ケース5
非番の四人組は、コンビニの前で話していた。
「この前の任務でさ、秋斗と気持ち悪い情物を殺したんだよ。マジでキモくて最悪だったわ」
「泥みたいな情物を倒した時よりはマシ。あの時は、服が泥まみれになって最悪だったんだから」
龍一と零はお互いに任務について話し合っていた。
「あ〜、確かに。ははっ! 任務の後、侑馬が泥だるまを作ってたのは傑作だったな!」
零は心底楽しそうに笑う。
「あの泥だるま、どうしたんだ?」
「溶けてきたから捨てたよ。苔だけは、テラリウムにして残してる」
零は首の後ろに両手を回して、猫なで声を出した。
「おやおや〜。侑馬に甘すぎるのでは〜?」
「その声、やめて」
龍一はうっとおしそうな顔で、髪をかきあげる。二人がじゃれ合っている間、侑馬はコンビニで買ったコロッケを片手に持って話を聞いていた。
「侑馬、靴紐が解けてるぞ」
「ん、ありがとう」
秋斗に声をかけられて、侑馬は素直に感謝を言う。しゃがみこむと、コロッケを持った手を上げた状態で、靴紐を結び直した。
「ふぅ……」
立ち上がってコロッケの方を見る。
すると――
手に持っていたはずの、コロッケがなくなっていた。
「………………」
侑馬は唖然と空になった袋を見つめる。そして、秋斗の顔を見た。秋斗は口をもごもごと動かしている。
「秋斗……君は……」
侑馬は何度も空の袋と秋斗の顔を交互に見る。秋斗は侑馬が片手を上げてしゃがみこんでいた隙に、コロッケを食べたのだ。悲しげに眉を下げた侑馬の頬を、秋斗は指でつつく。
「侑馬〜、油断したな〜?」
「俺のコロッケが……」
侑馬の子犬のような瞳がゆらゆらと揺れている。
「ん? 侑馬、どうしたの?」
龍一が心配そうな顔で、侑馬の顔を覗き込む。
「俺のコロッケが……秋斗に食べられた……」
「は?」
龍一と零は信じられないものを見る目で、秋斗の方を見た。秋斗はニヤニヤと笑いながら、小首を傾げている。
「ん〜? みんな、どうした?」
「ガキかよ……」
零は半目で秋斗を見つめる。
「侑馬を虐めないでよっ」
龍一は思いっきり、秋斗のふくらはぎを蹴った。
「いてっ……容赦ねぇな〜」
蹴られた足を擦りながらも、秋斗は笑みを崩さない。その様子を見て、龍一はコンビニを指さす。
「今すぐ、侑馬のコロッケを買ってきて」
「わかった、わかった」
龍一に背中を蹴られながら、秋斗はコロッケを買いに行った。
「侑馬、大丈夫か〜?」
「俺のコロッケ……」
未だにショックを受けた様子の侑馬を零は慰める。
「まあ、落ち込むなよ! ジュースでも奢ってやるからさ」
「ありがとう……」
零の言葉に、侑馬は僅かに微笑む。
「あのバカ……ちゃんと、コロッケを買ってくるかな……」
「買ってこなかったら、もう一回蹴り飛ばそうぜ」
零と龍一は静かに頷き合う。
しばらくして、秋斗が袋を二つ持って歩いてきた。
「買ってきたぞ〜」
「遅いぞ、バカ秋斗」
零が噛み付くように言うと、秋斗はコンビニの袋を掲げる。
「ひでぇな。全員分、買ってきてやったのに」
「良いから、早く侑馬の分を渡して」
龍一は秋斗からコロッケを受け取ると、侑馬に渡した。
「ほら、これ食べて元気だして」
「ありがとう」
侑馬はニコニコと笑みを浮かべる。そんな彼を見て、秋斗はジュースを手渡した。
「これもやるよ」
「秋斗……」
侑馬は感動したように、秋斗を見つめる。
「秋斗……君は良い奴だな……」
その瞬間――
「「いや、それはおかしい!!」」
龍一と零は全力で否定した。
「ははっ! 笑えるわ」
秋斗はいつも通りの不敵な笑みを浮かべるのであった。
<資料集>
沢田 侑馬 ⇒ 身長は180cm。同期組の中では一番背が高い。秋斗からは紅茶をもらった。
相川 龍一 ⇒ 身長は176cm。秋斗からはジュースじゃなくて天然水をもらった美容系男子
泡島 零 ⇒ 身長は171cm。同期組の中では一番背が低い。秋斗からはコーヒーをもらった。
水輪 秋斗 ⇒ 身長は175cm。紅茶が好き。侑馬の性格を完全に把握した上で、マッチポンプを仕掛ける策士。




