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第52話:目指せ決着「終盤戦」

「ソウツィットシステム――発動!!」

瞬間、ヴィーチェユニット上部のミサイルポッドが展開する。

いや、今そこにミサイルは搭載されていない。

飛び出したのは奇妙な、ぎざぎざとした形をした棒のようなものだ。

これがアデレードの用意した秘密兵器。

ソウツィットシステムの発信器――つまりはアンテナだ。

「ソウツィットシステムに意識をリンクさせる。ヴラベツ、大丈夫?」

「ドンと来い!」

奇妙な、甲高い音波が発生するような感覚。

その波に乗ってオレ自身の意識が分散していくような錯覚。

これは端的に言うのならアデレードとの戦いで行ったのと同じことだ。

オレとツェラの記憶をソウツィットシステムを用いて周囲の「侵攻者」へと伝える。

そしてこれはアデレードの強化によってさらなる力を得ていた。

「みんなおねがい。力を貸して……あなた達は使い捨ての兵器じゃない。自分の足で立って、歩ける。それを望むのならば」

ただツェラの意識を相手に伝えるだけじゃない。

アデレードが言うにはそこにツェラが最も心を許す相手の意識を重ねる事で起きる特別な感情――それを伝えるという。

アリツェは「愛の力ですネ」とか言ってたけどそういうのはまぁ、ちょっと恥ずい。

そしてこれをこの場所――母型ティプ・マトカの中枢で発動する事に最大の意味がある。

「オレたちが戦う必要が本当にあるのか? なぁ」

目の前にいる多数の巨人型の動きが鈍った。

そしてそれだけじゃない。

『動きが変わったな。成功か?』

『まだ、不明』

『秘密兵器ってヤツ? どーゆう理屈?』

『わかんないですけど、とりあえず動きが悪いのは無視の方向ですってー』

そんな声が通信から聞こえて来る。

ソウツィットシステムの効果が他の「侵攻者」たちにも及んでいるのだ。

このシステムを中枢で行ったのは、母型の指揮系統の一部を乗っ取りより多くの「侵攻者」へと影響力を与えるため。

「頼むみんな、オレたちと一緒に戦ってほしい!」

とは言え最終的な選択をするのはこの「侵攻者」たちだ。

一瞬の静寂にオレは固唾を飲んだ。

不意に「侵攻者」の群れの奥から一体の「侵攻者」が飛び出してきた。

巨大な槍を装備した近衛型ティプ・ストラーシュだ。

その槍の切っ先は明確にオレたちスパルロヴ・ヴィーチェを狙っている。

そしてその刃がスパルロヴ・ヴィーチェを貫かんとした瞬間――――目の前の巨人型が体当たりをし、近衛型、止めた。

「ツェラ」

「ええ。ありがとう、"わたし"」

その巨人型が頷く。

それに追随するように、複数の巨人型がその視線を母型の中枢へと向けた。

「近衛型を味方につけるのは難しいか」

「「侵攻者」としての性質が強い。それにここにいる近衛型のほとんどは母型の完全な直属……仕方ない」

「だが、これだけ仲間についてくれるってーなら」

「頼もしい」

そして戦いが始まる。

巨人型と近衛型がぶつかり合い、そのさなかを駆逐型の放火が走った。

ほとんどの巨人型は味方だが、駆逐型は――半々くらいか。

「敵と味方の区別をディスプレイに反映させる。気を付けて」

「助かるぜツェラ!」

ツェラによる支援もあり、敵となる「侵攻者」を蹴散らしながら母型の中枢を狙う。

味方の巨人型が横に並び援護をしてくれた。

そのかいもあって――オレたちはついに、行く手を阻む「侵攻者」の壁を突破!

「これで――終わりだ!」

両使短剣イージークの切っ先を向ける。

と同時に、ヴィーチェユニットが展開。

「ヴラベツィー、ボウジェ!!」

出力を高めに高めた霊子砲とともに、今まで温存していたヴィーチェユニットのミサイルを放出。

母型の中枢は――炎に包まれた。

混乱するように戸惑う近衛型「侵攻者」たち。

縦横無尽に周囲をかけていた鳥型が勢いを失い、降り注いでくる。

鳥型のような「侵攻者」たちは母型みたいな司令官型の「侵攻者」によって制御されていた。

だから、その制御がなくなり機能を停止したんだ。

つまり――これは確実に。

「わたし達の、勝利」

だが、安心はしていられない。

次いで訪れたのは母型大要塞の爆発。

「総員撤退だ!!」

爆炎を巻き起こし、まるで断末魔のように炎を噴き上げる母型を背にオレたちスパルロヴ・ヴィーチェと新たに仲間に加わった巨人型、駆逐型たちは脱出した。

「ヴラベツ!」

「ベチュカ!」

「ヴラベツ……」

「ベっちゃん!」

仲間たちの声が聞こえてくる。

そして、その装騎の姿も。

『ヴラベツ、どうやら上手くいったようですわね!』

『サスがデス』

アデレードやアリツェも出迎える。

とは言え、まだ戦いは終わっていない。

「これより作戦は最終段階に入る。母型の制御を失った敵性「侵攻者」の撃退だ」

母型によって制御されていた「侵攻者」の多くはその機能を停止させたり、能力を低下させた。

だが、近衛型のような自立型の「侵攻者」はそうもいかない。

近衛型は自らで考え、自らの意志で「侵攻者」としての使命を果たす。

どうしてもこちら側につかないというのなら――倒すしかない。

「でもそれは最終手段。でしょ?」

「おう、可能な限りは――呼びかける」

母型による支配がない今なら、ソウツィットシステムによる呼びかけに制限はない。

最終判断は相手に委ねることになるが、それでもできるだけ多くの「侵攻者」と友好を結ぶのがここからのオレたちの戦いだった。

「っても、自分の命が一番っしょ。ちゃんと守りなさいよ!」

「わかってるって!」

『今からそちらと合流しますわ。私の身体を使えばソウツィットシステムの機能増幅も可能でしょう』

「頼んだアデレード!」

「待って……変」

グルルが何かを感じ取ったようにつぶやく。

「どうした?」

不意に宙を漂っていた鳥型が光を灯した。

そして――オレたちに襲いかかってくる!

「!! ヴラベツィー、ジェザチュカ!」

霊子剣の一撃で鳥型達を薙ぎ払う。

「なんだ!?」

さっきまで確かに鳥型は機能を停止していた。

それが急に、どうして!?

「アデレード!」

『ぐっ……これは、この、感じはっ』

「ツェラ!?」

オレは思わず背後を振り返る。

ツェラもどこか辛そうに頭を抱えていた。

この感じは以前もあった。

母型と初めて出会ったときの――だが、母型は確かに倒したはずだ。

「火星にまだ母型が?」

いや、グルルがフチェラを斥候として飛ばしたが、母型のような大型の反応はなかった。

「そう、火星、には……」

ツェラが苦しそうにつぶやく。

火星にはいない。

ということは――

不意に奇妙な悪寒が走る。

それはきっとソウツィットシステムを通してツェラの感じた"何か"をオレも感じたからだ。

オレがそれを感じるくらいということはその存在はかなり近くに来ている。

いや、来た!!

空間が歪む。

「侵攻者」の持つ空間跳躍航法が発動した証。

そしてソイツは目の前に現れた。

宝石のように輝く、透き通った大要塞。

奇妙な、甲高い、音のようにも思える感覚がその中心から広がっていく。

『これは……まさかっ、どうしてここに!?』

「アデレード、何か知ってるのか!?」

『アレは原初の「侵攻者」――その一つ、ですわ。本来の、純粋な「侵攻者」に近い、いいえ、聖霊にさえ近い存在……伝説の「侵攻者」、地母神型ティプ・ボヒニェマトカの、最初の、子にして、母』

つまりは母型「侵攻者」の更に上。

「侵攻者」の起源にまで遡る存在。

名づけるのならば――

大母型ティプ・ヴェルカーマトカ……!』

機能を停止していたはずの「侵攻者」たちを操り、そしてツェラやアデレード達を苦しめているのがあの大母型。

「ベチュカ、すぐに対象の破壊を! 私も手伝いますっ」

「ばあちゃん! 大丈夫なのか!?」

通信から聞こえてきた声はさっき回収されたばあちゃんだった。

「たっぷり寝たのでもう十分です。年寄りだからって負けてられませんよ!」

やせ我慢だとは思うが大した根性だ……。

それ以上にばあちゃんの声からちょっとした焦りのようなものを感じるのが気になった。

「ゲッコーくん、作戦内容の変更を。大母型の即時撃破、問題ないですね?」

「はい。アレは――この世界に存在してはならないものです」

「ちょっとちょっと、確かにアレがヤバそーなのはアタシでもわかるけど、そんな即決するモンなの!?」

アネシュカが思わず意義を唱える。

確かにそうだ。

どちらにせよアレはオレたちの敵だということは本能的に感じ取れた。

だが、ばあちゃんとゲッコー艦長の恐れは何なんだ?

「なんて言っちゃってる場合じゃなさそーですよぉー。来ちゃいます!」

ナっちゃんの装士イーメイレンが華式直刀を放り投げ、陣を描いた。

「まずいかも」

グルルの装騎ククルクンもフチェラに支持を出し、防御魔術を発動する。

瞬間、大母型の水晶のような一部が腕のように持ち上げられ――奇妙な魔力を纏い、たたきつけられた。

「全員無事か?」

アーデルハイトの声が聞こえる。

すさまじい衝撃が走ったが、

「なんとか」

無事だ。

その一撃が戦いの始まりだと言わんように、大母型にどこか邪悪な魔力が沸き上がる。

敵意、悪意、諦観と破滅願望。

絶望とでも言えるような印象をオレは抱いた。

殺せ。

殖やせ。

食い尽くせ。

そして――殺して。

奇妙な感じだ。

ヤツは全てを奪いつくしたくてたまらない。

と同時に全てを奪われたくてたまらない。

なんだ?

なんだこいつは?

「侵攻者」の起源、大母型とは、地母神型とはいったいどんなやつなんだ?

少なくともそこに感じるのは明確な意思。

何者かの――意思。

「ベチュカ!!」

激しい衝撃がオレの身体を揺さぶった。

装騎スパロー・オリジンがスパルロヴ・ヴィーチェを殴ったんだ。

「アデレードちゃん――は無理か、だれかソウツィットシステムのオフを!」

『メトロチュカがやります!』

急に脳内に浮かんでいた雑念が遮断される。

今のは――そうか、ソウツィットシステムから大母型の思念が流れ込んできたのか。

「異論がある人もいるかもしれません。ですがアレは破壊します。異界堕神ルドライエフの残滓は見逃せません!」

「オレはばあちゃんに賛成だ。ヤツは放っておいたら全てを食い尽くす。それは許せない」

「ヴラベツがそういうのなら私は信じる。大母型を――倒そう」

「ま、ベチュカにアーデルハイトもそーいうならねー! クソみたいな一撃入れられてお返しもしたいし!」

「ですですねー。なーに、やることは変わらないってことですねー」

「本能が叫んでる。アレは敵。「侵攻者」の起源でありながら「侵攻者」とも交わらないモノ」

「さすがにあればかりは私も手を貸す。リブシェくん、艦は――任せた」

オレたちムスチテルキ隊にばあちゃんとゲッコー艦長も加わり今度こそ最終決戦が始まる。


挿絵(By みてみん)

「ココがブドオンランドですカ」

「そっ、いろんなアトラクションにグッズもあるジャン!」

「まるで夢のようデス……お土産も買って行きまショウ」

「トーゼン! でもまずは、楽しむのが先っしょ!!」

「ハイ!」


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