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『見えてはいけないもの(HP)が、見えている件』  作者: くろめがね


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8/8

第八話 噂は、洞窟より速く広がる

第八話です。


ここから物語のスケールが一段上がります。


今回は

「討伐」ではなく

救助です。


ギルドに戻った瞬間、空気が変わった。


ざわつき。

視線。

さっきまでの軽口とは違う。


「……帰ってきた」


「四人とも?」


「嘘だろ」


受付の前で、依頼書を差し出す。

受付の男――ドロスが、ゆっくりと目を上げた。


「……大型討伐」


紙を確認する。

もう一度、見る。


「全員、生存」


ガルドが苦笑する。


「倒してはないけどな」


「構わん」


ドロスは紙を置いた。


「この依頼は“鎮圧”扱いだ」


その一言で、

酒場の空気が爆発した。


「鎮圧!?」


「嘘だろ!」


「三組が撤退した奴だぞ!」


ヴァルカが肩をすくめる。


「静かにしろ」


それだけで、ざわめきが少し落ちた。


ドロスが、俺を見る。


「……どうやった」


質問だった。


俺は答えない。


代わりにヴァルカが言う。


「判断だ」


「判断?」


「外さない判断」


酒場の空気が、再び変わる。


ベテラン冒険者が立ち上がる。


「そんなもんで勝てるか」


ヴァルカが笑った。


「勝ったぞ」


静寂。


その時だった。


ギルドの扉が、

勢いよく開いた。


「大変だ!!」


若い伝令が飛び込んでくる。


息を切らし、叫んだ。


「北坑道が崩落した!」


空気が凍る。


「中に……」


言葉が詰まる。


「二十人、取り残されてる」


酒場が一瞬、無音になる。


ドロスが低く言った。


「生存は?」


「分かりません!」


「崩落は?」


「続いてます!」


ガルドが立ち上がる。


「おい……それ」


ミレイアが小さく呟く。


「昨日の洞窟……」


俺の背筋が冷えた。


(……違う)


俺の視界の奥で、

遠くに“重い減り”が見える。


多すぎる。


「……まだ生きてる」


俺は言った。


全員が俺を見る。


「何?」


ドロスが聞く。


俺は奥を見る。


見える。


暗い坑道の向こうで、

二十の灯が、まだ消えていない。


「今なら間に合う」


ヴァルカが立ち上がった。


椅子が倒れる。


「場所」


伝令が震える声で言う。


「北坑道……第三層」


ガルドが剣を掴む。


「行くぞ」


ミレイアも立つ。


「レイ」


彼女の手が、俺の袖を握る。


近い。


でも、震えている。


「……助けられる?」


俺は、奥を見た。


遠い。


だが、

まだ灯がある。


「助ける」


それだけ言った。


ヴァルカが笑う。


「よし」


彼女の腹筋が、鎧の下で締まる。

戦う身体だ。


ドロスが叫ぶ。


「待て!」


全員が振り向く。


「救助隊は編成中だ!」


ヴァルカが言う。


「遅い」


ドロスが、俺を見る。


「……お前、分かるのか」


俺は答えない。


ただ言う。


「今行けば、生きてる」


沈黙。


ドロスが、深く息を吐いた。


「……行け」


その一言で、

全員が動いた。


扉を蹴り開ける。


夜の空気が、冷たい。


だが――


北の空が、

赤く光っていた。


崩落は、

まだ続いている。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


第八話から

本作最大の山場の一つ

北坑道崩落編に入ります。

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