結婚?
「おーい……いい加減降りてこい。いつまでそんな屋上へいるつもりだ?」
「……………」
「シャイナ!………ハァ、どうするかなぁ」
髪をぐしゃぐしゃと掻き回しながら考える。案が浮かばない。
どうやってシャイナを屋根裏から降ろそうか……という話だ。
あれからが大変だった。
ウッカリとドジなシャイナはセヴィルに告白(?)した後、静かに立ち上がったかと思えば急に窓に向かって走り出し、慌てて止めようとしたセヴィルを振り切って建物の屋根裏へと猿の様にスルスルと登って行ってしまったのだ。
続けてシャイナの後を追おうとすると……
「来たら飛び降りるから!!」
怒鳴り声のような金切り声のような……そんなこと言われたら為すすべもない。強行突破して本当に飛び降りでもしたら大変だ。
「とりあえず……様子見だな」
屋根裏を見上げるセヴィルは呆れているようだが、それ以上に言葉に表せられない程の嬉しさが顔から溢れ出ていた。
『私は、セヴィルが好き』
恋焦がれた女性から「好き」と言われたのだ。もう少しで目の前のシャイナに理性が抑えられず抱き締めてしまったかもしれない。
そうなれば後はどうにもならない。
「……お互い頭冷やすには、これで良かったのか?」
誰もいない部屋の中、開け放たれた大窓の向こうに目をやりながらそう呟いた。
その頃、屋根裏のシャイナは………
「はぁーーーー…………馬鹿。馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿ー!!」
頭をポコポコ叩きながら数分前の自分の言動を責める。
巻戻せない時間が恨めしい。間抜けな自分が馬鹿らしい。
膝を抱えて頭を埋めながら体を揺らしてみるも、心臓の高鳴りは止む事がない。
バクン…バクン…バクン…バクン……
「うぅぅ……こんな事になるなんて。セヴィルに好きってバレちゃった……絶対に引かれた~。山に帰りたいよ~」
涙ぐみながら遥か遠くに見える山を切なく眺めた。
「……グスッ、やっぱ来るんじゃなかった…」
――――1時間経った。
シャイナは避難用ハシゴを一段一段ゆっくりと降りていくと、大窓から中の様子を窺ってみた。
「………………」
誰もいない。
ソロリソロリと部屋に舞い戻ると音を立てることなく出口へと一目散に歩いた。
「………今だ!」
ドアに近くなるとダダダダッとけたたましく走った。
「もうすこ……ひゃっ!!?」
ドアノブに手を掛けた所で後ろからひょいと現れたセヴィルに体を持ち上げられてしまった。
「捕まえた!」
「うわぁぁん!降ろしてよ~」
シャイナは足をばたつかせ、顔を真っ赤にしながらセヴィルの腕の中で暴れた。
「こら!暴れるな。隣に聞かれるだろ!」
「嫌ー!早く山に帰りたいよー!」
「…また俺を置いてきぼりにする気か?さっきの話の続きだが……」
「きゃーっ!!!言わないで!お願い!忘れて!あれはただの――」
「俺もお前が好きなんだよ!!」
「………………へ?」
水を打ったように静まり返った部屋の中、セヴィルは大人しくなったシャイナを降ろすと、正面に来て言った。
「シャイナ、俺と……結婚してくれないか?」
「………はい?」




