田井島、お前も入ったらどうだ? 二日酔いの体がさっぱりするぞ!」
「いや、いいですよ。そんな…」
「遠慮するなよ。一緒に寝た仲じゃないか…」
明らかに誤解を招く表現である。このおっさんの口は悪いを通り越して、はっきり言って下品だ。田井島は着替えがないことを理由に丁寧に断った。田吉も、
「まあ、そうだな…」
と言って、それ以上は何も言わなかった。
「よし、日曜の街へ二人でくり出すか…」
「はい…」
「とりあえず、そばでも食べに行くか。やっぱり、飲んだ日の翌日はさっぱりしたものが一番だな…」
それにしても、田吉のおっさんはよくしゃべる。田井島はさっきから「はい」とか「ええ」とか「ああ」しか話していない。二日酔いで頭がうまく回らないのだ。
それに気分が悪くて、話すのがおっくうだ。おっさんも頭が痛いと言っていたのに、まあよくしゃべるものだ。シャワーを浴びてすっきりしたのだろうか…。
「あ、コンビニでウコンの力、買ってもいいですか?」
「ああ、いいけど…」
そば屋へ行く途中、コンビニがあったので寄ることにする。行きたい時に目の前にコンビニがあれば、セブンでもローソンでもファミマでもサンクスでもデイリーでも別に構わない。コンビニに対するこだわりは特にない。
飲み過ぎた翌朝、田井島は必ずウコンの力を飲むことにしている。飲むとその後が全く違う。プラシーボ効果でウコンの力自体には何も効果がないと言う人もいるが、鰯の頭も信心から…と言うではないか。おっさんは、コンビニでは特に用もないらしく、雑誌をパラパラと眺めるだけだった。
「田井島、お前、酒弱いのか…」
確か、昨日何回もそのような話をしたような気がするが…。案外、田吉も酒で記憶を飛ばしているのかもしれない。




