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第6話 非常事態宣言


「ギルド長、これは明らかな異常事態です。大迷宮の深層への立ち入りの制限と、さらなる調査が必要であると考えられます。」


「…………それほど、なのか?」


「残念ながら。これまでに類を見ない現象です。何が起きてもおかしくはありません」


 大迷宮から帰還した俺たちは、すぐにギルドへ報告をしに向かった。


 記録できない、記憶もない。


 これでは攻略本を作るどころか、攻略することすら難しいであろう。こちらに干渉している「誰か」は記憶すらも改竄できる。それが迷宮内のみなのか、迷宮外でもできるのか。

 何もわかっていない段階では、これ以上関わる人間を増やさない方が良いだろう。





「……大迷宮の一部を封鎖するのならば、大問題になる。ダンジョンが封鎖された例はない。せめて、第96層のみの閉鎖だ。第95層まではすでに攻略本が完成してしまった。攻略済みの階層が閉鎖となれば、ギルドが何か企んでいると考える者は多いだろう。ダンジョンが大きな産業のこの国で、ギルドへの信用が落ちることは国の信用が落ちることに直結する。国家の危機に陥る可能性すらある」


「しかし、それでは被害が拡大する可能性があります」






「…………仕方あるまい。わかった。少し待っていてくれ。幹部を呼んでくる」




「ねぇレオ。これ大丈夫かな。なんか大事になってきた気がするんだけど……。なんか怖いね」

「そうだな……。すんなりと解決すればいいんだが……」






「待たせた。申し訳ないが会議室の方へ移動してもらいたい」


…………会議室は本来、部外者が立ち入ることはできないはずだ。大事になってしまったようだな。あぁ、俺の平穏が……。




会議室に入ると、ギルド幹部六人が待っていた。 特にセレナは若くして副ギルド長に上り詰めたことで有名である。


「これより緊急会議を始める。今回は大迷宮第96層での異常事態についてだ。申し訳ないがアレオ、説明をお願いする」


 は?いやいやいや聞いてない聞いてない。全員がこっち向いちゃったじゃないか。……しょうがない。やるか。


「……順を追って説明します。探索記録にもあるとおり、私たちは二週間前に第96層の攻略を開始しました。第一回遭遇戦では新種のモンスター二体と遭遇し、種135824番としてデータベースに登録しました。そのモンスターはこれまでに確認されたものとは異なり、攻撃の分析、映像の撮影ができず、探索記録ではモンスターにあった紋章の部分のみ、記録することができませんでした。また、記憶にも残っていません。記録用魔道具の不具合を疑いましたが、王立研究所で調べても不具合は見つかりませんでした」

「装備を一新し、本日第二回の攻略を行いました。しかし、通常は群れで確認されない、二種が大きな群れで行動。殲滅したものの、異常であると考え、即時撤退を判断しました。撤退の途中で該当の種のモンスター二体に前回とほぼ同じ場所で遭遇。あわや交戦かと思われましたが、該当モンスターは威嚇と見られる行動をとったのち、逃走しました。こちらもこれまではフロアボス以外で確認されていない行動で、明らかに知性を持っています。私たちは帰還後すぐ、こちらに報告に来ました。私たちとしては、大迷宮の深層への立ち入り制限と、調査をすべきだと考えています」


「以上が概要だ。探索記録にも同じことが書いてある。私も彼らの意見には賛成だ。

そして……………………、これを第一級の非常事態であると考える。諸君の意見を聞きたい。」


部屋全体がざわつく。それもそのはず、第一級の非常事態など今までになかった。

かつて、大迷宮からスタンビードが起きた時でさえ第二級である。第一級など考えられない。


「私!調査!やりたいです!面白そう!人智を超えた存在を研究できるかもしれない、こんな楽しそうなことやらなくていいんですか!?」


「……エレヴァナ、黙っておれ。ゴホン、わしは賛成だ。長年、情報・記録統括官として、ギルドの全ての情報を扱ってきたがこんなことは見たことがない。それに、彼の記録用魔道具は彼しか扱えないように作った。能力面もあるが、改竄を絶対に行わせないためだ。その記録の改竄、ましてや記憶の抹消など、人間の成せる業ではない」


「私も賛成だ。戦務官として言わせていただくが、大迷宮の深層に入っているにはクランも多数入っている。集団で行動しているクランが、干渉を受ければ世界のダンジョン探索が止まる可能性が高い」


「ディオス、ニコラスはどうだ?」


「記録の改竄は非常にまずい。歴史が改竄されているのと同義だからな。もちろん賛成だ」

「ギルドの財政は安定しています。しばらく第96層を閉鎖しても問題ないかと」


「わたくしも賛成ですわ」


「全員、賛成ということだな。まさか、第一級を宣言する最初のギルド長となるとは。のちに国王陛下に報告をする。事後報告とはなるが、仕方あるまい。おそらくこれは国家機密に認定されるだろう。情報を知るものは国王陛下、王妃様とこの場にいるもののみになる。絶対に漏らさぬように」












「…………ルメア王国ギルド長として、アレクシオス・ファネリスの名の下に、第一級の非常事態を宣言する。併せて大迷宮第96層の閉鎖、調査隊を結成しての調査を行う」


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