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従妹と親密な婚約者に、私は厳しく対処します。  作者: みみぢあん


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58話 誇り高い婚約者たち -ENDー


 下級文官の試験に、クレマンが合格してから四年の月日が流れた。


 私とネリーは日傘をさして。

 王立騎士団の鍛錬場で、激しく木剣で打ち合う騎士たちの様子を眺めていた。


 隣に立つネリーが、騎士たちの動きを目で追いながら口を開いた。


「ねぇ、ミレイユ。こうして見ると……あなたの婚約者は、ずいぶんと逞しくなったわね」


「……そうね、私もそう思うわ。ここでクレマンが鍛錬を始めた頃は、すぐに息切れをして、バタン! と倒れていたのにね」


 ルドヴィクお兄様とガンッ! ガンッ! と派手な音をたてて、木剣で打ち合う婚約者のクレマンをジッと見つめ、私はネリーに答えた。


「私の婚約者。何だかまた、雄々しくなったように見えるけれど。気のせいかしら?」


 ネリーはルドヴィクお兄様をジッと見つめて言った。


 学園を卒業してすぐの頃。

 暇を持て余して毎日のように私に会いに、ファーロウ邸へ入り浸っていたネリーは、休暇で実家に戻っていたルドヴィクお兄様と仲良くなり。

 ルドヴィクお兄様に求婚されてネリーは婚約した。


 ──ネリーが婚約した当時は『これで私たち、義理の姉妹ね!』 と二人で大喜びしたけれど。お互い婚約期間がこれほど長くなるとは、思いもしなかった。



「ネリーの気のせいでは無いと思うわ……」

「やっぱり?」


「ええ。……だってルドヴィクお兄様ったら。クレマンに刺激されて、前よりも熱心に鍛錬をしているもの」


 ネリーがハァ───……と大きなため息をつき。

 私もネリーにつられて、ハァ───……とため息をつく。


「ねぇミレイユ。私たち……そろそろ行き遅れの年齢に、なってしまうけれど。このままで大丈夫かしら?」


「そうね。私もそのことに気づいていたわ。私たちは本当に、あの婚約者たちと結婚出来るのかしら?」



 約束通り、下級文官試験に合格したクレマンは、王立騎士団付きの文官となり。

 騎士団長のガルフェルト侯爵閣下の執務を補佐する合間に、騎士見習いたちと一緒にクレマンも鍛錬を始めた。 


 そんなクレマンに、妹の私を溺愛するルドヴィクお兄様は……


『クレマン! こんなに未熟な半人前では、心配で妹を嫁にはやれないぞ! お前が王立騎士団に入団するまで、ミレイユと結婚させないからな!』


 ……と、また面倒なことを言い出したのである。

 これにはお父様もルドヴィクお兄様の横暴ぶりに、あきれて苦笑した。


『ルドヴィク。そこまで無茶を言ってはいけない。さすがにクレマン君が気の毒だ』



 ──しかし。


『ルドヴィク卿に未熟な半人前と呼ばれては、僕も黙ってはいられません!』


 腹をたてたクレマンはルドヴィクお兄様に売られた喧嘩を、買うかたちで(実現するまで何年かかるかなど考えず)受け入れてしまった。


 ルドヴィクお兄様が剣の師匠となったせいか。クレマンの性格まで師匠のルドヴィクお兄様に影響を受けたらしい。



 ……だが意外にも、騎士団長のガルフェルト侯爵閣下が、この話をはねのけた。


『いや、だめだ! たとえ入団試験に合格しても。クレマンの王立騎士団への入団は断固、私が拒絶する。ようやく手に入れた補佐文官を、簡単に手放してなるものか!』

 

『……だが、クレマンの意志は尊重しよう。そこで“騎士爵”を取ってはどうだろうか? それなら私の補佐文官のままだ』


 結局、侯爵閣下もルドヴィクお兄様の提案を半分採用し。自分の利益も守れる妥協案を提示した。


 エリート騎士ぞろいの、王立騎士団の入団試験に比べれば。

 “騎士爵”を取るほうが余程簡単ではある。


 “騎士爵”とは一代限りの特殊な爵位だが。王国ではいわゆる、国家資格のことである。


 一定期間、騎士団で実務をこなし。そこで騎士三人に推薦状をもらい受験資格を得る。

 そして騎士試験で実技と知識。騎士としての道徳心などを審査され。合格したら騎士の資格に、“騎士爵”が付いてくるのだ。



 王立騎士団の見習い騎士たちが、二年ほどで終えた実務期間を。クレマンは倍の四年かけて終えた。

 文官の仕事と両立しながらだから、四年で終えたのはけして遅くない。


 受験資格を得るための推薦状は、侯爵閣下とルドヴィクお兄様。そして学園時代の騎士課の友人に書いてもらい。

 クレマンは来月、行われる試験を受ける予定だ。


『騎士爵を得るまでは結婚できない』

 ……とクレマンが言い出した時に。火付け役となったルドヴィクお兄様も、連帯責任でネリーとの結婚を延期した。



「騎士……って、見かけは凛々しくて素敵だけど。普段はおバカなのよね?」 


 鍛錬場でクレマンとルドヴィクが、派手に打ち合う姿を眺めながら。しみじみとネリーがつぶやく。

 私はまた、ハァ───……と大きなため息をつく。


「そうね。職務中はあんなに有能なのにね……」 


 補佐文官として働くクレマンは、この四年間で騎士団長から無くてはならない片腕だと、言われる存在になっていた。



「ねぇミレイユ? 私、考えたの。……結婚式の準備を婚約者たちに秘密で、進められないかしら?」


「んんん? クレマンが騎士の試験に、まだ合格するかわからないのに?」


 ネリーの考えが理解出来ず、私は目をパチパチと瞬きをする。

 そんな私にネリーは、ニヤリと悪い笑みを浮かべた。


「だからミレイユ。私たちは先に準備だけして、クレマンが不合格でも、強制的に追い詰めてでも結婚してしまうのよ」


「……ああ、なるほど! それは良いわ。これ以上、殿方のプライドに振りまわされるのは嫌だもの。今夜、お父様に相談(泣き落とし)しましょう」


「ええ、そうしましょう!」

「クレマンとお兄様が、また別の面倒なことを言い出す前に!」

「絶対に結婚するわよ、ミレイユ!」


 私とネリーはお互いの手を取り、ギュッ! と交渉成立の握手をする。


「ふふふっ……それでも結婚できないと、婚約者たちが我がままを言ったら。

『将来有望なドミニクと結婚する』と脅しをかけてやりましょうよ」


「それ、良い作戦だわ」 

 ミレイユもネリーのように、ニヤリと笑う。


 友人のドミニクが、四年前の下級文官試験で提出した論文を、私のお父様が読み。

 ドミニクの優秀さに目を付け、自分の部下に引き抜きいた。


 現在は王太子(ミレイユの従弟)の側近候補として、ミレイユの父はドミニクを育てている。





 一ヶ月後。


 私とネリーは仲良く花嫁となり。神殿に花婿たちを引っぱり出すことに成功した。



 真新しい純白の騎士服を着たクレマンと私は、少し長めの誓いのキスで……辛く厳しい試練に満ちた、婚約期間をようやく終えた。




ー END ー




最後まで読んで下さりありがとうございます! また、どこかでお会い出来れば幸いです(^^)/


……ちなみに気の荒い騎士団長は『君を愛す気はない~』のマリエルの旦那様です。あちらのお話にはルドヴィクお兄様は出ていません(笑)

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