プロローグ 俺の物語
「――リア!」
土臭い地面に咳き込みそうになる。
地に伏した体で、必死に手を伸ばした。
彼女の手は、人肌には似つかない冷気を纏っていた。
俺の思いが彼女に届くことは、二度となかった。
目の前の魔物が、イメージとはかけ離れた『理性』を蓄えた動きをする。
懐から剣が振り抜かれ、大気中に鮮血が舞った。
膝の皿が割れる音が聞こえた。
――しっかりしろ!大丈夫か?
オレンジ髪の青年――クロノが、俺の手と触れ合った。
「クロノ!」
鬼火に照らされた銀の輪――彼女との契約の証が淡く光った。
彼の手を強く、固く握った。
「ゼル…」
彼もまた、俺の手を握り返してくれた。
「『俺を信じろ』」
その言葉と同時に、彼の魔力が体内に流れ込んだ。
「…!お前…」
「最後の足掻きさ。…諦めるなんて、俺たちには似合わないだろ?」
血反吐混じりの言葉が、胸に刺さる。
彼の瞳の生気は、次第に息吹を沈めていった。
“あの人”から貰ったスキルを使った――視界に千差万別の情報が絡みついた。
空気の流れが“見えた”
マナが川のように流れている。
その源に、無理やり手を突っ込んだ。
その瞬間、『歪み』が生じた。
意を決して、指先に勇気を宿す。
「ぐぁぁぁぁぁ!!」
その歪みは、俺の体を徐々に支配していった。
神経が焼ける。
指先から、腕へ――火が這い上がってくる。
細胞の一つひとつが、この異分子を拒絶した。
まだだ…
隣に倒れ込む少女の手を握った。
「俺は必ず、君を――、――」
決意と歪みが“共鳴”した。
「見つけ――」
空気が軋む。
位相がずれる。
意識が移転した。
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魔術なんて、なくなればいいと思っている。
魔術は便利だと、皆が言う。
だからこそ、それを強制されるのが嫌いだ。
それでも今日、魔術学校の入学式に向かう。
緊張で震える手を、呼吸するように『マナ循環』で治める。
世間知らずの僕にとって、新たな門出のはずだった。
誰も予想しなかった出来事が…
その瞬間、空から落ちてきた。
人型の“何か”が――
三つの世界を揺るがす存在が――
空を裂いて、落ちてきた。




