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剣聖ちゃんネクストステージ!  作者: クレイジーパンダ
第1部・1章『小さき復讐者』
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sideオリビア:第17.5話



 ゆらりゆらりと舞い散る、紅い花。



 しかし花には棘があり、



 触れたものはその業火に焼かれるであろう。



 ゆらりゆらりと舞い落ちる、紅い花。



 姫は花と共に踊り、



 そして、



 炎に包まれながら歌うだろう。







……という短い歌……いや、詩を、この学園の、町の人間の殆どが知っていた。まるで、讃えるかのように。本にも載るほど有名な一節だ。


 この詩が讃えているのは、十数年前、リットモール統一魔法学園を首席で卒業した生徒。後に『煉獄の花姫』という異名で呼ばれることになる……ラタニア・オッグフィールド。またの名を、ラタニア・バース。



 そう。ママだ。この詩は、煉獄の花姫と呼ばれるようになったママを讃えるために作られたものなんだ。




「でも凄いですよねぇ。あ、今度のお休み、付いていっちゃダメですか? ファンなので。行きますね」




 隣の席に座っていた黒い髪の女の子がそう言った。


 ジス・ベルクマン、一年生。学院会副会長補佐だ。

 学院会には『会長』が一名と『副会長』が二名設定される。この三名をまとめて『幹部』と呼ぶわけだが、この幹部たちにはそれぞれ一名ずつ、『会長補佐』『副会長補佐』が充てられる。

 基本的には立候補制。その中から、各員が面接なり何なりをして補佐を決める。


 私も苦労した……何せ、立候補生が多すぎて決めるに決められないんだから。


 原因は分かってる。ラタニア・オッグフィールド……つまり、ママだ。私がママの娘であり、学院でもそれなりに優秀な成績を収めているから。なんか最近、ファンクラブも出来たらしい。正直やめてほしい。



 ジスもその一人。熱狂的な『花姫ファン』で、私の補佐になったらママに会えるんじゃないかとか期待して立候補してきた。動機が不純すぎて落とそうと思ったけど……まあ、根は悪い子じゃないし。仕事に熱意が感じられたので採用した。


 因みに、補佐は任期中であれば何度でも替えられる。適当だったらクビにしようかと思って……もう二ヶ月も経ったわけだ。私の副会長就任からずっとこの子だし。もういいけど。


「別にいいけど……ママ、今はただの専業主婦だよ?」

「なるほど、煉獄の主婦ですか……」

「人の母親をなんだと思ってるんだ」


 やっぱりクビにしようかな、こいつ。




 ママたちと言えば、久し振りに手紙を書いたけど、もう向こうに届いてる頃かな? ここ最近は学院会のこととか何とかで忙しくて、手紙も碌に出せていなかった。終いにはアニュエの誕生日まで忘れる始末……お姉ちゃん失格だな、これは。夏の長期休暇で帰る時に謝らないと。


 ふふん……プレゼントがあるとは言っておいたけど、『これ』、喜んでくれるかな。





……おっと。こんなことしてる場合じゃない。早く学院会の仕事終わらせないと。最近忙しいんだなぁ、これが。物騒な事件が起きてて、解決に追われる日々。手紙を出せなかったのもそれが理由の一つだ。


「先輩、やっぱり手掛かりも何も無いですね。犯人はかなりの手練れみたいです」

「そうだね。まだ人に被害が出てないからいいけど……いつ怪我人が出るかも分からないし」


 最近、学園中を騒がせている事件。それは『爆弾魔事件』だ。

 学園内のどこかに、誰もいない時間帯を狙って爆弾が仕掛けられる。グラウンドであったり、校舎裏であったり、はたまた正門前であったり……。


 今はまだ『イタズラ』としての範囲内。怪我人は一人も出ておらず、騒ぎになるだけに留まっている。

 だけど、それがいつまで続くかも分からない。そもそも犯人が誰なのかも分かってないし、動機も分かってない。



 一体何の目的で……誰が?



 爆発した後の爆弾の残骸を回収しても、手掛かりも何も得られない。何か犯人が痕跡を残してくれれば有難いんだけど、そう簡単にはいかないようだ。


「ジス……どう思う?」


 資料を眺めながら、同じく資料を眺めるジスにそう問いかけた。



「私には……学園をざわつかせること自体が目的のように思えます。被害者もいませんし」

「そうだよね……誰かを傷つけることが目的なら、こんなことしないか」

「ただ、油断させておいて、その後に本命を……という可能性も考えられます。用心をするに越したことはありません」


 なるほど……そういう見解か。確かに可能性はある。今は被害者がいないけど、今後ずっと出ないという確証はない。誰かを傷つけるための『前座』だとしたら……早々に犯人を捕まえないと。


 全く……これって生徒にやらせる仕事? 先生たちとか……町の警備の人たちに任せるような仕事な気がするけど。危険だし。




「まあ……私たちが任されているのは『調査』だけですから。実際に動くのは先生方ですし」


 そう愚痴ったらこんな風に返された。いやまあ、そうなんだけど。そうなんだけども。



 はあ……まあいいか。気にしてても仕方ない。解決したいっていうのは本心なわけだから。




「……それにしても会長、今日は遅いですね?」

「うん? ああ、そういえば……」


 学院会会長、ノゥム・バスティ。三年生ながら、『学園最強』と呼ばれる生徒だ。少々反則すぎる強さで、四年生を相手にしても負けたことがないらしい。私も直接戦ったことはないけど……授業で戦ってるところを見たことはある。確かに、反則的な強さだった。


 そんな会長はいつも、授業が終わると真っ先にここに来るのに、今日は随分と遅い。何か用事でもあったんだろうか。




 そんな風に考えていたら、部屋の外から物凄い足音が聞こえてきた。走ってるな。噂をすれば何とやら、かもしれない。




「バース副会長は来ているか!?」




 部屋の扉を開けながら、長身で細身……だけどかなり引き締まった肉体の生徒がそう叫んだ。噂のバスティ会長だ。


 酷く慌てているみたいだけど……まさかまた事件が起きたのか?


「まさか、また爆発ですか!?」

「ああ、いたか……いや、違う。爆弾魔事件ではないが……」


 バスティ会長はほっと一息つきながら、けれど真剣な表情でこちらへ来ると、机をバンと強く叩いた。


「バース副会長。君は確か……ヴェガ村の出身、だったな?」

「え、えぇ……そうですけど……」


 自己紹介の時に出身地を言っているから知っていたのだろう。だけど、それがどうしたというのか。


 会長は叩いた手をゆっくりと離す。その下には、町でよく見かける張り紙があった。



「……覚悟を決めて、これを読んでくれ」

「……?」



 覚悟を……決めて?


 よく分からないけど……読めと言うのなら、読むしかないだろう。


 私は張り紙を手に取り、その冒頭から、その意味を理解しながら読み進めた。




 そしてすぐに……全身から力が抜ける感覚を味わった。



 嘘だ……そんな、まさか。ここに書いてあるのって……。




「村が……滅んだ……?」

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