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Dクラスな幻想郷  作者: ぐんそー
幻想郷へようこそ!
8/18

08話:八雲紫

霖之助「……つまり、俺の身体の中にブライト博士という人格が入り込んでいるというわけだ」


 霖之助は腕を組みながら、難儀な顔でこう言った。彼は無煙塚という場所からその首飾りを拾ってきたと言っているが、その状況に俺は内心焦っていた。


 首飾りがここにあるということはつまりオブジェクトが収容違反していることを示しているからである。いわゆるKeterクラスみたいな怪物なら収容違反してしまうのも仕方がないが(それはそれで異常事態だが)、ここにあるのはただの首飾り、しかも博士が直々に管理しているようなオブジェクトがここに流れ着くとなるといよいよサイトが壊滅するような状況しか考えられない。


D-1104「な、なあ、外の世界を確認できる方法ってないのか?」


魔理沙「どうしたD-1104? そんなに慌てて」


 俺は自分の考えていることを説明しようと思ったが、うまく言葉にできなかった。彼女らは財団職員ではないから、どこまで話せばいいのかが分からなかった。


???「その話、私も混ぜてもらえるかしら」


 背後から別の女性の声がした。俺ははっとして声がした方に顔を向けた。そこには俺を幻想郷に引きずり込んだ「目玉のような形の穴」と、その穴から上半身だけ身を乗り出す少女の姿があった。


 紫 「自己紹介がまだだったわね。私は八雲紫、この幻想郷を管理する賢者の一人よ」


魔理沙「その賢者様が何の用だってんだ?」


 魔理沙は軽い皮肉を含めた口調で言ったが、紫はそれを全く意に介さずに答えた。


 紫 「実はそのブライト博士という人は、この世界の人間じゃない可能性が高いの」


霖之助「そんなの当り前じゃないか、その首飾りは僕が無煙塚で拾ってきたものなんだから」


 紫 「そんな次元の話ではないわ。そのブライト博士は全くの別世界から来たということよ。別の宇宙から、と言ってもいいわね」


魔理沙「……そのブライト博士とやらが異世界の人間であるっていう根拠はあるのか?」


 紫 「もちろんよ。ブライト博士は外の世界に存在する人間ですもの。たまに顔を合わせることもあるわ」


 俺たち三人は大いに驚いた。そこまでスケールの大きい話だとはだれも思わないため当然ではある。ともかく、自分の心配していた事態にはなっていなかったようなので俺は少し安心した。


D-1104「ところで、どうして紫さんはブライト博士……財団のことを知ってるんだ?」


 紫 「そりゃあ財団と情報交換をしているからよ。貴方達から見れば、さしずめ私達は要注意団体といったところかしら?」


 紫は何も知らない俺に対して幻想郷の生い立ちとルールについて説明してくれたと同時に、魔理沙と霖之助に対して財団のことを説明した。彼女曰く、幻想郷は外の世界を日常としたとき、非日常的な存在が集まるように仕組まれているとの事だった。


 忘れられた妖怪や神が幻想郷に集まるのと同様に世間に認知されていないSCiPが幻想郷に入り込む可能性があるため、それを財団と協力して阻止する必要があるようだ。財団はSCiPを自分たちが介入できない世界に逃したくないし、幻想郷としても、この土地を揺るがすような危険な存在を招き入れたくはないのである。


 ただ相互協力とはいうものの、明らかに規模が大きいのは財団であり、そもそも財団の理念自体も幻想郷の脅威になりえるものであるため実際には財団の下につくような形で関係を結んでいるそうだ。


魔理沙「なるほどな、D-1104は財団に勤めるDクラス職員ってわけだ」


D-1104「ああ……そうだ」


 改めてDクラス職員と言われると、少し複雑な気分になる。


霖之助「とはいえ、この状況ならすぐに外の世界に返してもらえそうだな。よかったじゃないか」


 紫 「実は、そうとも限らないのよ。実は、彼は私が招き入れたの」


D-1104「やっぱりそうか」


 自分が幻想郷に来た原因を知れたのは良かったが、俺のような末端の構成員をわざわざ攫った理由は全く想像がつかなかった。


魔理沙「まったく、今度は何を企んでるんだ?」


D-1104「俺には向こうの世界でやることがあるから、できれば帰して欲しいんだが」


 紫 「申し訳ないけど、それは難しいわね」


D-1104「どうしてだ?」


 紫 「まだ、貴方には何も説明できないわ」


 俺を攫って危険にさらした上お願いの内容すら知らせない紫の対応に、俺は声を荒げた。


D-1104「どうしてだよ! こんな危ない場所に連れ込んでおいて、のこのこその張本人が現れたと思ったら何も話さないなんて」


 居間に沈黙が漂う。


 紫 「ごめんなさいね。ここまで生き延びた貴方に敬意を払いたかっただけなの。それでも、まだ話すわけにはいかないわ」


 幻想郷を管理するような立場の人がわざわざ俺を呼び寄せたのだ。おそらく気まぐれではないのだろう。おれは大きく息を吸って、吐いた。


D-1104「分かった、あなたに協力するよ。紫さん、俺はこれからどうすればいいんだ?」


 紫はそっと胸をなでおろした。


 紫 「ありがとう。ただ、人間の里での生活に困らないだけの支援は約束するわ。」


D-1104「助かるよ。 とりあえず、俺はその人間の里とやらで生活をしていればいいんだな?」


 紫 「そうね、しばらくはそうしてもらいたいわ。 あと一つ、幻想郷に来てからのことを教えてほしいわ。なるべく詳細に」


 ここからは財団でやるようなインタビュー形式の問答が繰り返された。この中で、俺はチルノに起こされたこと、諏訪子と出会ったこと、ルーミアに襲われてにとりと逃げ回ったこと、そして魔理沙に助けられたことを自分の話せる限りで話した。

 

 思えばこの一夜でとても多くの人と話し、今までにない現象をいくつも経験した。危険なこともあったが、総じて楽しかったように思える。

 

 一通り話し終わったところで、隣にいた魔理沙たちが声に上げた。


魔理沙「なあ、D-1104話が重要なのは分かるが、私たちも会話に入れてくれよ」


霖之助「僕の中にいるブライト博士がしきりに何か話しかけてくるんだ」


D-1104「あ、すまんかった」


 紫 「あら、そうだったわね」

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