15話:魔王城Ver2.0
まずは、現状把握をしよう。
恒例のステータス開示だ
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名称 :魔王の岩窟
レベル :15
耐久度 :1600/1600
魔力 :960/960
所有スキル:【陣地創成】【独立行動】【環境操作Lv2】【サモンアンデッドLv1】
称号 :【三流壁士】【コンボルーキー】【砂遊び】
名称 :岩窟のガーゴイル
レベル :15
体力 :2600/2600
魔力 :328/850
所有スキル:【破砕音波】【ガルグイユの涙】【魔王の騎士】
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もうあれこれ変わり過ぎてわけわからん。とりあえず耐久度がめちゃくちゃ上がっているな。まあこの岩窟全体が魔王城と化したのだから当然といえば当然か。
「見慣れないスキルが増えたし、何なら前の奴が消えたんだが」
「あー。ここのダンジョンコアを取り入れたから、スキルも手に入れたのよ。あと、スキルは統合されて新しいスキルになるから、減ってるわけではないはずよ」
フランの言うように、スキルの詳細をそれぞれ見てみると――
【陣地創成】――【建材創作】と【ランドクリエイション】を統合したスキル。建材及び地形を創成できる。
【環境操作Lv2】――【地形操作】と【力場操作】を統合したスキル。地形及びダンジョン内の力場を操作できる。
あと称号も増えている。
【砂遊び】――地形操作によって一定時間以上、砂を操作した場合に得られる称号。砂による拘束及び攻撃にプラス補正が掛かる。~人も大地も全て、やがては砂へと還るのだ。だからこそ遊びたまえ、学びたまえ~
砂を使い過ぎていることがバレているな。でも拘束にプラス補正はありがたい。おそらく足止めに使えって事なのだろうけど。攻撃ってどうするんだろ。
「やっべー、やれること増えすぎてテンション上がるわ」
相変わらずトラップもモンスターも使えなさそうだが、さっきのカイルって奴に色々見せてもらったおかげで、何とかなりそうという確信があった。
ただ――魔力がガンガン減っている! そうか、もうダンジョン攻略し終わったから【魔王の騎士】の効果が切れたんだ!
「入口に置きっ放しのあんたの台座をこっちに持ってきなさい」
どうやら、この岩窟内であれば視点を自由に移動できるのは前と同じのようだ。更に、中にある物を再配置出来るようだ。
なので。
「ほいっと」
入口にあった家が一瞬でこの空間へと現れた。俺は急いで屋根の上の台座へと飛び乗る。
「ふー。落ち着く」
「なんか洞窟内に家があるのって変ね」
「まあなあ。ここをフランの部屋にするか?」
この広い空間は言うなればボスエリアだな。
「ちょっと広すぎるわね。奥にもうちょっと狭い空間作れない?」
「ちょい待ち」
俺は【陣地創成】を発動。これもリスト制か。ふむふむ、色々出来そうだな。
この広い空間の先に新たな通路を作成。更にその奥に、家と同じぐらいのスペースを作る。げっ、結構魔力を喰うぞ? 通路と小部屋だけで500近くの魔力が消えた。
無計画な拡張は止めとこう。
俺は家を解体しベッドをその小部屋――フランの私室へと移動させ、ドアを設置し壁は一旦ストックに入れておく。台座はどうやらどこかに必ず設置していないといけないらしいので、とりあえずフランの私室へと続く通路の入口横に設置した。
まあ言うなればこのボスエリアの主みたいな感じだな。
フランが嬉しそうにその私室へと入っていく。
「ちょっと殺風景だけど良いじゃない」
「まあもうちょい余裕が出たら色々増やすよ」
「あんまり気にしなくて良いわよ。それよりも、防衛に魔力を使いなさい」
「分かってるって」
さて。試したい事は色々あるが、まずは魔力供給の為に侵入者を撃退するエリア――この岩窟の入口付近を整備しないとね。
「もう外は夜でしょうし、あたしは寝る」
あくびをしながら、フランがそう言ってもぞもぞとベッドに潜り込んだ。
「へいへい。あ、アストラエはどうする?」
そういえば寝かしっぱなしだ。
「……明日の朝考えるわ」
「了解だ」
食堂の方を見ると、アストラエはまだ寝ているようだ。まあとりあえず寝かしておいてあげよう。
俺はさて、何から手を付けようかと考えるべく、【陣地創成】のリストを見つめる。とりあえず、壁は当分使わなさそうだ。この岩窟自体が天然の砦みたいなもんだからな。
とりあえずまずは、周囲の環境を把握しよう。
俺は視点をこの岩窟の上へと移動させる。この岩の頂上はそこそこ高い位置にあるおかげか、周囲を見渡すと良く見えた。だけど、やっぱり周りには何もない荒野が広がっている。ただ前と違うのは、目測だが5kmぐらい先に灯りが見える点だ。灯りの数や位置を見るに、おそらく村か何かだろう。あれが、アストラエが言っていたこの荒れ地唯一の村なのかな?
「山賊共は定期的にあの村を襲って食料やら水やらを確保していたのかもしれないな」
となると、向こうからここを襲ってくる可能性は低い。警戒すべきはゴブリンだけか。だが、入口付近の門を見ると、外側に傷がやけに多い。それはつまり、定期的に襲撃があったと見て間違いないだろう。果たしてゴブリンだけなのだろうか?
「ゴブリンが定期的に来るならありがたいが……」
モンスターなり、山賊なりがこないと魔力も回復しないしレベルも上がらない。
そこも次の課題だな。どうやってモンスターを呼び寄せるか。
俺はとりあえず、岩窟の入口にある門と、建てていた砂壁を取っ払ってフルオープンスタイルへと変える。
こうすれば、何かが入ってくるかもしれない。更に入口付近に砂穴を複数作成する。お、前と違って複数同時操作できるし、掘れる面積も増えているぞ!
おそらくスキルレベルが上がったせいだろう。しかし気になるのは、この力場操作ってやつの方だ。どうも、侵入者の身体に負荷を掛ける力場を発生させられるようだが、発動するとその間ずっと魔力を消費し続けるようで、多用は禁物だ。
ただ、相手の動きを鈍く出来るのならピンポイントで使えばかなり有効だとみたね。
俺がワクワクしながら、どうするか考えていると……岩窟の入口側――つまり南側から、何かの群れがこちらへと向かってやって来ているのが見えた。
なんだろうか、まるでこの岩窟に何かあると分かっているかのような動きだ。
それは、土色の毛皮を纏った狼の群れだった。見れば、一匹一匹が大人ぐらいのでかさだ。それが一直線にこちらへと向かって来ている。
「ははっ! 新生魔王城の実力を試すには丁度良い相手だ」
俺は心の中でニヤリと笑いながら、アンデッドインプを10体ほど召喚する。
さてさて。
魔王城Ver2.0の素晴らしさ、見せてやろう。
いよいよ本格的なダンジョンとなってきましたね!