十一話
微笑みながら、私は少しずつ彼に歩み寄って行く。戦う気がないこと、ちゃんと感じてくれていればいいけど。
「素晴らしいか? そう言って貰えて嬉しいよ」
普通に、素直に喜んでいるようだわ。こちらに罪悪感が生まれて来るほどに……。
しかし、こんな世だわ。本当にここまで素直な人がいるかしら。そう考えたら、演技である可能性もあるわ。
「名は木下明だ。って、名乗らせるな。名乗らせたら、名乗るってのが常識だろ」
それは本名なのかしら。そうなのだとすれば、とても素直な少年だわ。持ち帰り確定ね。
「常識、まあいいでしょう。私は天野雪絵と申します。ご存知ではないでしょうか」
名前を名乗っても、全く驚いた様子はない。これはどうゆう意味なのかしら。
本当に私を知らない。その可能性も十分あるし、それなら仕方がないわ。それでもとぼけているだけなら、余計な情報を与えてしまったわ。
「知らないな。んじゃ、もう一人の可愛い子は」
ええ、美咲は可愛いわ。それは認めるけど、私のときは可愛いだなんて言ってくれなかったじゃない。この私にこんなことして、バカにしているにかしらね。
「梶原美咲という名の超絶美少女です。一応姫という身分なのですが、ご存知ありませんかね」




