婚活の狂気が冷めた朝①
ん? ここはどこだ。朝、田井島は自分の部屋でない所で目覚めた。あれっ? 昨晩、一体何があったのか…。ああ、そう言えば、昨日の夜は調子に乗って飲み過ぎたな…。頭が少しガンガンする。
ああ、そう言えば…生まれて初めて参加した婚活の合コンボーリングに参加したんだっけ? そこで、田吉太一と柚木結鶴に出会った。
それから、会場で意気投合して、合コンボーリングが終わった後に三人で飲んで、まゆ毛がどうのこうのとか、服装がださいだの言われたっけ? あっ、思い出した! まさか…。
田井島は鏡を見てみようと思ったが、ここは自分の家でないので、どこに鏡があるのか全く分からない…。隣にはおっさんが気持ち良さそうに寝ている。
柚木はあの後、きちんと帰ったようだ。まあ、野郎二人がいる部屋に泊まろうとは思わないだろう。仕方ない…。田吉宅を探検しよう。田井島は隣の人を起こさないように、洗面所へと向かう。あっ、あった! 田井島は鏡を見る。
「あー! 何じゃ、こりゃ!」
田井島は、きれいに整えられたりりしいまゆ毛に違和感を覚える。そして、自分の顔でないような不気味さに思わず叫んでしまった。ここが田吉宅であることも忘れて…。
昨晩まであったはずの力強くて太いまゆ毛が、細くてさわやかなりりしいまゆ毛に変わっている。まゆ毛一つで、見た目がこんなに変わるなんて…。その…何と言えばいいのか、別人の顔を見ているようだ。
「何だ。朝から騒ぐなよ…。こっちは飲み過ぎて、頭が痛いんだ…」
「あっ、すみません。まゆ毛がすごいことになっていたので…。思わず、びっくりしてしまって…」
「お前、昨日のこと、覚えていないのか? 結鶴と俺の二人で、まゆげを整えてやったら、『これ、いいっスね…』って大喜びだったぞ」
田井島にとって、全く記憶のないことだった。どうやら、田吉宅に来てからの記憶が完全に抜けているようだ…。
「えっ、全然、覚えてないですよ…」
「そうか。あまりの出来のよさに、お金をもらいたいぐらいだ…と言ったら、お前、一万円払うと言っていたぞ」
「マジっスか? でも、さすがに記憶を失っても、さすがにそんなことは言わないと思いますけど…」
「本当に覚えていないようだな…。それにしても、本当に食えねえ奴だな…。勝手にボケることはできても、肝心な時にボケることができないとは…」
余計なお世話だ。別にお笑い芸人を目指している訳ではないので、執拗にボケることを求められても困る。田吉が続ける。




