第45話 問題②
「端的に、結論から申し上げますと、我々にもなぜボスが出現しなかったのかは分かりません」
「ボスは何者かの入室が確認された時点で出現します。たとえモンスターであっても。少なくとも今まで、これに例外はありませんでした。観測されたデータを見ても、ごく一般的なダンジョンのボス部屋と『ボスがいない』という点を除いては何ら変わりありません」
第98層地下一階でボスと戦うはずだった。はずだったのだ。
しかし、ボス部屋入室から一分経ってもボスは現れなかった。通常なら入室後すぐに現れるというのに。
一分が経過しても出てこなかったことから、何らかの異常、もしくは未だに経験したことのない状況であると考え、即時撤退に踏み切った。今はデータを詳細に解析するために研究所に駆け込んだところである。
「…………お気を悪くしたら申し訳ないのですが、ボス部屋であると誤認した可能性は?」
近くにいた研究員の中では比較的若い青年が言った。
「……………………なるほど。確かに一理ある。あるのだが、少なくともこれまでの層では『あからさまな扉のついた部屋』はボス部屋しかなかった。もちろん隠し部屋にも扉がついたものはあるが、分かりにくく細工してある。その他の場所はそもそも扉がない」
「レオンさんが言ったのに加えて、第98層地下一階のほぼ全ての箇所を確認しながら進んで行ったこともあるので、その可能性は低いんじゃないでしょうか?」
「そうですか……」
なるほど、若いなりの柔軟な発想だ。この部門に来てからはそれほど時間が経っていないのか? 固定概念にとらわれていない。
てか俺こいつと同い年ぐらいな気がするんだが、何でこんな年長みたいに達観してるんだ?
……いやそもそもなんでおっさんばっかなんだこの研究所は。
「ひとまず、我々研究所としては可能な限りの重武装と調査機器とともにもう一度入室していただくを薦めておきます。同行できたら良いのですが、一番腕のたつやつでも第88層までしか行けてないんですよ。可能な限りの協力は致しますので、よろしくお願いします」
その後、今後の計画を決める会議を行なったのち、帰宅した。
再度の入室は明後日とし、明日のうちに可能な限りの武装を集めてきてくれるそうだ。
…………センチネルがあれば話は早いのだが。
「あ゛ぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「ホノカ、ソファに飛び込む前に手を洗おうか」
「だって疲れたんだもんっ! 何でいないの!」
「駄々こねないで。子供っぽくて可愛いけどさ」
「子供じゃないっ! れおが精神年齢進みすぎてるだけなの!」
「……確かに。そんなことよりも手を洗おうか。行く気がないなら強制的に連れてくぞ」
「——っう!? いきなり脇腹触んないで! くすぐったいのっ!」
「うるさいな。行かないから抱き上げて持って行こうかと」
「物じゃないっ!」
なんか、うるさいけど癒されるわ。やっぱホノカだな。




