田井島、30にして婚活に立つ①
田井島正行は高校時代の友人に頼み込んで、ボーリング合コンに一緒に参加させてもらえることになった。もともと、市役所勤めの田井島の周りにはそのようなことに長けている同僚はいない。
まあ、よくも悪くも安定志向なので、学生時代から付き合っている人とそのままゴールインするか、もしくは職場でそのまま相手を見つけて結婚…と言う人が多い。
そうやって、役所勤め同士とか、役人と教員とか、教員同士とかの公務員夫婦が職場を埋め尽くす訳である。だからこそ、三十過ぎて未だに結婚できない奴は、半人前なんてことが曲がり通る。安定志向の内向きな視野狭窄は、実に恐ろしい…。
それにしても、職場でも家でも似たような考え方の人と一緒にいるなんて、考えただけでも息苦しい…。田井島はなぜこんなに公務員夫婦がたくさんいるのか、とにかく不思議でならない。
これでは家に帰っても話題が仕事の話になりがちで、オンとオフの区別もつけられないだろう。まあ、うまく切り替えているから、夫婦生活が成り立っている訳だ。一体、どうしているのだろうか?
これまではそんなの必要ないと考え、合コンのたぐいの人脈を一切築いてこなかったことを、田井島は今さらながらに後悔する。高校時代の友人、秋津はもともと女好きで、女遊びが三度の飯よりも好きな奴である。
しかし、それ以外では考え方とか行動パターンがよく似ていたので、高校卒業後もちょくちょく会っていた。会うたびに飲みへ行ったり、カラオケに行ったりしていた。そして、口癖のように、
「田井島もさ、ちょっとくらいは女遊びしておかないと…。いざと言う時に困ると思うけど…」
なんて言っていた。これまでずっと何を言っているんだ…と思っていたが、三十にしてようやくその意味が分かるようになってきた。理解するにはあまりにも遅過ぎたかもしれない。
これまで鳥飼以外の女性とはろくに関わってこなかった男が、ある日突然結婚できるはずもない。そもそも何もない状態から、どうやって結婚までたどり着けると言うのか?
例えるなら、目的地はすでに決まっているのに、行く方法も手段も決まっていないし、お金もないから切符も買えないと言う極めて悲惨な状況にある。そんな状況下で藁にもすがる思いで、秋津に相談したところ、すでに結婚して一児のパパになっていた奴は喜んで対応してくれた。




