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3-03/魔王様、高めろコンテンツ力



 ――コンテンツ力。

 それは、マジッター上に於ける、ギルメン獲得の最大の要素。

 単純に言ってしまえば、『お、この人ええな、これからチェックしよ』と思わせる、何がしかの魅力(パフォーマンス)のことである。


「なんとなくね……なんか、わかってはおったんよ……ほら、余もポポーラ師とかチェック始めたし……畏れ多いけどさ、生意気でもさ、同じことやってると、自然としちゃうじゃん、比較ッ……! ああもう、思い出したらニヤニヤしてきた、そういえばこの前のアレ見た、妖精の羽一枚だけ持って王都までおつかい行くやつ……スゴかったしマジ震えた……腹筋無くなるかと思った……あのな、最近余な、ポポーレ氏を崇拝すべきだと思うんよ……魔王に崇拝されても迷惑かも知らんけど……勝手に邪神扱いすなーって怒られるかも知らんけど、でも、魔王でもやっぱ一人のマジッタラーだし、ファンであってもよくないか……そこんとこどう思うズモカッタ……」


「そうですね。とりあえず、話が脱線しておられます」

「気付かんかった……さすが凄いな百妖元帥……」


 それは置いといて、とジェスチャーをして流れを戻す魔王。


魔王()のアカウントってさ。わざわざギルメンになって、『おっこいつチェックしとこ』って思われるだけの“何か”に欠けとるんだと思う」


 口にしててあまりにきつい事実がまろび出た。

 うっすら自虐の笑みまで見える。


「結局、それってコンテンツ力が無いってことなんよな。こいつに注目したい、こいつを注目しなきゃって人を惹き付ける要素が薄いのだ、これは」


 悲しい補足情報として、先日、ヴィングラウドアカウントの凍結危機を回避するべく制作した例のムービー――【神魔大戦幻想作戦】の副産物は一時的にギルメンの増加に寄与したものの、以降、あまりにも新情報を発信せず、更にはアカウントの全ての発言に【例のものは?(パン)】【例のものは?(パン)】【例のものは?(パン)】とリプラスを送ってくる相手に業を煮やしたヴィングラウドが【今はまだあわてるような暦じゃない】と返してしまったのがきっかけに、波が引くように失せてしまっていたのだった。


 魔王はその晩、ひそかに、『本当は余だってヴィンデモンとグランジェルの物語の決着が見たい』と密かに涙をこぼしたのだが、それはさておき。


「ポポーラ師を始めとする、煌びやかな人気マジッタラーのアカウントを観察し、楽しんで、考えた。余が真に――666代魔王ヴィングラウドアカウントを、他の光に掻き消えぬ星として昇りつめんと欲さんのであれば! この身に、“これぞ”という輝き(カラー)を灯す必要ありだ!」


 そう。

 それこそが、この闘い、マジッター戦争に於ける、橋頭保。


「誰に向けとんのかもようわからん飯テロ画像で人類をひもじくさせようとしとる場合じゃなかった! まず、ひとつでもいい! 余は、“誰かにとっての何か”を目指す! 活動の拠点、ここを足掛かりにして進むのだという“ジャンル”――“ターゲット層”を、自らに設定するのだ!」

「その言葉が聞きたかった」


 身を乗り出すズモカッタ。

 対等な立場を誓う現在の状況であるからこそ成り立つ、魔王の手を取る忠臣の、硬い握手、熱い意志。


「そこに、貴女ならば自ら至ると思っていた。このズモカッタ、心をデスサイコダゴンにして口を挟まなかった甲斐がありました。またひとつ、成長なさいましたね、魔王様」

「ふ、ふ、ふ、ふふ、はふふ! 知らなかったか四天王、この魔王、まだ変身を自分でもわからんくらいに残している! どんどんぐんぐん上がるぞ上げるぞ、器のでかさ!」

「それは即ち――これまでの、貴女様に至るまでの、魔界の歴史を創った665人の魔王の、その全てを超えるという宣言ですか」


「問うまでも無し。魔王という言葉は、余の代で終わろうとも。何故ならば――今後現れる全ての魔王資格挑戦者は、余を上回ること叶わぬからだ」

「素晴らしい。実は、そんな貴女様にぴったりのゲームがありまして」

「うん?」


 なんか流れ変わったか? とこれまでの経験から鋭敏に察するヴィングラウド。

 構わずズモカッタが操作する、二人で共有している絶望作戦用スマホ。


 ――今日は、気付かなかったのだが。

 スマホのホーム画面、今まで使っていなかったページに行くと、いつのまにやら新しいアプリがインストールされており、


「はい、今回陛下に挑戦して頂くのはこちら」


 タップされるアイコン。

 掌で視線を促される、玉座の間のスクリーン。

 果たして。

 そこに映った画面とは――


「現在、マジッターでも話題沸騰! 人間界中で対戦白熱! 【魔王キャッスルバトル】、レート1700への道ーーーーッ!」


 平坦な土台に様々な形状の魔王が積み上がる、地獄レベルにシュール極まりない絵面であった。

 顔のすべてのパーツが中央に集まる表情になった後、しばし画面を無言で見ていたヴィングラウドは、

 不意に、ぽつりとこう言った。


「ウチのパパおるやん」



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