主(あるじ)を失った家⑤
さすがの義父母も、いつもの力強さがない。それにしてもあの方は、どうして食事前にやって来たのだろうか…。
「いや、お義父さん、やめてください…。義父さんも何も悪くないですから…」
「まあ、あの人がしばらく来るようなら、華さんはしばらく鳥飼家で生活した方がいいかもな。自分の実家でのびのびと暮らした方がいいだろう…」
えっ〜。声にこそ出さなかったけど、意外な形で義父が折れた。謝罪に来た母親のことを許すことは、多分一生できないだろう。
しかし、意外な形で自分の思惑通りに物事が動いたことに関しては悪い気はしない。もしかしたら、春樹が天から見守ってくれているのかも…とさえ思える。ようやく、遥斗も落ち着いた。
それにしても、この子が火のついたように泣くのは本当に珍しい。この子には泣き顔よりも笑顔が似合う。父親によく似て、顔立ちもよく整っているから笑顔が実にぴったりだ。
「しばらくは、華さんの実家でゆっくりして、週末は今日みたいに遥斗ちゃんを連れて遊びに来てよ。そうしたら、春樹も喜ぶからさ…」
義母がさりげ無く春樹の名前を騙って、遊びに来るように促す。さすがは義母。さりげ無く春樹の名前を使うあたりが、同じ女性としてさすがだな…と思わされる。同じ戦略を取られるんですね…お義母様。
「せっかく、母さんが作ってくれた料理だ。まあ、しばらく話していたら、気も紛れたよ。今日は炊き込みご飯に、サンマの塩焼き、しめじのみそ汁、干し大根のおひたしか…。秋だな…。うん、おいしい。華さんも遠慮せずに食べなさい。おいしい物を食べると、嫌なことも忘れるさ!」
「まあ、父さんったら…」
もし、春樹が生きていて、ずっと仲良くしていたら、義父母のようになれていたのかもしれないな…。ちょっとばかり愛情過多で胃もたれしそうだけど…。
今は秋の味覚を食べて、一瞬の幸せに身を委ねることにしよう。そして、大き過ぎる壁のことを今だけ忘れることにする。




