会話ー黒い侍女
☆マジキムくんの目線2☆
俺は正直目を疑った、
自分自身の頭を疑ったと言っても良い。
だってそりゃあ、突然何も無いところから扉が現れるんだ、
タネを知っていたとしてもここまで驚くんだ。
知らない奴が見たら一体どう思う事になるんだろうね?
「驚いたな…確かに精巧な幻術だとは思っていたが…ここまでとはな…」
王子殿下を事実、目を丸くしして居る、
あの冷静沈着とも言われている王子殿下の仰天顔だ、
レアな物をみたね。
「…行きますか?」
取り合えず聞いておく、
例えここで王子殿下がいか無いと言っても俺は行くつもりだけどな。
「あ、あぁ行こうか…問題の侍女に会う為にね…」
ところで今は昼飯時、
もちろん、学園の学び舎の方だとみんな弁当やら学食などを食べて居るので在ろう。
何故俺が突然こんな話をしなかって?
そりゃあお前、
…腹が減ったからだよ!
俺の腹は盛大にドアを半開きにしたまま図った様になり出した。
「クッ…いい、音だね…?」
王子殿下も肩を震わせながら口をヒクつかせ笑っている。
おそらくご本人としては我慢して居るつもりなのだろうが全くで来て居無い。
ポーカーフェイスならばずっとデカラビアの方が得意だろう。
と、言っても奴にはそもそも感情自体があるのなどうかが怪しいからな。
「ふぅ…あ、いやすまないね、別に君のお腹の音を嗤った訳じゃ無いんだ、君の正直さに気持ちが良くなったんだよ」.
チェッ…
そんなのドッチでも一緒だろ?
そんな事はともかくさ…
「じゃ、じゃあ、入りますか!」
俺は少しの羞恥心と、
これからの大きな緊張感をごまかす為にわざと大きな声を出した。
「そうだね、行こうか…僕ら、最大の障壁に会いに…ね」
☆
部屋に入り、真っ先に聞こえて来たのは歌だった。
聞いてみるとどうも此の国で崇められて居る宗教の神を祀る為の讃美歌の様だ。
え?
俺がまるで宗教信じて居ない様な言い方じゃ無いかって?
ヒトとヒトとの間に格差を作るなんて…神のする事じゃねぇよ。
「歌…讃美歌の様ですね、いい音色だ」
いい音色…
そこには間違いなく同意する。
まるで銀鈴の様に、美しく鳴り、
金鐘の様に心に轟く。
実家に居るどの使用人いや、国中にヒトのなかでも誰よりもよりも美しい歌声だ。
こいつはこの歌声だけでも食っていけるで在ろう事を確信付られる様な歌声だった。
「それにしても、何で讃美歌なんか歌ってんだ?しかも一人でさ?」
普通だったら讃美歌とかってのは多くのヒトと歌う物なんだと聞いている、
その方が祈りが届くからだってよ。
「えーと…確か今は昼の祈祷の時間だったのでは?」
えと…?
昼の祈祷…?
何それ?少なくとも俺は知らん、
まぁそんな事言ったら不敬罪甚だしいな。
「あぁ、道理で」
何がどう、道理なのかは知らないけれどうなづいておくに限るな、こういう時は。
っし…
行くか…
と、思った矢先、
おそらくデカラビアの使い魔で在ろうと思われるカラスが音も無く飛んで来た。
その目は俺たちをはっきりと見据えて睨みつけて居る様にも思える。
「行くな…と言う事ですかね?少なからず歌が終わるまでは」
はぁ…
そう言う事か。
確かに祈祷の邪魔をするのは余りいい事では無いって言われて居るな、
ならば俺たちが邪魔なんだろう。
俺と殿下は暫くの間この讃美歌に耳を傾ける事にした。
☆
その五分後あたりだろうか?
少しの名残惜しさと遠く耳鳴りの様な余韻を残し讃美歌は空に消えた。
俺はデカラビアに何かを言おうとし口を開いて、止めた。
デカラビアからすれば俺も王子殿下も招かれざる客だ、
それを考えたら俺は何を言えば良いか解らなかった。
結局、口から漏れたのはなんの意味も無い吐息だけだった。
こっそりと隣を伺えば王子殿下も俺と同じ様な事を思って居るんだろう、
どうすればいいのか解ら無い様な顔をして居る。
そんな状態が30秒程しただろうか?
この部屋の現在の主?であるデカラビアがこちら側にやって来た。
その動きは優美そのもので、
お淑やかで優秀な侍女のそのものだった。
デカラビアはこちらを軽く見据えると、
その先程まで讃美歌を唄って居たであろう薄桃色の肉厚な唇を開き、言葉を紡いだ。
「王子殿下、及びベエルシバ侯爵嫡男マジキム・イェソド・ザカリア・ベエルシバ様、ようこそいらっしゃいました」
自分の少なくとも短いとは言え無いような名前を水が流れるようにつらつらといってくる。
にこりともその眉を動かす事も無くせず、デカラビアは続ける、
「丁度お昼の用意は済んでおります、祈りの為に出来たてでは有りませんが…食べてゆかれますか?」
深緑の瞳はガラス玉の様に空虚であるが、
言葉からは疑問と言う感情は伝わってくる。
俺は、何も答える事ができなかった、
と言うのも、この国の原則としてやはり、王子殿下に判断を任せようと思ったのだ。
「そうか…じゃあ僕はいただいて行こうかな?マジキム君はどうする?」
まぁ、ご馳走になるに決まってんじゃねぇか。
「あ、じゃあ俺もいただきます」
こうして、
奇妙な昼食会へと目下目的が移った。
☆
使用人部屋は元々は恐ろしく狭い部屋だった、
そしてそれが原因で体を壊す使用人も居た程なのだが、
今の学園長になってからはそれも改善されてずっと広く、ずっと過ごしやすく成った。
そして、
そんな使用人部屋に元々ついて居るこじんまりとした机に俺と殿下は座って居た…
「申し訳有りませんが、本日はお二人様が来るのは何分にも急だった為、簡単な物しか用意できませんで…」
デカラビアが持って来て机に置いたのは質素な皿に盛られたホワイトシチューだった。
それは白く、ほのかな湯気を揺らめかせてとても美味しそうに見えた。
「ほう…ホワイトシチューですか…丁度食べたかったのですが…まさか心を読んだりなどは?」
王子殿下の懸念は最もだ、
事実、俺もカレーの次に食べたかった料理だ、
一瞬、まさか心を読まれたのかどうか気になったことも否定しない。
だが、デカラビアはただ立ち上がったまま否定した。
「そうですか…疑って申し訳有りません、ところで、貴女は食べ無いのですか?」
それは俺も思った事だ、
俺や王子殿下が匙を持っても一向にデカラビアは座ろうともせず、
ただ、一般的な給仕の様に俺たちの後ろに立って居た。
「私には…その資格がございません故…」
まただ…
俺の心の中はさっきまでの穏やかを無くし…
まるで不愉快な感情に襲われた。
まだ…そんな事を…
俺が口を開こうとした瞬間、
王子殿下が一瞬速く言った。
「グダグダと煩いぞ小娘」
とんでもない言葉を…!
王子殿下の本性?は実は毒舌的だったと言う
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