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Un re di demone  作者: クドウ
23/35

20

いよいよ納税の日がやって来た。

ニイナの部屋も用意したし、大浴場も完成した。

後は本人の到着を待つばかりといった感じだ。


身内から見ると分かり易く、カナトはそわそわと落ち着きがない。

ヲウルからの厳しい視線にも全く気付く様子がなく。


「ふは、カナト様子供みたいー」


「笑いごとじゃない!」


面白がるサイと、声を顰めて叱責するヲウル。

そうこうしている間に着々と貴族たちはやって来て、納税をこなしていく。

今回は馬やワインの他に、宝石やドレスなど、前回と違う姫たちに対する献上品もあった。


そしてヨハリア・モーガン伯爵の納税の時。

傍らには黒いベールを被ったニイナと、その侍女・エイミが並ぶ。

ニイナの持ち物は思ったよりも少ない。


伯爵からニイナ献上の旨が伝えられる。

『亡き父の未亡人であるが、本人の希望で王宮に上がりたい』

厄介払いなどでなく、あくまで本人の希望、である。


伯爵の納税が終わり、サイが2人を控えの間に案内する。

納税がすべて終わってからが再会の時である。







納税がすべて終了し、カナトは駆け足で控えの間に急いだ。

勢いよくドアを開けるとベールを被ったニイナが顔を上げた。


「カナトじゃ、ない・・・」


小さいが絶望の籠った声。

カナトの姿は前世とは勿論異なる。


「ニイナ・・・俺はニイナの知るカナトではないかもしれないが、カナトなんだ」


100%信じて貰えるとは、最初から考えていない。

ただ”転生”というのは神教ではよくあることだと考えられている。


「でも・・・」


「俺は儀式で確かに生贄になり、死んだ。だけど今こうして生きているのも、本当だ」


「・・・・・」


「カナト・フリュイは確かに死んだけど、俺はカナトなんだ。ニイナと過ごした10年間のこと、何でも覚えてるよ」


「本当に・・・?」


「本当だ。森でモンスター討伐した時、ニイナの魔法が初めて成功したことだって覚えてる。モンスターは黒狼だったよな」


モンスター討伐はすべて2人だけで行っていた。

特にニイナは魔法を使えることを隠していたはずなので、カナト以外に知る者はいない。


「カナト・・・?」


「そうだ、カナトだ。ニイナ、会いたかった・・・」


ニイナがカナトに走り寄り、勢いよく抱きつく。


「カナト、カナト!」


「ニイナ・・・」


柔らかな身体を抱きしめる。

ニイナはふわふわしていて、良い匂いがする。


「カナト、年下になっちゃったね」


「そうだな。ニイナは随分と綺麗になった」


睫毛を濡らし、微笑む。

そんなニイナを見てカナトはそう感想を漏らした。


「ありがとう・・・ね、大分おねえさんになっちゃったけど、今度こそ、お嫁さんにしてくれる?」


そうだった。

ニイナは超のつくブラコン。

前世から”お嫁さん”になりたがっていた。


「・・・ニイナは、俺の大事な半身だよ」


「カナト・・・」


頼むから、そんな悲しそうな顔をしないでくれ。

演技だと分かっていても騙されそうになる。


「さ、部屋に案内するよ」


ニイナをエスコートしながら、後宮へ案内する。

2階にニイナとエイミの部屋を用意してあるのだ。










「カナト様、言葉遣いがいつもより丁寧っていうか・・・キモイ?」


「サイ・・・」


後で覚えてろよ。



◇◇



部屋は元の世界でいうところのナチュラルというか、カントリー調というか。

若干アンティークな雰囲気もプラスしてある。

木製の家具を中心に、華美ではない部屋だ。

切り花を飾り、サシェを飾り、シンプルながらも可愛らしい。



「かわいい!」



ニイナとエイミがきゃっきゃと喜ぶ。

参考にしたのはニイナとカナトの昔の部屋だ。

家具はすべてカナトの手作りである。


「何かいるものがあったら何でも言って。食事は運ばせても良いし、食堂で食べても良い」


「カナトは?」


「俺は食堂」


「じゃあ食堂にするわ!エイミも一緒で良いの?」


「あぁ、一緒に食べて大丈夫だ」


食堂は2つあるが、使用人だろうが何だろうが、この王宮に一緒に食事してはならないというルールはない。


「4階に大浴場があるから、ニイナもエイミもいつでも入って良い。婦人同士共用だ。勿論部屋で湯浴みの用意をしても良い」


「楽しそうね!」


「カナト様・・・何から何まで、ありがとうございます」


「良い。今までニイナを守って来てくれてありがとう。エイミもいるものがあったら遠慮しなくて良いからな」


エイミの部屋も勿論、ニイナとお揃いで可愛く仕立て上げられている。

衣装ダンスにはそれぞれの普段着やドレス、靴も揃えているし、日々の生活に困る様なことはないだろう。


「カナト、私、普段何をしたら良いかしら?」


「何を・・・えーと・・・刺繍とか散歩とかか?婦人の趣味はよくわからないが」


「違うわ、お仕事のことよ。掃除も洗濯も何だって出来るわ。お城に住まわせてもらうのに、何もしないなんておかしいでしょう?」


「後宮の姫たちは何もしてないぞ?」


「・・・後宮の姫、たち?カナトにはそんなに沢山のお嫁さんがいるの?」


「いや、全員他国から送られて来た人質だ。そういうんじゃないんだ」


「そう、良かった。・・・手間が省けたわ」


何の手間が省けたかは聞くまい。

聞いてはいけない気がする。


「とにかく、何かしたいの」


「ニイナがしたいと思うこと、何でもして良いよ。侍女でもメイドでも、文官でも」


「じゃあ私、お料理したいわ」


「そうか。好きなときに厨房にいくと良い。シバに言えば何か仕事を貰えるようにしておく」


「ありがとう、カナト」


「後宮付きのメイドはマオとペニーという2人だ。必要なものは何でも彼女たちに言ってくれ」


「畏まりました。ありがとうございます」


エイミが丁寧に頭を下げる。


「それじゃ、荷物の整理もあるだろうから・・・夕食の時に」


「えぇ」


ニイナの額にそっとキスを落とし、カナトは退室した。


さて、行こうか。

サイを絞めに。


















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