26:これからも一緒に
「じゃあ、良かったら今度、うちの神社に来てよ。シロにも紹介したいし」
「シロ?」
「うちの神社には『クロ』の他にも『シロ』っていう神使がいるの。クロは体毛が真っ黒だからクロで、シロは真っ白だからシロ。シロはクロよりも優しくて――」
「ねえあげは、ちょっと待って」
ルネちゃんがわたしの台詞をさえぎった。
「クロとかシロとか、何のこと? シンシって何?」
「あ」
そういえば、ルネちゃんにはクロのことを話してなかった。
ルネちゃんはSEASONの配信を見てるから、わたしが霊能力者だってことは知ってるはずだけど……自分の目には見えないものを信じてくれるかな。
――ううん、きっと。
たとえ、自分の目には見えなくても……ルネちゃんなら、きっと信じてくれるはずだ。
SEASONのみんなが信じてくれたように、ルネちゃんも信じてくれるって、わたしは信じたい。
「あのね」
わたしは正直に話した。
これまでのことや、立切神社に仕える二匹の神使のことを、全部、包み隠さず。
「ふうん。神様の使い、ねえ……なんか、ファンタジーだわ」
わたしの話を聞き終えて、ルネちゃんは口をへの字に曲げた。
「……やっぱり、信じられない?」
「まあね。でも、あたしは実際に、キリヤがトンネルで悪霊と戦う配信を見た。あたしの目に悪霊は見えないから、ただ手足を振り回しているようにしか見えなかったけど。霊感があるらしい人たちはコメントで『キリヤが霊をぶっ飛ばしてる』って言ってたわ。今日のライブで妙なアレンジを入れてたのも、念とやらを祓ってたからなんでしょ?」
「うん」
「じゃあ、今日のダンスは文句なしに120点ね。踊りながらSEASONを守るなんて、やるじゃない。さすがあたしの友達ね」
「えっ!?」
ルネちゃんが、わたしのこと、友達って言った!!
「何よ。いまさらでしょ」
ルネちゃんは赤くなった頬を掻いた。
「あとさ。クロのことも、念や霊のことも、丸ごと全部信じるから。見えなくても、友達が言うなら……信じるしかないでしょ」
「うんっ!! ルネちゃん、大好きっ!!」
たまらず立ち上がり、わたしはルネちゃんに抱きついた。
「ちょっと、抱きつくなっ!!」
「あはは。ルネちゃん、顔真っ赤~」
「可愛いですね」
司先輩と春宮くんが笑っている。
「ところでさ。来週の日曜日、ライブの打ち上げパーティーしない?」
わたしたちが落ち着いたところで、玲央先輩が切り出した。
「いいよ~。参加する~」
「おれも参加します」
「ぼくも」
「よし。あげはちゃんとルネちゃんはどう? 参加してくれる?」
「「もちろんです!」」
わたしとルネちゃんの声は綺麗に重なった。
スマホのカレンダーアプリに赤文字でスケジュールを書き込む。
それから、わたしはスマホを机に置き、思い切って口を開いた。
「……あの。皆さん。頼みがあるんですけど、聞いてもらえますか?」
「どうしたの? 改まって」
飲みかけのペットボトルを机に置いて、玲央先輩がわたしを見つめた。
他のメンバーたちも、おしゃべりを止めて、わたしを見ている。
「先週から、レジェハンの実況配信を始めたじゃないですか。わたし、ゲームは本当に下手なんですけど……それでも良かったら……やっぱり、わたしも混ぜてもらえませんか!?」
爪が食い込むほど拳を握って、言う。
「心霊スポット巡りも、ライブも終わっちゃいましたけど。わたしはこれからも、皆さんと一緒にいたいんです!」
わたしの言葉に、SEASONのみんなは顔を見合わせて、なぜかニヤリと笑って。
「「「「もちろん、大歓迎!」」」」
わたしを見つめて、全員が同じ言葉を言った。
「……!!」
それは以前、白銀くんに「友達になりたい」って言われたときに、わたしが言った言葉だ。
気づいた瞬間に、胸の奥がキュッとなって、目頭が熱くなった。
「配信とか抜きにしてさ。今度、みんなで遊びに行こうよ~」
「いいですね。たまにはプライベートで集まって遊びましょう」
「どこに行きたい? 映画でも見る?」
「あたしは遊園地に行きたいです!」
「ぼくは水族館かな」
「……カラオケだけは無しで。立切さんの歌は夢に出たから」
みんなで行きたい場所を言い合っていると、白銀くんがボソッと呟いた。
「そ、それは言わない約束でしょ!」
「そんな約束、いつしたっけ?」
わたしが顔を真っ赤にして言うと、白銀くんは小さく笑った。
「~~もうっ。白銀くんの意地悪!」
「あははははっ」
みんなの笑い声が弾け、わたしもつられて笑った。
「ふふっ」
友達と一緒に笑う自分がいることが、なんだか少しくすぐったくて、嬉しかった。
〈了〉
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