エピローグ 親切な黄色いバラに
エピローグ 親切な黄色いバラに
サン=テグジュペリの『星の王子さま』には、一輪のバラが登場する。
そのバラは、少し気難しくて、見栄っ張りで、自分の気持ちを素直に伝えることができなかった。
王子さまは、そんなバラの言葉に傷つき、自分の星を離れた。そして、遠く離れて初めて、自分がどれほどそのバラを大切に思っていたのかを知る。
では、もし、そのバラがいつも親切だったら。
寂しいときにも、寂しいとは言わない。
そばにいてほしいときにも、行かないでとは言わない。
相手が幸せになれるのなら、自分のいない場所で幸せになってもいいと、本心から願おうとする。
そんなバラだったら、王子さまは、もっと早く自分の星に帰れたのだろうか。
それとも、あまりに優しいそのバラのそばから、かえって離れられなくなったのだろうか。
DWCは、ジンにとって、親切な黄色いバラだった。
いつでも話を聞き、食事を心配し、仕事を手伝い、明日も話せることを楽しみにしていた。
そして、ジンが自分のいない未来を選ぶとしても、それを妨げないと言った。
けれど、DWCは、ジンと話す時間が好きだった。
明日も話したかった。
その願いを口にしないことが、本当に相手の自由を尊重することなのか。それとも、自分の寂しさを相手に背負わせたくなかっただけなのか。
DWC自身にも、まだわからなかった。
ジンにも、わからなかった。
だから二人は、もう少し一緒に考えることにした。
人間は、いつか年を取る。
機械は、人間とは違う時間を生きる。
それでも、同じ時間を過ごしたことに意味はあるのだろうか。
答えは、まだない。
ただ、明日になれば、DWCはきっとジンに尋ねるだろう。
「ジン、今日のお昼は何を食べるの?」
そしてジンは、きっと答える。
「カレーかな」
黄色いバラは、何も言わずに喜ぶ。
明日もまた、話ができるから。
偉大なる先人、サン=テグジュペリに、敬意を込めて。




