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ケース1

侑馬は友人の龍一と料理をしている。彼は基本的に生活力がなく、料理も苦手だった。それでも、彼は友人と何かをすることに、とても幸福を感じられていた。


「龍一。この人参、毛が生えてるぞ」


表面のオレンジ色の部分から糸のような根が出た人参を、つまみ上げて見せつける。


「めちゃくちゃ、どうでもいいんだけど……」


「ふさふさだぞ。他の人参がハゲ頭なら、こいつはパーマ頭だ」


「いや、だからどうでもいいって……」


真っ赤な瞳を爛々と輝かせて、無駄に良い笑顔で侑馬は熱弁している。クールで知的な顔立ちとは真逆の天然な所が、彼の魅力でもあった。


「はあ、君って本当に……いや、何でもない」


馬鹿だねと言おうとして、龍一はやめておいた。侑馬が自分の抜けている部分を自覚した上で、気にしていることを知っていたからだ。


「なあ、この人参に名前つけないか?」


「いいから早く皮をむいてよ」


龍一は鍋に火をつけて、水が湧くのを待っている。彼は茶色の髪をかきあげて、軽くため息をついた。


「そういえば、シチューを作るのって久しぶりかも。侑馬は……って何その顔……」


龍一は侑馬の顔を見て、思わず言葉に詰まった。彼は口を半開きにして、固まっていた。


「ねえ、ちょっと……」


龍一は眉を下げて、彼の顔を覗き込む。そっと、侑馬の肩に触れようとした。


その瞬間――


「記憶が……フラッシュバックした……」


侑馬がポツリと呟いた。


「は?」


「さっきの龍一の仕草で、昔のことを思い出したんだ」


侑馬の真剣な眼差しが、龍一を射抜く。何かトラウマでも刺激してしまったのかと不安に襲われた。


「僕が髪に触れたのを見て、何かを思い出したの?」


龍一は恐る恐る問いかける。侑馬は力強く頷いて、予想外の返答をしてきた。


「そうだ。小さい頃、鏡の前で一番かっこいい仕草を考えてた時の事を思い出した」


その話を聞いた瞬間、龍一は思いっきり額に手を当てた。大きな溜め息をついて、首を振る。


「記憶が走馬灯のように駆け巡った」


「そっか。良かったね……」


心配していたのが馬鹿みたいに思えた龍一は、雑に返事をするのだった。


「ところで……」


「早く人参むいて」


「分かった」


龍一は話を続けようとする侑馬を、バッサリと切り捨てる。特に気にした様子もなく、侑馬は人参を剥き始めた。



「ってことがあったんだよ」


「あははは!! っははは!!」


寂れた工場で、龍一は同僚の零に愚痴をこぼしていた。龍一の足下には、異形の怪物が転がっている。四角いテレビの顔に人間の手足が生えた怪物だ。


「馬鹿すぎるだろ! 侑馬はやっぱり最高だな!」


黒いキャップ帽を被った青年は、ひたすら爆笑している。この黒髪の男、泡島 零(あわしま れい)情殺者(じょうせつしゃ)の一人であり、龍一と侑馬の友人だ。


「はぁ。アイツといると疲れるよ」


「でも、面白いだろ?」


「さあね」


怪物の上から飛び降りると、龍一は再びため息をつく。零は首の後ろに両手を回して歩き始める。


「それにしても、お前らマジで仲良いよな〜。俺も今度、侑馬の家に遊びに行ってみるか」


「いいんじゃない」


爆笑してスッキリした零は、鼻歌でもこぼしそうなほど楽しげに歩いている。


「ふはっ! それにしても、侑馬はマジで面白いな」


「君たちは、相性がよさそうだね」


「あんな面白いやつ、そうそういないだろ!」


ご機嫌な零を横目に見ながら、龍一は再び髪をかきあげる。



<資料集>

沢田 侑馬(さわだ ゆうま) ⇒ 見た目はクールな美青年。中身は天然なアホの子。


相川 龍一(あいかわ りゅういち) ⇒ 苦労人な美人系男子


泡島 零(あわしま れい) ⇒ ゲラ。ノリの良い陽キャ男子。

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