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常識ーされど弟は非常識


バルベリトくんが倒れて居たのは館から全く遠い場所では無かった。


まぁ、

かといっても近い…と言うのも語弊があるだろうけどね。


取り合えず僕は『リゼ』の分身と本体を繋ぐ能力で瞬間移動に近い事をした。


かなり便利だよね!


で、

今はそのバルベリトくんが倒れて居た原っぱみたいなところにきたんだけど…


「そこ、どいてくれる?」


白色の子虎くんが邪魔をしてくれるんだよねぇ…


何か恩義でも感じているのかな?

邪魔臭い、

余りにも愚かしく浅慮な行動だね。


力量も分かっていないみたい、

いや?

分かって居ながら…かな?


このトラくんの魔力の消費にとも成っている衰弱具合を見る限り、

立っているのも辛そう、

って感じなんだけどね。


「グルル…!」


牙を向いて威嚇してくる、

『リゼ』とは違ってしゃべれないのかな?


それとも疲労の限界が来ていてしゃべる事もままならない?


まぁ、良いかな?

どうせ幻術でも撃沈できるしね。


「じゃあ…趣向を凝らしてこんなのはどうかな?」


僕は子トラくんに幻術を見せるベク魔術をこうしした…


瞬間、


僕の右頬に矢が掠った、

まさに形容するに閃光とでも言いたく成る程の速さで。


そして僕の掠った頬…そこから一筋の鮮やかに真っ赤な鮮血が流れる…


今思えばこの世界で始めて怪我をしたね…


そしてそれ以前に僕は女の子だよ?

万死に値するね。


さぁて、

僕に始めて怪我をさせた上に女の肌に傷をつけたオロカモノは誰かな?


罪には死で報いねばね。


「君…何もの?」


矢が射られたのは左手に見える樹木とかから。


そして、

左手の方から僕の右頬を掠めたみたい…


簡単にできる事じゃないだろうね。


少なくとも僕には無理、

まず弓弾けないし。


「お前がこいつらをやったのか?」


その木々の中から現れたのは十二歳程の男の子だった。


身長程もある大きな弓を軽々と持っているあたり腕は確かなんだろうね。


されに、

服の上からだからよくわから無いけれどナイフ見たいなのもイッパイ持ってるみたいだね。


そして何より…

正義感の強い…特有の不愉快な雰囲気をまとっている。


うーん…

素晴らしい程に殺意の衝動が芽生えたたがらも、

僕にはこの子を殺せそうに無いね。


諦めよう。


「質問に質問で返す…と言うのはおかしいよね?先に僕の質問に答えて欲しかったな…?」


ただし、

いつでも仕掛けられる様に準備をしておく、


といっても僕ができるのは相手にありもしない幻を見せたり、過去のトラウマを蘇らせたりするぐらいだけどね。


後者の方は

知って居無いとできない事だからね。


「…俺は…傭兵だ」


傭兵…?

あぁ、もしかしなくても…


“『オルトロス』ね、大方、この山賊みたいなやつは裏切り者なのかしら?”


そうみたいだね、

まぁ『オルトロス』で少年なら御しやすい。


基本的に戦争孤児を引き取った子達が多いからね。


で、

あの子ぐらいの年だと6年前に起きたらしい隣国での紛争かな?


僕が生まれて居て良かったよ…

その紛争は僕も『リゼ』との目を繋いで見ていたからね。


「じゃあ次は俺の質問…だ⁈」


「幻術…成功♪」


思わずにやついちゃったね、

きっとこの子は僕の姿が見えて無いだろうね。


今頃戦火に包まれた街の中を当時の姿でうろついてるんだろうね。


うぅん、

いい気味!


「ぐ…お前…」


「ふふ、じゃあね、このトラくんとかも回収させてもらうよ?」


トラくんの方も僕が幻術で沈めて置いたからね、


『リゼ』は力持ちだしね、

持ち運びには不便しないや。


え?

僕が運ばないのか?


確かに僕は人間とその意種族とのハーフだけれど必ずしもそれがプラスに成る事はないね。


つまり僕は平均的な同い年の子達に比べてもずっと筋力は劣っているって事。


できない事はやらない主義なんだ、

暇つぶしにもならない面倒ごとだものね。


「じゃあね『オルトロス』に飼われたワンコくん、機会が会ったらまた会おうか、南無阿弥陀仏」


☆



僕の前には正座をした四歳の男の子…


つまり弟であるバルベリトくんが居る。


なんで正座か?

反省のポーズと言えばこれでしょ?


「バルベリト様…」


そして、お説教もね、

やっぱり正座してる子にお説教って憧れるよね。


「はい…」


しゅんとして、

それでいて悔しそうに俯いて居る。


「ご自分が何をされたか理解しておいでですか?」


うん、

先ずはこれからだね、


バルベリトくんはまがりなりにも貴族の跡取りなんだよ?


何よりもバルベリトくんに何かあったら真っ先に僕の首が飛んじゃう。


物理的な意味で。


「で、でも!」


はぁ?

反論?


僕のこの完璧なる正論の前に崩れ落ちてしまえばいいのに!


「でもも、なにもありません、バルベリト様は貴族として産まれた以上軽率な行動は許されません」


そうそう、

君のこの度のコトラくん騒動でどれだけ僕が迷惑こうむったか分かっているのかな?


「放ってオケねぇだろ!助けられんなら救いてぇじゃないか」


救えるならば…


自己満足だね、

ヘドが出る。


そんなかってな…

偽善で僕の平穏を壊すのかい?


許されざる愚行だね。


「確かに、その救おうとするのは良い事だとは思うわ…ただ」


『リゼ』がバルベリトくんを諭す様に言う。


「貴方はさっきデカラビアが言った通り貴族の…それも伯爵家の重鎮の跡取りなのよ?」


ーーその意味をよく考えなさいーー


「…わかった、でも、俺は救えるんだったら救いたい、これを辞めるつもりはないよ」


はぁぁぁ!!!


君がそれをやめてくれるんだったら僕の命がわかりやすくたすかってくんだけどね⁈


「まぁ…わかりました」


バカは(リアルに)死んでも治らないといつことが!


「そう言えばあの虎は…?大丈夫だったのか?」


あぁ、

僕に散々威嚇した挙句、

今は僕の部屋に鎖に繋がっているトラくんね。


「無事です、現在ワタクシの部屋に放ってあります、旦那様にはまだ話しておりません」


まぁ、

あの隠れ親バカなら問題は基本ないからね。


ばれたらまずいのは奥様の第一侍女だね、

これを機に猛烈に僕に出て行くよう言うだろうね。


ばれないように僕の部屋には幻術が大量にかけられているけどね。


「そぅか…会いに、行っても良いか?」


会いにくる…って事は僕の部屋に来るって事だよね?


これでも僕の部屋は使用人の部屋にあるからねぇ…


それに…

中身は中身とは言え、

おなのこって設定なんだよ?僕。


“どうしよ、『リゼ』”


“…この子がダメ、って言っただけで引き下がると思う?”


思えない、

ってか強く否定しても夜中にこっそり入るとかしそうでもっといやだね。


「…わかりました、ではお夕食の後でで」


はぁ~!

こんなんでも僕のご主人様なわけであって、


そのご主人様自らの意思であったとしても使用人が自分の部屋に連れて行くだなんて聞いた事もない。


そんな所他の使用人に見つかれば…⁈


「決して!他の使用人の方に気づかれないようにきてくださいね」


南無阿弥陀仏、頑固者には折れるのが吉みたい。


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