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これは“世界”を救う物語。  作者: 高平めめこ
ヒトトセヤクロトイフモノ
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0-2-23 代表争い

 アーサー先生の開始の合図で氷塊が飛び、地面からは這う様に凍っていっている。アリスの事を魔眼で見ると綺麗なサファイアブルーに包まれており、色通りの綺麗な氷だと感心してしまう。

 氷塊の方は形的に『魔力の矢』を氷属性でアレンジした物だろうし、下から迫る氷は捕縛系の魔術を基にしていると見て良いだろう。


 同時に二つの魔術を放つ事は難しく、最近の若者からはダブルスペルなんて呼ばれ方をしているとクローディアさんは言ってたな。


「遠距離不適正なんですよね。なら、近づけないだけで勝てます」


 ほぉう、言うねぇ。

 確かに氷属性の魔力の矢は何本も飛んできて厄介だし、俺の足を凍らせようとする魔術も厄介だ。

 だが、所詮はその程度。集中し、時間の流れがゆっくりになるのを感知し、迫る氷の矢に真正面から対応する。足元は炎を纏わせれば凍る事はない。


「――ッ!?」

「薄い弾幕だな」

「このっ!!」


 安い挑発に綺麗に乗ってくれた。

 放たれる氷の矢が増える。それだけで氷の壁と見紛うソレに臆せず一歩一歩確実に距離を詰めていく。半径30メートルなら今氷は存在できない温度まで上がっている。

 そしてオーガの時と似た様に分身を作り、二方向から、挟み撃ちの形で詰め寄る。


「ハァッ!!」


 両手から放たれた氷の砲撃に分身がやられるが、本体の俺には氷が届く前に蒸発する。アリスとて一芸だけで主席の座に居る訳ではないだろうから、次を警戒すると、アリスが飛んだ。

 背中から白い羽根を生やして宙に浮いている。アーサー先生が貼った魔術は百メートルを超えており、そのギリギリまでアリスは飛翔する。


 そうやって浮遊するアリスに気を取られ、足元が蠢くのに遅れて気づく。


『にゃはは、やられたね』

『流石に土は溶かせないな』


 捕縛された俺は見事に作戦に嵌ったと感心するが、別にここから何も出来ない訳ではない。


 『身体強化』で特に下半身を強化し、足に纏わりつく土を無理矢理に剥がす。魔術とは即ち筋力なり、とは言わんが鍛えた方が得だなぁとか考える。


「『雨氷柱』」


 浮遊するアリスから氷柱が大量に降ってくるが、周囲の温度を上げて氷を蒸発させる。温度を上げるだけならさして魔力は消費しない。

 アリスがどのくらい飛んでられるか見物だが、此方も何もしない訳にはいかない。


 『浮遊』の魔術を使いアリスに接近し、『拡散する魔力砲』を放つ。アリスは『魔力障壁』を重ねる事で防ぐが、防ぎ切れなかった一部が肩を掠める。

 ギリギリ30メートルだったか。そして、これで俺の射程距離が相手に伝わった訳だ。もう少し接近してから使えば良かったな。


 アリスは肩を一瞥すると、羽根で身体を覆う様に浮遊する。魔力も彼女の胸元に集まっており、何か大きな一撃が放たれそうな事が分かる。


「『絶対零度』」

「アリスさん! その魔術は――」


 アーサー先生が何か言っているが、大丈夫だと手で制す。

 アリスの得意は水とか氷とか、そういう系統だ。色を見れば分かる。そして今使おうとしてる魔術が構築に時間がかかり、しかし絶大な効果をもたらすモノだという事も分かる。

 猫はいつでも反撃用の魔術を放てる様に魔力を溜めているが、そういうのも要らない。


 30メートルが俺のレンジだ。

 でも『念話』は何処に居ても繋がる。

 思うに、遠距離不適正とは魔力の形を保たせるのに限界があるだけで、形のない魔術なら使いたい放題なのではないだろうか。


 だから、こんな魔術を作った。


「『夢現(ゆめうつつ)』、『獄炎の纏い』」


 『夢現』、それは相手の五感どれかが作用していればソレを騙せる魔術。相手の思い描く理想をそのまま見せる魔術。いつからが夢なのか、現なのか、境目すら分からなくさせる対人における遠距離不適正を利用した騙し討ち。

 『獄炎の纏い』はアリスが空間を凍結させるのが分かったからその対策に使う魔術。身体強化と似た系統に分類されるそうだ。


「これで、お仕舞い」


 どうやらアリスとアーサー先生の瞳には完全に凍りついた俺が映っているらしい。アーサー先生の魔術をすり抜けると分かったのは良い収穫だ。身体の芯までは凍って居ないと虚空に出来た氷塊を二人で眺めている隙に、『夢現』を解除してアリスの首を掴む。


「この距離なら外せないな」

「……流石に降参しますよ」


 どうにか勝てたなぁ。

 猫の援護も要らなかったし、対人で『夢現』が使えると分かっただけ、大きな戦果だ。


「ヤクロくんはどういう魔術を使ったんだい!? アリスくんの『絶対零度』は確かに当たったと思ったんだけど」

「炎で身体を暖めただけです。もう一個の魔術は、相手の視覚を誤認させる魔術です」

「その年でオリジナルの魔術を複数持ってるとは、流石編入試験トップだね」

「ヤクロさん、もしよろしかったら今後も模擬戦しませんか?」

「別に構わないが――時間が合えばな」

「はい! よろしくお願いします」


 なんとか丸く収まったかな。『夢現』の詳細は語らない。別に漏れても構わないが、敵に情報はあまり与えたくない。仮にこの模擬戦を覗いていたとしても、何が起きたかは想像しにくいだろうし、詳細な説明をしてソレがクラスに話されては対策を取られる可能性もある。

 尤も、俺より魔力が少なかったら絶対に効くから対策はあまり意味ないが、魂二つがどう作用するか分からない以上手の内は晒したくない。


「それじゃあ明日の挨拶はヤクロくんにお願いするよ」

「私もここまではっきりと負ければ潔く身を引けます」


 二人に黙礼してその場を去った。


 クローディアさんには勝った事を報告して、今度何か祝いの品を渡すと言われた。魔術協会の支部長もおめでとうと言ってくれた。


 猫を降ろしてその日は全身に『洗浄』をかけて眠りに着いた。

 自分で思っていたより、疲れていたらしい。

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