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これは“世界”を救う物語。  作者: 高平めめこ
ヒトトセヤクロトイフモノ
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0-2-19 編入試験

学園モノなのか……?

 とりあえずクローディアさんから渡された資料には一通り目は通した。クローディアさんもいじめ問題がありそうだと思ったらしく、定期的に行われる生活アンケートに真実を誘導する魔術を掛けた紙で「今いじめられているか」を調査したらしいが、特に引っ掛かりはしなかったそうだ。

 因みにその魔術で犯人は特定出来なかったらしい。魂の分野を公にするのは憚れるそうで、具体性のない質問では意味を成さないからだそうだ。

 あと学内に人殺しがいるとバレるのもマズいらしいから「お前が犯人か」という様な具体的すぎる質問もアウト。

 魔術は万能だが、全能ではない。時期も見なくては疑われてしまう。これは確かに中に入らないと犯人探しは難しそうだな。


 魔術学園に関しては三学年あって各学年全一クラス30人。今は被害者が出て一学年は29人。少ないと思うかもしれないが、魔術適正の高い存在は中々現れないそうだ。

 これなら科学を発展させた方が人類の生存圏も広がって便利だろうに。良くも悪くもクローディアさんの影響かねぇ。


「それにしても89人の中から犯人を見つけるのは至難の技だな」

「にゃー、僕が魂見ようか? 魂二つ持ってる人見つければいーんでしょ?」

「お前が天才だ」

「にゃはは、褒め称えよ」


 この猫、実は有能なのでは? そういえば出会い頭に魂がどうのって言ってたわ。有り難くその力をふんだんに奮って頂こうと思います。


 さて、犯人探しは猫に任せるとしてだ。

 大きな問題がもう一つある。


 クローディアさんは潜入といったが、この依頼書を見るに入学(・・)なんだよなぁ。編入試験を受けなくてはそもそも依頼が開始出来ないという最悪のパターンである。

 いや、魔術関連とか魔術適正、魔力量とかで合否が決まるなら多分一発合格なんだよ。でもこれ、最悪のパターンだ。


 筆記有の文字。


 待ってくれよ……確かにこの世界の文字は書ける。というより日本語で書いて意味が通じる。だが最悪な事に筆記の範囲に歴史が入ってやがる。

 歴史とか苦手なんだが? それにこの世界発展が遅いから歴史書によっては書いてあることが違ったりする。公的な文書の散逸とか普通らしい。


 試験官は何を参考に歴史を見てきたのかで合否が揺らぐ。合否のラインは明かされておらず、一科目でもミスれば失格とか最悪なパターンすぎる。

 考えすぎか? いやでも最悪を想定しなくては動けない。これはクローディアさんに回ってきた仕事を俺が引き継いだんだ。結果は全てクローディアさんに影響してしまう。


「あーー、これは厳しいぞーー」

「にゃ? 何が?」

「いやな、歴史科目は苦手なんだよ」

「にゃー、そんなの覚えなくて大丈夫。歴史なんて文書一つで大きく変わるくらいあやふやなんだから」

「そうは言ってもなぁ」


 まぁ、やるからにはベストを尽くす。

 編入試験まであと一月。詰め込められるだけ知識を詰め込んで、可能な限り最善を尽くそう。







 編入試験当日。

 やれるだけの事はやった。ついでに人目に付かなそうな所に転移魔術用のマーキングをしといた。魔術学園は王都から少し離れた所にあるから移動が面倒だし、魔術協会支部の部屋も借りた。

 後はテストに臨むだけだ。魔術関連に歴史を含ませるのは良くないってどれだけ唱えただろうか。


 あと編入試験受けるのって結構居るんだな。俺だけかと思ったが、十人はいるな。


 試験官の人が入ってきて解答欄の付いた問題を配り始める。地球なら秒針の音が響くだろうこの時間だが、此処は魔術の発展した世界。時計はあれど音は響かない。


「それでは試験開始」


 渡されたのは最早一冊と表現できる問題。これ全部解くの? それで時間は一時間? 此処は馬鹿の集まりなんだろうか。


『んにゃ、クロ、これは解かなくていいよ』

『なんでだ?』

『にゃはは、引っ掛け問題だよ。魔力の込められた問題だけ解けってこと』


 この猫、本当に有能なのでは? 確かに魔眼を使えば魔力の込められていない問題がかなりある。

 最終的には五問だけ。しかもかなり楽な問題だ。懸念していた歴史の範囲は全て魔力無し。これなら時間を他の事に使えそうだ。


『マメネコを学園に設置できないか?』

『うにゃ……それくらいならいーよー。どのくらい?』

『一部屋に一匹』

『にゃはは、気合が入ってるねー』


 『隠匿』で大量のマメネコを隠しながら学園の全ての部屋に転送していく。こういう時部屋の見取り図とか資料にあって良かったと思うよ。

 クローディアさんの情報なら信頼できるし、この猫からも多分大丈夫と言われた。これで各部屋に監視カメラならぬ監視マメネコが出来たって訳だ。


『にゃふふ、魂のやりとりは二年生の教室で起きたみたいだよ』

『そんな事まで分かるのか』

『にゃん、時間が経ち過ぎてそれくらいしかまだわからないけどね』


 めっちゃ有能。後で毛並みを揃えてやろう。


「そこまで。筆記具を置いて下さい。これより実技に入ります。私の後に続いて下さい」


 試験官の後を追ってグラウンドに出る。印と人形があり、その距離は50メートルくらい。残念ながら俺の射程外だが遠距離不適正にも救いはある。

 点数は下がるが距離を自由に変えていいのだ。これもクローディアさんがくれた資料に書いてあった。30メートルの俺なら『魔術の矢』関連で合格可能範囲だそうだ。


 まぁ、使うのは別の魔術だけど。


「名前を呼んでいく。呼ばれた者は好きな位置からあの人形に魔術を放ち破壊せよ。心配はいらない『自動修復』の魔術で元に戻る。


 次々と名前が呼ばれていき、破壊できた者、そうでない者に別れる。


「ヤクロ・ヒトトセ! お前の番だ」

「それじゃあ30メートルの位置で」

「ふむ、では魔術を放て」


 使うのは基礎的な魔術じゃない。確かに基礎的な魔術は使い勝手がよく、便利だ。

 だが、面白みがないのでは? クローディアさんも言ってたが魔術に感情は大切だ。ただ淡々と魔術を放っても楽しくない。それに俺は幸いにも純白適正。これで遊ばない方がもったいない。


『にゃ? クロ?』

「『天雷』!!」


 天から落下する雷撃。

 まるで爆撃された様な轟音が辺りに響き、人形を術式ごと跡形もなく消し飛ばす。

 勿論この魔術も俺から30メートルが有効範囲、というか制御可能範囲だ。それを超えると制御が失われてどっかに雷撃が飛んでく。


「丁度お前で最後だ。新たな人形を持ってこなくて済んだ。以上で試験を終了とする。各自帰りたまえ」


 さて、合否はどうなるかな。


「にゃー、クロはやりすぎて不合格とかありそう」

「それで落ちたら困るな」


 後は学園側の判断に委ねよう。

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