第一章「俺が友達できない理由」
プロローグだけでは短くなんの物語かわからないのですぐに更新をしました。
ほぼプロットない状態の一発書きのようなものだけどこれで大体の展開は分かるかな?
周りからは騒音しか聞こえない。
助けを求める声。
泣き叫ぶ声。
それを押さえつけるような声。
パンッ!と乾いた銃音が鳴り響くとその騒音はぴったりと止む。
映画のような、そして相手からしては予定調和というような。
騒音の抑え方。
実際、こんな出来ごとに会うことなんてなかったと思っていた。
平和な世界、いいや、そんな大それたことは考えていなかった。
平穏な日常が続くと思っていた。
日本であるということに甘えていた。
事件は起きるときは起きる。
例え起こらないと思っていたテロでも。
「_______________ッ!」
暫くするとサイレンが聞こえてくる。
誰かが通報したのだろう。
その騒音にともなって周りの騒音もでかくなっていく。
「____たッ!」
嫌だ。
この後は見たくない。
段々と騒音は大きくなるばかりだ。
「___なたッ!」
見たくない見たくない見たくない。
俺は知っているこの騒音が増え始めた後を。
そして俺の人生を狂わせる場面が………。
そんな願いも乏しく段々と多くなる。
そして………
そして………
「ひなたッ!」
「っ!?」
俺は飛び起きると先ほどの場面が嘘のように消え去っており、残っているのは不快感とべっとりとした汗だ。
動悸も激しく、走った後のように心臓が激しく働いている。
「ひなた大丈夫?うなされていたけど………」
緩慢とした動きで声が聴こえる方に顔を向けるとそこには俺の幼馴染である佐倉奏が心配そうに見守っていた。
奏は烏の濡羽色の長い髪、クリっとした丸い目、しなやかな肢体、可愛らしい声をしている。
少し抜けているような性格をしているがある一つを除けば完璧な美少女だ。
俺にはもったいないが、いないと困る事情があるから困る。
「ごめん、大丈夫だ、問題ない」
「もしかしてあの夢?」
「まあ、そんなところだ、もう平気だから気にしなくていいよ」
「そっか、じゃあ下で待ってる」
くるりと意味のない一回転をして部屋から出て、階段を降りる音が聞こえる。
心配かけてごめんなとつぶやいてから俺も制服に着替え始める。
汗で気持ち悪いシャツを脱ぎ捨て、タオルで拭いてある程度汗が拭き取れたら制服へと装備を切り替える。
15分程度かけて着替え終わり、下に降りてリビングへと入って行くと机の上には料理が準備されており、奏は一足先に椅子に座っていた。
こうやって料理を作ってもらってもいる。至れり尽くせりだ。
俺も奏の向かい側の席へ座ると手を合わせて。
「「いただきます」」
ふたりとも同じタイミングで言い、食べ始める。
「ひなた、学校休んでもいいんだよ?」
「そうすると奏、大丈夫なのか?」
「だいじょばないから私も休む」
「そういわれると休めないな、ずる休みはいけないぞ」
そう注意するとぷーと可愛らしく頬を膨らまし、恨みがましい目で睨む。
俺はそれをスルーし、話題を変える。
「なぁ、この体質、そろそろ治したいと思わないか?」
「もちろん、私だって直したい」
「だよなー」
「だけど治らないことはひなただって今日の朝で知っているはずだよ」
「そこなんだよなー」
体質。
と言ったものの、言葉の綾ってだけで体質ではない。
なら、なんなのか。
心の病の一つ、恐怖症である。
トラウマなどであるものに対し恐怖感が出る症状だ。
それがさきほどのいないと困るという訳になる。
俺は男性恐怖症を持っており、奏は女性恐怖症を持っている。
普通は異性恐怖症、男性は女性を怖がり、女性は男性を怖がるというのが一般的というか普通はそれが思い浮かべるだろう。
だけども俺たちは同性の恐怖症持ちなのだ。
俺は男を怖がり、奏は女を怖がる。
そんな恐怖症を持っている性でろくに友達なんて出来たことはない。
同性が無理なら異性で友達を作ればいいじゃないと思うかもしれないが、どう考えても女子とだけ話す学校生活なんて送れない。話題だって合わないし。
奏も同じように男だけに話すことできない、引っ込み思案だしな。
そこで勘がいい奴はわかると思うが、ちょうど良いところに異性で同じ症状持っている奏に寂しくならないための白羽の矢が立ったわけだ。
昔から仲も良かったこともあって、唯一無二の親友になったということになる。
言葉を変えれば運命共同体といってもいいかもしれない。
学校で困ったことがあれば助けあえる関係ということだ。
例えば男子に用事で話かけたいということがあれば奏を通す。
そんなことだ。
面倒だがそんなことをしないと話すことができないから生活もできない。
今では男性を見ただけで吐き気や頭痛などはなくなっているとはいえ、話すことは一切できない。
たまに何かの拍子で話してしまうと吐いてしまうことも多々ある。
そんな不便な生活を強いられている。
だから直したいと思うのは必然で、いろいろと試してみたが、結果、時間が直すのが一番と今では結論づいているのだが、高校生となった今、大学へ行くつもりのない俺からしてはこの三年間でこの恐怖症を直さなければ社会に出れないと焦っている。
「うーん、どうしたものかねぇ」
「気にしなくていいよ、私が養ってあげる」
「いや君も直さないと社会で生きていくのはキツイからね?」
「残念」
俺は朴念仁じゃないと思ってるから思うんだけど。
絶対に奏は俺に好意を持っている。
と思ってた時期は結構あった。
小学の時からこの共同戦線は組んでいたからこんな美少女がいて惚れないほうがおかしいと思っていたところにこんな好意を持たせるような発言ばっかするからあるとき告白しましたよ。
結果は惨敗、別に好きな人がいたというわけじゃないと前置きして、言った言葉は。
「ひなたとは恐怖症の相性が良かったから一緒にいるだけだよ?」
そんな現実的、この恐怖症がなければ一緒にいないみたいな、勿論その後は泣いたよ。
男なのにわんわんと。
それ以降から好意を持たないようにするのが精一杯でしたよ。
まあもう今では整理ついてるから別に気にしてない。
逆に振られたのにこういう生活が送れることが幸せと考えることにした。
非リア諸君、羨ましいだろうっ!
そんな見栄はっても泣きたくなるな。
「さて、時間だしいきますか」
「そうだね、いこうか」
自分の皿を持ち、ある程度片付けてから外に出る。
外は肌寒く、冬の名残はまだ根強く残っている。
だが、周りはちゃんと冬を過ぎたことを認識しており、遠くに見える山には桃色の模様がちらほらと色飾っている。
「うー寒いねー」
「でも冬よりかは全然ましだ」
「冬より寒かったら異常気象と認定してやる」
「奏が決めることじゃないだろそれ」
「いいんだよ細かいことは、さぁ、進んだ進んだ」
「ちょっ、おすな」
奏に背中を押されつつ学校へと歩みを進める。
学校まではそこまで遠くなく、すこし奏と談笑していたらいつの間にか着いているというレベルの距離だ。
都立裾山高校。
ここが俺たちの通う高校。
学年は一年、ようやく入学して一ヶ月経ち、もう高校は慣れはじめた時期だ。
入学初日のように入る時にあったドキドキ感はもうなくなり、慣れたように校門をくぐり、学校に入り、教室へと向かう。
この一ヶ月でテンプレートとなりつつある動きをこなして、席につく。
隣には奏がすわるが、隣は男じゃないのかとか、席替えでこうなったとかあるかもしれないが、これに関してはもう担任に事情は話しており、特別処置として隣に奏が来たという背景がある。
「ひなた、一時限目はなにー?」
「確か、現古だな」
「うへー」
露骨に嫌そうな顔をしながら鞄から現古の教科書取り出して、鞄は机の横に提げる。
奏は現古、とくに古文が苦手だからな、嫌な顔になるのは仕方ないのかもしれない。
俺は鞄に教科書は入れていないので、とりあえず鞄を提げてからしまってある引き出しから現古の教科書を取り出そうと手をのばすとカサッと紙のような感触を感じ取り出してみると、桃色の封筒が使われ、取り出し口にはハートのマークのシールが貼られていた。
もしかしなくてもこれはラブレターと呼ばれるこの時代では滅多になくなっているものじゃないか。
今の時代、スマホが流行りだし、SNS、メールなどで告白する例は段々多くなってこんな古典なのはなくなりつつあると聞いたのだが。
ともあれ、中身を確認しなければならない、丁重にシールを剥がし、中身を取り出す。
そこには放課後、教室に残っててほしいという意味で書かれた女子特有の丸っこい文字と可愛らしいクマのデフォルメが下部の空白に書かれていた。
どんなに考えてもこれはラブレターとしか思えない。
「ん? ひなたそれなぁに?」
「い、いやなんでもないぞ、今日の晩御飯のメモだ」
急いで後ろに隠しつつ、そんな言い訳めいたことで反論する。
「ふぅーん、なら玉子焼きも書いててね、あっ、食材のメモなら卵って」
「わかった、書いとくよ」
とりあえずバレていないようで助かった。
別に恋人同士ってわけでもないから隠す必要も無いと思うが、告白したことがある相手だ、少し後ろめたい気持ちがないわけでもない。
だからしょうがない、そう、しょうがないことなんだ。
と、心の中で納得させる。
あれこれしている内に先生は来ており、現古の授業が始まって今日の学校生活が始まるが、先ほどのラブレターのことが気がかりで、授業なんてまともに聞けるわけもなく、そんな事ばかり考えているといつの間にか学校自体が終わっており、問題の放課後となる。
いつの間にか教室には奏以外いなくなっており、閑散とした雰囲気に変わっている。
「帰ろー」
「…………」
「帰ろー」
「………」
「おーいっ」
「はっ、みんなは?」
「帰ったよー、もうみんないなくなるまで無視して」
「すまんすまん、ここまで待ってもらって悪いが先に帰ってもらっていいか、少し教室に用事あるし」
「嫌だ、ひなたが残るなら私も残りますっ! なんかひなた怪しいし」
さすが小学校から幼馴染をしているだけある、俺の考えなんて読み通しというわけか、こうなると奏は意地でも動かないからどうするかな…
でも手紙には一人で、とは書かれてなかったし、いやでも、もし告白するために残したのに他の女を連れているのはおかしいか、でもなぁ、俺のことを知っているならこいつのことも知っているはずだから、気にしないはずだ………と思いたい。
「で、用事ってなんなの? 朝隠したのが関係あったりするかな?」
うまく隠したつもりだったが、バレていたか、やはり。
若干そうじゃないかな?って思ったけど、その勘はあたってか、俺の幼馴染は俺の心理を読みすぎて怖い。
どこからラノベのタイトルみたいだ。
「はぁ。 これだよこれ」
俺は堪忍してポケットに閉まっていたピンクの手紙を取り出し、奏に見せる。
「ほぉ、ひなたにラブレターか、物好きもいたもんだ、コミュ症の男性恐怖症のひなたくんにねぇ」
ニヤニヤとした笑みを浮かべてからかってくる。
「その芝居じみた声やめろ、お前も女性恐怖症だし、大体、俺の男性恐怖症はコミュに関係ないだろ、まあいいや、そういうわけで、帰らなくてもいいから教室から出てもらえないか?」
適当な理由ができたのでそれで出てもらおうと足掻がくが
「いやだよー、その告白してきた本人を私が見極めてやるから覚悟しとけー」
誰に宣言しているんだが、と呆れていると。
バンッ
と力強く扉が開かれ、そこから一人の女子が入ってくる。
その女子は俺の姿を認識すると迷うことなく俺の方まで向かってくる。
その御蔭で顔を正面に捉えることができ、そいつの外見が分かる。
腰までまっすぐに伸びた赤い髪、すらりと伸びた高い身長、そして端正な顔に、髪と同じような綺麗な赤水晶のような灼眼。
知り合いでは無いがこの女子は知っている。
俺だけではない奏も、このクラスにいた人たちも、学年違くても一度は目にしている人物。
裾山高校の生徒会長こと双島真那本人だった。
「櫻井日向君、佐倉奏君、であたっているか?」
それぞれ見比べながら問いかけてくる。
「そう………ですか、で、会長がなんのようで?」
「おや、届いてなかったか? ここで待つようにと手紙を入れたはずなんだが、てっきり待っているから読んでいるとばかり思っていたんだが」
え?
手紙を入れた?
待って、待って、たしかに手紙は受け取った、だがあれはラブレターで放課後告白するために入れたわけじゃないのか?
「ごめんなさい少し混乱してるんですが、一回聞いていいですか?」
「ん? なんだ?」
「手紙というのはこの手紙ですか?」
俺は恐る恐る後ろで隠していたこの手紙を取り出し会長の前にだす。
「それだそれ、ちゃんと読んでいたじゃないか」
「やっぱりこれは会長が?」
「あぁ、もしかして名前書いてなかったか? それはすまなかったな、手紙というのはあまり書き慣れないもので忘れてしまっていたようだ」
「最後に一つだけ確認していいですよね、これはラブレターで告白するために置いたってわけじゃないですよね?」
「もちろんそうだ、連絡先もわからなかったしな、手元にあるのが後輩にもらったこれしか手持ちがなくてな、昨日行こうにもすぐにいなくなってしまうからこれを入れさせてもらったんだが、もしかして勘違いしてしまったか?」
確かに手紙には好きの言葉はひとつもなかったし、一人で待っててくれとはなかったけどさぁ、この仕打は悲しい。
やっとモテ期が来たのかと思って一人で喜んでいたのにそれがただの俺の勘違いかよ、なんど恋愛関係で勘違いしまくってるんだよ、そろそろ反省しろよ俺。
隣を覗きこんでみると案の定、奏は笑いをこらえたような表情で俺を見ていた。
八つ当たりに近いが、あとで覚えとけよ。
そんな残念な真実が発覚したところで話を戻すため会長のほうへ向き直し、口を開く。
「真相は分かりましたし、納得はし難いですが、しました。で、要件はなんでしょう、会長とはあまり接点はなかったはずだし、なにかやったというわけじゃないと思っているんですが」
少し恥ずかしさで強めな言い方になってしまったが、会長は気にしてないようである言葉を口に出す。
「フォビア」
フォビア?
キャビアみたいな名前だな、それがどうしたのだろうかと答えようと思ったが会長はその疑問は織り込み済みのようで、そのまま解説を始める。
「いわゆる恐怖症と言う意味さ、特定の物に対して心理学的、生理学的に凄まじいほどの拒否反応を起こす症状、トラウマと言っても変わりないだろう」
どんなものがあるかわかると思うがと前置きをして続ける。
「先端恐怖症、暗所恐怖症、閉所恐怖症などと世間で有名なものから始まり、水恐怖症や孤独恐怖症などもある、あぁ、男性恐怖症などもあったね」
最後の言葉は思い出したかのように言ったわりに俺のほうを見ながら強調し、確かめるように俺を見つめ返す。
「櫻井日向君、それと佐倉奏君、フォビア部の資格者だ、歓迎するよ」
修正する点や、推敲するところなどたくさんあると思いますが、暖かい目で見てくれると
うれしいです。
次回更新は未定ですが、出来るだけ早めに更新しますので、よろしくお願いします。