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Frange ruinam   作者: S
断片
85/85

第八十一.五話 躊躇い

『第八十一話 時間』に書き切れなかった続きのお話です。

「……」


「……」


私とモラは無言で城の廊下を歩いていた。


「……レナ」


「何、モラ?」


私はそう聞き返した。


「ネブラ、ちょっと寂しそうじゃなかった!?」


モラは大きな声で言った。


「声も心なしか低かった気がする」


「まぁ、いつも低いけどね〜」


そう言うとモラは走り出した。


「えっ、ちょっと待って!」


私は慌ててモラの後を追った。

追いつくと、モラは玉座に座っていた。


「何してんの?」


「やっぱり前にも座ったけど、この椅子座り心地いいね!」


「……モラ、大丈夫?」


「……何が?」


モラは首を傾げる。


「何か元気がない気がして」


私がそう言うと、モラは玉座から立ち上がり、窓辺にもたれかかった。


「やっぱりレナには分かっちゃうか……カッコ悪いよね。私、怖いんだ。ネブラやレナに会えなくなるのも、死んじゃうかもしれないのも」


「……モラ」


「……なーんてね。私が元気でいないとダメじゃん。レナには笑顔でいてほしいんだから!」


「……モラは両親に会いたい?」


「……両親か。あんまり記憶がないんだよね。実際、一緒にいた時間も10年ないくらいだろうし」


モラは少しだけ遠くを見るような目をした。


「……でも時々夢に見るんだ。お母さんとお父さんと私が一緒に遊んでる夢を」


「そう……良い夢だね」


私は小さく頷いた。


「確かに人生には怖い事なんて多くある。けど、そればかり見ていたら疲れるでしょ? 人間は私達と違って、すぐ死んじゃうんだから。だからこそ、楽しい事とか、やりたい事とか、そういうことを考えなよ」


私は微笑みながらそう言った。


「そうだね!じゃあ私のやりたいことはね――」


それから私達はしばらく話し込んだ。


「遅くなるから、もう寝るよ。モラ」


「えー、もうそんな時間?」


モラは少し不貞腐れたような顔をした。

そしてふと、私を見つめる。


「レナは親に会いたい?」


「……別に会いたくないかな」


私はモラの顔を見ないまま答えた。


「レナ?」


「私は……二人がいなくなったら、どうすればいいのかな」


気づけばそんな言葉が口から漏れていた。


「……笑えるよね。自分で言った言葉なのに、私には何一つ響いていないんだよね」


私はモラに背を向けた。するとモラは私の手を掴み、無理やり正面を向かせた。


「レナ、そんな顔しちゃダメだよ」


「……」


「レナが楽しいと思う時って何かな。うーん……私には、人の気持ちに寄り添ってる時だと思うな」


「……そうかな?」


「そうだと思うよ! もし、楽しいことが見つからなかったら、苦しんでる人とか悩んでる人達を助けてあげて。私も、レナに救われたんだから」


「……うん、分かった。そうするよ」


モラは私が人を殺したことを知らない。知ったら幻滅するだろうか。……いや、此れは言わなくていいことだ。世界が再構築されたら、あの母親も生き返るのだから。


「……私は最後まで嘘吐きだな」


「レナ?」


「もう寝るよ」


私はそう言うと、モラと一緒に奥の部屋へ向かった。


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