国境紛争(上)
植民地ダイナより東 100km
黒い雲に空を覆われた曇天の中、アンゴラス帝国艦隊50隻とヒルメラーゼ艦隊10が対峙する。普段は威厳に溢れるアンゴラス帝国の戦列艦もヒルメラーゼ艦隊の前では、小さく見える。その小さな船の上で、司令は苛立ちを隠せないでいた。
「なんだ、あの大きさの船は。信じられん。まだ、発砲命令は出ないのか!」
「はい、まだ出ません。」
「ヒルメラーゼ艦隊の進路を塞ぐように伝達しろ!」
「了解!」
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ミサイル巡洋艦 ランスロット
ヒルメラーゼ共和国の最新兵器、ミサイルを惜しみもなく積めるだけ詰め込んだ船。それがランスロットである。
「艦長!アンゴラス帝国艦隊、進路を変えます。このままでは衝突します!」航海士が言う。
「衝突したところで沈むのは向こうの方だ。これはチキンレースでも何でもないのだよ。向こうが避けるか、向こうが沈むかしか選択肢はない。」艦長がニヤリと笑いながら言う。
「艦長、直進してきます。本当に避けなくてよいのですか。」
「構わない。総員対ショック用意!何かに掴まれ!」
船と船の距離はゆっくりと、しかし確実に近くなっていく。
「ぶっ、ぶつかります!」航海士がそう言うなり、衝撃が艦を襲う。
「状況知らせ!」
「火器管制レーダー破損!」
「18番ミサイル発射管に歪みが生じています。」
「衝撃に吹き飛ばされた乗組員が頭を打って気絶しました。」
ランスロットはほぼ速度を変えぬまま、大海原を往く。
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「戦列艦、マッティア転覆しました!」
「まだ、射撃許可は出んのか!こちらの船が沈められているというのに!」司令は憤慨する。
「はい、まだ出ていません。」
「くそっ!アンゴラス帝国をこけにしょって。」司令は拳を机に振り下ろす。
「砲撃用意だ!」司令は呟く。
「司令、しかし許可がおりて…。」
「国境侵犯を犯し、さらに戦列艦まで轟沈させた。これが敵以外のなんだというのだ!各艦に伝達、砲撃用意!目標、ヒルメラーゼ共和国艦隊!」司令はヒルメラーゼ艦隊をじっと見つめるのだった。
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ヒルメラーゼ共和国 第12戦闘艦隊旗艦 アーノルド
艦隊司令のベネディクトは頭を悩ます。
「まさか、本当にぶつかるとはな。」ため息混じりに言う。
「全くです。向こうが沈むという事は分かりきっていたでしょうに。」
「帝国人はプライドだけはたかいからな。」
「大した技術力もないですのにね。」
「アンゴラス帝国艦隊、進路を変えます。」航海士が言う。
「ようやく諦めたか。」
「帝国人にしてはまともな判断ですね。」司令と艦長は笑い合う。
「司令!大変です!帝国艦隊の大砲が発光しています!奴ら、撃つつもりです。」
「なんだと!回避運動を…」
「発砲しました!」その言葉と共に、艦は揺れに襲われる。
「被害状況は!」艦長が問う。
「内火挺昇降装置破損!」
「空海両用機関砲、融解してます!」
「ふぅ、そんなものか。まぁ、所詮は帝国の…」
「ドゴォーーン」突然、爆音が響き渡る。
「何事だ!」
「ランスロットが…」航海士は口ごもる。見れば、みるみる傾いていく最新鋭巡洋艦の姿があった。
「ミサイルが誘爆したのでしょうね。」
「応戦、全力を持って敵を叩きのめせ!全砲門発射用意。」司令は命令を下す。
「近すぎてミサイルが使えん事が悔やまれますね。」
「全くだ。」
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「よくやった!」戦列艦の上で、司令は燃え盛る敵艦を見て歓喜する。
「回頭180°、左舷砲門発射用意!竜母、全白竜発艦!」
「敵砲門こちらを向きます!」見張りが叫ぶ。
「あの数の大砲など当たりはせん。」
「敵艦発砲!」叫び声のような音がし、連続した砲火が友軍を襲う。穴だらけになった戦列艦は、なす術べなく海に引きずりこまれる。
「なんだと!なんて連射性能だ!」司令は敵の技術力に舌を巻くが、数が5倍も違うということを思いだし気を取り直す。
「回頭、完了しました!」
「どうやら、あの筒に当てると爆発を起こすようだな。弱点を晒すとは愚かなことよ。集中的に狙ってやれ!撃て!」
戦列艦より、幾つもの青白い光線が放たれる。そして、3度爆音が木霊する。
「素晴らしい、残りもとっとと片付けてやれ!」




