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アラサー、異世界で婚活する  作者: ほげえ(鼻ほじ)
3/3

劇的びふぉーあふたー


目が覚め、大きく伸びをする。なんだか昼過ぎまで眠ってしまい寝すぎた休日のようなだるさだ。



「おや?目を覚ましましたか」



声のする方を向くと、そこにはモノクルをつけた銀髪の男性。お人好しそうな顔立ちだ。


「え?あれ?ここ、どこ」



ぼーっとしたまま思ったことを呟いた。



「ここは町外れの教会です。あなたは裏庭で倒れていたんですよ」



町外れの教会?そんなもの町にあっただろうか。

というか教会に銀髪の神父さんって、なかなかファンキーだな。



「はい、まずは温かいものでも飲んで休んでください。食べられそうなら、パン粥用意しますよ」


「ありがとうございます・・・」



手渡されたのは木をくりぬいて作られたコップ。

口をつけるとほのかにレモンの味がする。白湯にレモン果汁を絞ったもののようだ。



レモンのおかげで、だんだん頭が冴えてきた。


そういえば私は酔っぱらいながら婚活のアンケートを入力していたはず。そして最後によい旅を、なんて表示があって、それからーーー



「お待たせしました、パン粥です。卵も入れたから栄養たっぷりですよ」



ニコニコと愛想の良い神父が手渡してくる。



「・・・いただきます」


渡されたものを断るのも失礼なので口をつけた。


「・・・甘い」


パン粥というがミルクに浸され柔らかくなったパンではなく、ペースト状にちかいフレンチトーストだった。

甘くて美味しい。



「よかった」


「あの、私裏庭に倒れていたって言われてましたが、身に覚えがなくて。自分の家にいたはずなんですが」



「おや、お使い様でしたか。お会いできて光栄です」


目を大きく開いて驚いた様子の神父。


「え?お使い様って?」


「稀に異世界からお使い様がいらっしゃるのです。我々には思い付けないような技術を広めてくれたり、厄介な魔物を倒してくれたり、我々が行き詰まったときに神が派遣してくれるんです。お使い様自身はご自分の願いのために行動された結果として我々の世界が助かっているそうですよ」



どうやらこの世界ではお使い様は常識のようだ。当然のことのように説明される。



「異世界からのお使い様って、よくあるんですか?」



「そうですね、大体15年から30年ごとくらいのペースでしょうか。100年に一度くらいお使い様が2人同時にいらっしゃることもありますね」



神父はレイカの手元へ視線を落とす。



「パン粥、温かいうちに召し上がってください。ゆっくり休んで元気が戻ったらこの世界について詳しく説明しますよ」



優しく微笑んで神父は席を立った。

色々と頭がついていかないが、今は神父の言うことをきこう。

この世界のことを知るのは、元気になってからでも遅くはない。



レイカは少し冷めてしまったパン粥を口に運んだ。



◆◇◆◇



三日後、たっぷりダラダラしたレイカが起き上がる。まさかベッドで三日三晩ゴロゴロし続けるとは、あの神父もビックリだろう。

すっかり太陽が上りきった頃に起き上がったレイカを見て「お寝坊さんですね」と笑って言える彼は強者だった。



ブランチのパニーニをいただいたあと、この世界の説明を受ける。


この世界は予想通り剣と魔法のファンタジー世界だった。

スライムやドラゴンといったモンスターが存在し、冒険者という職業が確立されている。


冒険者の所属するギルドは全世界共通の組織であり、どの国の支配下でもない独立した存在だ。


お使い様は冒険者となって旅に出てもいいし、旅に出なくてもいい。お使い様自身の願いを叶えるために好きに行動すればいい。



「レイカさんは、どんな願いがあるんですか?」



結婚したい。というより子供を産みたい。

そんな本能丸出しの願いを口にするのは憚られた。


「私の願いは、お恥ずかしいのですが恋をしたいということでしょうか」



「素晴らしい。女性らしい素敵な願いですね」



ニコリと笑う。

幻覚だろうか、今一瞬ピンクのもやのようなものが見えた気がする。



雑談を挟みつつ説明は続く。


この世界の通貨や、各地の特色、ギルドへの登録方法、今いる国の名前など、様々なこの世界の常識を教えてもらった。



「あとは、お使い様だけが使えるんですが、『ステータス、オープン』と念じると特殊な情報が見えるそうですよ」



さっそく試すと、目の前にウィンドウが現れる。



名前 レイカ

年齢 18

レベル 5

スキル ー

魔法 全属性


名前がカタカナ表記なのはヨシとする。

しかし年齢がおかしい。レイカは28歳だ。


そういえばこの世界に来てずっとダラダラしていて鏡を見ていない。


鏡を借りて見てみると、そこに写っていたのは淡いピンク色の髪と瞳の美少女だった。


透明感のある毛穴もシミもない肌に、血色の良いサクラ色の頬とぽってりとした唇、おでこはデパコスのハイライトを入れたかのような艶がある。


おかしい。

私の顔はどちらかと言えば化け物寄りだったはずだ。


毎日アルコールで浮腫んでパンパンになった顔、大豆のように小さな目と、目の下には青いクマ、頬にはシミ、唇も青くいつも顔色が悪かった。


なぜか異世界へ転移したことで清純派ヒロインになってた。



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