3-04/魔王様、今日挑戦するゲームはこちら、魔王キャッスルバトルです
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説明しよう!
【魔王キャッスルバトル】とは、先日スマルトフォ用アプリとしてリリースされた、新感覚対戦型落ちものパズルである!
プレイヤー同士がネットワークを介してリアルタイムでマッチング、先手と後手で台の上に落ちてくる歴代の魔王を積み合い、先にバランスを崩して魔王を奈落へと落下させてしまったほうが負け――そんなシンプルなルールと、チュートリアルすら必要ない簡単操作で、子供から大人までが夢中になって楽しめる奥深いゲーム性を実現させた、大人気コンテンツなのだ!
「時に魔王様、“ゲーム実況”というものをご存知でしょうか」
百妖元帥が言うには、これもまた、平和な人間界で愛されている文化なのだという。
この百年、魔界からの侵略・魔族との戦争が行われなくなった人間界ではスマホ以外にも数多の文明が発展し、とりわけ、魔道娯楽の分野は目覚ましい進歩を見せたとか。
例の画像編集・合成ソフト【Mahoshop】がいい例だ。大魔術師レベルの現象が、専用のアイテムを解することで誰の手でも・ご家庭でも気楽に行えるようになったことで、生活を豊かにする為の発明を行うゆとりが人間界に生まれたのだ。
「この辺りの歴史をなぞり出すと楽しくなって時間を食って大変なので、本日は割愛します。まあ要するに、人々は、衣・食・住、生活の為だけの魔法ではなく、楽しむ為の魔法を磨き始めたというわけで」
そのうちのひとつに、それがあった。
幻術を利用した仮想空間製造操作技術の汎用術式化、即ち、
「“あなたの家族に、愉快な大魔術師を加えませんか”――そんなキャッチコピーと共に売り出され、人間界三大陸中で爆発的なヒットを飛ばしたものこそが、今日の世界的魔道ゲーム文化の礎となったマジック・ゲーム・アイテムの雄。旧世代機ながら今なお多くの熱狂的ファンを持つ初代【ファミリー・ウィザード】、通称ファミザドなのです」
発売当初、【人を堕落させる過剰な娯楽】とするような偏見もなくはなく、色眼鏡で見られることも多かった幻術ゲーム機だが、そんな歴史も今や昔。
迷信・迷妄が打ち破られるように、ゲーム文化はその楽しさ・幸せさを広く正しく受け入れられた。
【幻術ゲームには懸念されていた中毒や依存の症状を引き起こすような危険性も無い、極めて安全な娯楽である】との研究成果が賢者ギルドより信頼性あるデータと共に発表され、今日の人間界では老若男女を問わない大勢が、“人生を潤すもの”としてゲームを傍に置いている。
「加えて、ここには更に面白いことがある。ゲームとは、自分でプレイするだけでなく、人がやっているところを見ているのも、また楽しい――と、いうことが、いつしか新しい盛り上がりを生み出したのですよ」
さながら、スポーツのように。
あるいは、闘技場の戦士たちに、熱狂の歓声を送るように。
楽しみを楽しむ当事者の、本人・個人の枠を越え、娯楽の輪が広がり始めた。
「それが、ゲームプレイをしている者たちを観戦するという楽しみ方。そこから派生して――ゲームの映像のみならず、それをやっている本人の反応を込みで記録し、ひとつの作品として見物にする、【ゲーム実況動画】という文化なのです」
作成された動画は、マジッターも軸とする賢者ギルド製作のマナ・ネットワーク上の動画投稿サイト……投稿者への報酬還元・画質の良さなどで安定した人気を誇る業界最大手の【Mana Tube】、“動画へのコメントが画面上に流れる”というクリエイターと視聴者の双方向性コミュニケーションで人気を博した【マギマギ動画】など、各種の受け皿へアップロードされて人目に触れる。
面白い動画を投稿し、それが何かのきっかけで話題になれば――たちまちの内に人気者、マジッターギルメンドラゴン上り、という例は実にポピュラーに存在しているのだ!
「百の魔王に仕えし四天王、百妖元帥ズモカッタは見抜きました。貴女様は、そう、持ってる。色というなら既に、ジャンルというなら身の内に――絶大な、魔力を秘めておられるのです」
ゲーム実況において、必ずしも、スーパープレイは必要でない。類まれなる巧みさ、熟練の技術、それは確かに目を惹こう、心を沸かせよう、だが、売れっ子への道は、それだけではない。
そう。
その“道”の存在こそ、百妖元帥ズモカッタが、主に、ゲーム実況を勧めし根拠。
「扉開く鍵、その名をリアクション力。ヴィングラウド陛下、貴女様は――苦難の中で一際に、本領を発揮するタイプであらせられる」
すべては、布石。
この為の、調査。
賢明なる読者諸兄と言えど、百妖元帥ズモカッタの神算鬼謀にはたまげさせられたことだろう。
いつも毎度うまいこと主をいじる仮面の道化師は、いずれ必ず訪れるこの瞬間を見越して、主の適性を見極めようとしていたのだった!!!!
「沈まぬ陽は無く、また、久遠曇らぬ空も無い。今こそ、時は満ちました。さあ、魔王様、ヴィングラウド陛下、私が認めた、私の主――貴方様のドチャクソヘタレぽんこつ具合、失礼、言葉を誤りました、今日晴れてるので。もとい、万民の警戒心を悪魔的に無効化する狡猾な素振り、心に影が如く忍び込む回避不能の籠絡技術を以てして、人間界を征服しようではありませんか。まさに――ゲーム感覚で、ね」
誰もが確信出来る。
その仮面の下、封じられた表情は、今、悪辣に笑んでいると。
今こそ知れ、人間界。
これこそが、百妖元帥ズモカッタだ。
謀略・策略・計略を練り、心を操り、国さえ揺るがす大策士。【いざという時裏切りそうな四天王】ランキング、百回連続ナンバーワン。
敵に回せば恐れられ、味方にいてさえ胃の腑が竦む、『有能過ぎて逆にこわい』と仕えた魔王仕えた魔王に言われ続けた男の完璧な作戦が、今、満を持して実行に移され、
「わ、わぁ~~~~っ。た、たいへんだぁ、まさかここで、315代魔王・ゴイサゴイサ様が来るなんて~~~~。あ~、案の定頼り甲斐あるゴイサホーンが193代魔王・ジングライ様のナックルに引っかかってしまったぁ~っ。くぅずれるぅ~っ。ひゃぁ~ダメだ~また負けたぁ~。ワイカタさん対戦ありがとうございました~。くぅ~次こそは勝つぞぉ~っ」(以上、全部分棒読み)
――言葉の後、五秒ほど、こざかしい余韻を残して、録画・録音の終了ボタンが押された。
玉座の間に急遽用意された録画環境、机に座り、内部音声以外は特定人物の声のみを拾う状態の魔術が機能していたスマホをいじるヴィングラウド、その彼女を2アングルから撮影していた機材が連動し、すべてのデータがクラウド上に保存される。
「……っぶぁっはぁ! っおい! ぉっこれっズモカッタこれ、行ったんじゃない!? や、あったよ感触! なんていうの――っそう、百万再生の予感! 感じたわ波動! 我ながらさ、今、背筋と足腰にきてるから! 余、自分が生み出したものを、こんなマジパネェと思ったことなかったもん未だかつて! 軽く超えたよ、魔王スキル習得修行の大詰めで一万体のスケルトンを束ねたマウンテンスケルトン作った時の達成感!!!!」
ふっひゅー! と鼻息荒きハイテンション。
ズモカッタが対戦中の主の様子を思い出し、無邪気を超えた邪気に当てられ心を宇宙の彼方に飛ばしているところに被さる声。
スマホ片手に駆け寄ってくる魔王から、「これもうええじゃろ!? いっそゲーム画面と声だけの無加工無編集でいけるじゃろ!? 生産者である余としてもね、この味わいはまず、何もつけないそのままで楽しんで欲しいという願いがあるんだけどそっちどう!?」というウッキウキの打診を受け、
「(これはこれで面白くなりそうなので)プリーズ」
666代魔王ヴィングラウドのManaTubeアカウントにドエラいものが投下されるのを、いっそ清々しく見送った。
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