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烏の至宝  作者: 七転び
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強欲な烏がいた。


烏は総じて光り物好きだが、この烏の光り物好きは尋常ではなかった。

東の山に美しい玻璃があると聞けば東へ飛び、西の谷に鶴の羽根で織った布があると聞けば西に飛んだ。

宝があると聞けば、燃え盛る炎の中、荒れ狂う海の底にまで赴いた。

古今東西、世のあらゆる金銀財宝を手にしたいと願い、実際ありとあらゆる金銀財宝を手にしていた。

世界に一つしかない至極の名品を手に入れても、仲間の烏が持つ河原で見つけた白い玉砂利を羨み、かすめ取ったりもした。

誰にも見つからぬ、誰にも触れられぬ、誰にも盗まれぬ隠し場所で、それらに囲まれ、手にとり、眺める。烏にとって何物にも代えられない至福の時であった。


ある晩、隠し場所で金銀財宝に囲まれ、手に入れたばかりの珊瑚の(こうがい)を、烏はうっとりと眺めていた。

色斑のない珊瑚は、己の眼と同じで血のように赤い。都におわす今上帝すらこれ程の逸品は持っていないだろうと思うと、烏はこの上ない愉悦に浸れた。

だが烏の欲望は尽きる事がなかった。

金、銀、玻璃と続き珊瑚を手にしたからこそ、七宝を揃えたくなったのだ。

さて、何処から手をつけようと、ふと見上げた天から、光る何かが堕ちてきた。

漆黒の夜空に一粒の煌めき。


夜這星か、と、苦々しい記憶が脳裏を過り、上機嫌から一転、烏は忌々しそうに天空を睨みつける。

夜空を渡る美しい星。手に入れたいと願い、手に入れた。

だが地に堕ちた星はただの黒い石だった。

星の石を鍛え刀剣とし、これでもかと宝飾を施したことで己を納得させた。

それでも夜空にあるままの星を、煌めきのまま、輝きのまま、手に入れたいとずっとずっと思っていた。

地に堕ちると輝きを失う夜這星を、それとわかっていてもその輝きが見えなくなるまで、烏は身動きもせず凝っと睨みつける。


そして烏の執念ともいえる願いを誰が叶えたか、今宵の夜這星は、煌めきを失わなかった。


キラキラキラキラ 踊るよう

キラキラキラキラ 謳うよう


美しく、光り輝きながら地に堕ちた。


手に入れたばかりの珊瑚の笄が、手から滑り落ちた。金銀財宝が、一瞬でただの土塊になった。

後にそれが天に住まう人の魂だと知ったが、今、この場で、それを知ったとしても強欲で狡賢い烏は決して諦めたりはしない。


アレガホシイアレガホシイアレガホシイ






闇夜に烏が、クァと、啼いた。

玻璃:水晶

夜這星:流れ星


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これにて終了です。お読みいただきありがとうございました!

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