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「どうかな、カナト。美味しい?」
カナトの前にはいつもシバが作るような、米の朝食が置かれてある。
「美味しいよ」
白米と味噌汁、炒り卵である。
ガデスではパン食が一般的なため、米を炊くのは初めてだっただろう。
味噌も一般に流通していないので、味噌汁も初めてだろう。
「シバくんに教えてもらったの。これからいっぱい、カナトの好きなもの覚えるね!」
「楽しみにしてるよ」
醤油と味噌が手に入ったことで、カナトの好きなものはそれこそいっぱい作れるようになるだろう。何十年と食べていなくても、やはり本当の最初の故郷の味だ。
「そうだニイナ。午後から城下町に行かないか?」
「城下町?」
「ああ。まだあまりよく見てないだろう?」
「えぇ!行きたいわ!」
「そうか。用意が出来たら執務室に来てくれ」
ニイナが来るまで仕事をしていよう。
それでなくとも最近サボり気味だったのだ。
主にニイナの部屋作りとかベビーベッド作成とかで。
とはいってもまだまだカナトに仕事は少ない。
次回の納税までまだ日数もある。
使用人も十分に増え、今は教育期間中。
騎士団はもっと増やしたいところだが、中々志願者は来ない。
もう少し目に見えた活躍があれば増えるだろうか?
武闘大会でも開いてみるか?
賞金とかレアな賞品とかで釣って・・・。
つらつら考えつつ、書類にサインを記していく。
嘆願書も大したものが回って来ず、今のところ政もなにもない。
ヲウルがすべて仕切っているからだ。
まるっきりお飾りの王。
反乱分子が現れた時だけ活躍する王。
微妙だ。
まぁ元々神国時代から王などただの飾りであったが。
実権はすべて大神官のもの。
このままお飾りであれば良いのか、それとも何か他国の王のようにあるべきなのか。
◇
「カナト?」
執務室の扉の影から、ニイナがひょっこりと顔を出す。
「ニイナ。準備は出来た?」
「うん!仕事は大丈夫?」
「大丈夫だ。行こうか」
ニイナの背に手を添え、エスコートする。
昔は同じくらいだった身長は、今ではカナトの方が10㎝程高い。
外見年齢は17,8に見えるので、まだ伸びると信じたい。
前々世では人種的に、前世は子供故に小さかったので、現世では高い身長が欲しいと思う。
「ねぇ、カナト。気になってたんだけど、今のカナトは13歳なの?」
「13に見えるか?」
「見えないわ。だけど・・・」
前世で死んで13年。
単純に考えると13歳なのだが、この外見でそれはありえない。
かといって記憶がないので確実でもない。
「まぁ年齢なんてどうでも良い」
「・・・そうね」
いくつだろうが、カナトはカナト。
今隣にニイナがいる。それだけがカナトの中で重要な事。
城下町は大勢の人たちで溢れ返っている。
活気のある掛声が飛び交い、野菜や果物、肉などが売られている。
勿論衣服やアクセサリーなども売られ、商売人の他にも家族連れやカップルなどが見られる。
「そうだ。ギルドに登録しておこうかしら?」
「ギルドに?必要ないだろ?」
「いつ必要になるかわからないじゃない。ブランクありすぎて碌に動けないかもしれないけど・・・」
昔はカナトと二人で、モンスターを狩っていたこともある。
年齢の割には中々の腕前だったのだ。
「・・・少し訓練してみるか?ニイナが俺が守るけど、自衛くらい出来た方が良いしな」
「騎士団の訓練?」
「あぁ。少し参加するだけでも違うかもしれない」
「そうね、少し参加させてもらえるかしら」
「団長に話をしておこう。くれぐれも無茶をしないように」
「わかってるわ」
昔はかなりのお転婆だったのだ。
23なのだから、少しは落ち着いていると思うのだが。
商店をいろいろ冷やかしながら歩く。
以前と違い、カナトが町へ来ても誰も逃げなくなった。
信用、されているのだろうか。
そうならば、嬉しい。
「賑やかで楽しい場所ね」
2人の故郷は田舎の町だった。
城下町とは比べモノにならない。
ヨハリアはそれなりに栄えていたが、それでも城下町には大分劣る。
「あぁ。夏には祭りもある」
「お祭り。楽しそうね」
祭りは神教の祭りだ。
儀式がなくなり、神教はどれほど支持されているのだろうか。
「そうだな・・・楽しい祭りになると良いな」




