十三話
「仕えさせてくれるの? でも盗みなんかしちゃったし、本当は殺されんのかな」
疑っているような台詞を吐いてはいるけれど、疑っているようには見えなかった。
てか抑々、誰が絵を盗んだくらいで殺すのよ。それもこんな絵、これっぽちも魅力が分からないし。なんなら捨てたって構いやしないわ。
絵なんてどうでもいいから、私は木下明という少年が欲しい。この子を手にしたい。
「ゆきたんだってこう言ってくれてるし、おいでよおいでよ。殺したりなんてする訳ないじゃん」
何これ可愛い。笑顔で明にそう言う美咲は、あまりにも可愛らし過ぎた。あまりにも破壊力が。
どうしよう、興奮してきた。やばい、鼻血出たらどうしよう。
「そうか。んじゃ、お願いしゃーす。どうすりゃ、いいすか」
一生懸命迷いながらも敬語を使おうとしている努力は感じた。
その喋り方、むしろバカにされているように感じるから止めて欲しい。いや、そんな感じ方するのは私だけなのかもしれないけどさ。
「普通に喋ってくれていいよ? あーたん」
素直に敬語に距離を感じたのであろう。そして喋り辛そうにしていることも分かったんだろう。
だから可愛く笑って、美咲は明にそう言った。
嫉妬してしまうほどの笑顔を、美咲は明に向けていた。今まではそんな笑顔、私にしか向けてくれなかったのに。




