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これは“世界”を救う物語。  作者: 高平めめこ
初代クローディアの偉業
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0-4-4 目的

 幾日か経ったある日、“ⅱ”は思い出したかの様にその場に止まる。ハイエルフとの手合わせをしていた最中にも関わらずその場で止まった“ⅱ”は機械的にハイエルフの首から下を地面に埋めてその場に座り込む。


「そういえば、私の目的を話していなかったな」

「……?」

「私はこの世界に『魔術』を広めたい。その為の足かがりとしてお前をこうして鍛えている。それは、知識として刷り込んであるから分かるだろう」

「はい」

「だが一つ伝えていない事もある」


 土からハイエルフを掘り起こして“ⅱ”は期待に込めた瞳でハイエルフを見つめる。突然の視線に思わず目を逸らすハイエルフの頭を一度撫でてから体に付いた土汚れを『洗浄』していく。


「お前に“魔法”を修めて欲しい。お前が“魔法”に至れたのであれば、きっと私の願いも叶う」

「マホウ、ですか? それは――」

「いずれ見せる。私の言葉は決して忘れるな。全て覚えておきなさい」


 頷いたハイエルフを見て“ⅱ”は一度距離を取る。

 一歩の足で百メートルは移動した“ⅱ”を見てハイエルフは自分が試されていると悟る。“ⅱ”の射程は良くて五十。相手が射程外となる場合は魔術を扱える存在からすれば格好の獲物。ハイエルフは距離を詰められる前に何発か魔術を当てようと考え魔力を展開する。


 魔力の展開。

 それはただ魔力を迸らせる行為ではなく、所謂砲門を作る行為。展開した魔力を起点に魔術が放たれ、ハイエルフが一度に放てる魔術は百。“ⅱ”は万を越える魔術を放てるが、生後一週間も経たない存在と考えれば、驚異的な数値である。

 この魔力を展開するという発想は魔力を扱う世界なら当たり前であり、基本的には自分に魔力を集めて手から放つという形を取るのが基本的だが、“ⅱ”はその魔力の多さから空間に砲門を設置した方が面制圧が楽であり、ハイエルフもそれを見様見真似で会得している。


 ハイエルフが扱える属性は“ⅱ”によってデザインされており、世界に一般的に広まる属性は扱える。ただ扱えない属性――というか性質は“創造”、“破壊”、“奇跡”、“絶望”の“完成した存在”の番号持ち(ナンバーズ)だけであり、選択肢は広い。

 その中で得意とするのは瞳の翠色が示す風属性。

 魔に関する得意は髪や瞳の色に現れる。何色にも染まれる白と全ての色が混ざった黒は魔に対して高い適性を見せる色であるが、人類種の多くは黒は無能と烙印を押しがちだと“ⅱ”は語り、魔力の限界を知らないからそんな思考に至ると一人落胆している。


「属性を混ぜての乱撃は悪くない。一つ一つに込められた魔力も私の身体に損傷を与える程であり、私が反魔術を扱う隙を与えないのも悪くない。だが――」

「『太い魔力砲』!」

「まだお前は弱い」


 ハイエルフが放った『魔術』を片手で弾き、その距離をゆっくりと詰める。信じがたい出来事に思考が止まりそうになるのを堪え、ハイエルフは弾幕の密度を上げる。今の限界を越えて、更に魔術を放つ。その数は百を越えて百五十。

 知識として自分は何万年も生きる。それなのにたった百年しか居てくれない先生の為に死力を振り絞るハイエルフは、せめて落胆させたく無いという健気な思いから進化をする。


「素晴らしい。だが、魔力量が見合っていない。それはただの虚仮威しに過ぎない。私を止めたいのなら展開を絞って一つ一つの威力を上げろ。もうすぐ私の距離だぞ?」

「――ッ! 『風神の(かいな)』」


 魔術はシンプルなモノの方が強い。変に発展させるよりは、『魔力の矢』や『魔力砲』の方が強いというケースは往々にしてある。しかし“ⅱ”の創った十三冊の魔導書を読み込んだハイエルフはそんなミスは犯さない。

 オリジナルかつ威力の高い魔術。“ⅱ”の接近を防ぐ為に魔術とする為の理論を知識から寄せ集めて事象をその場で組み上げた起死回生の一手。

 それが『風神の腕』。

 効果はただ対象を押し戻すというシンプルな効果であり、魔術との相性も悪くない効果であり、“ⅱ”は敢えてこれを受ける事で再び襲いかかる、今度は展開が絞られ一つ一つの威力が向上した弾幕をその身に受ける。


「そうだ。無いなら創ればいい、お前にはあらゆる魔術の下地は既に創られているのだから」


 “ⅱ”は魔力で手を覆い、飛来する魔術を掴み、投げ返すという動作を加えた。そんな事が出来るのかと見開いた眼を一度閉じて冷静に対処する。投げ返されている魔術は自分の放つ魔術よりも速いが、結局は自分の魔術。

 軌道を計算して属性の対照的な魔術を放ち、ハイエルフは弾幕の隙間からやってくる“ⅱ”の投げ返された魔術を相殺する。


 勝てない相手ではあるが、手傷を負わす事の出来ない相手ではない。


 ハイエルフは弾幕を維持しながら一つの魔術を構築していく。世界に対して広く作用するその魔術は試した事がないが、理論上は上手く行く。

 自分はこの程度の存在では無いと示す為にハイエルフは集まる魔力を隠す為に展開した魔力を両手に集めて射出口を狭くする。


 無駄な事はしないだろうと思った“ⅱ”は距離を詰める。

 時折飛んでくる『魔力砲』を片手で弾きながら進み、その距離が三十となった際に、“ⅱ”が『魔力の槍』を発動しようとした時、ハイエルフが笑う。


「行きます。『時の支配者』」


 ハイエルフが構築した魔術は『時間停止』。対象は発動者を除くこの星であり、“ⅱ”はその動きを止める。光や原子はその場に留まっており、ハイエルフが呼吸をすれば吸い込まれ、酸素不足になる事はない。見える景色も天体からの光で変わらず、ハイエルフのみがこの世界で動けている。

 対象が広すぎる余り魔力の消費が激しいが、ハイエルフは“ⅱ”の胸元に手を当てて『時の支配者』を解除する。“ⅱ”は突然現れたハイエルフに驚く事なく当てられた手と自分の間に『魔力障壁』を展開してハイエルフの攻撃を防ぐ。


「うそ……」

「動けたが、お前の発想を殺す訳にもいかないから『固定』していた。時空の属性を扱えるのは素直に驚嘆したが、私にそういう技は通じない。磨くのは悪くないが、私には時空関係は効かないよ」

「……ずるいです」


 子供が子供らしく拗ねる様子を見て“ⅱ”が頬を緩める。下を向いて嘲る様はかつて作った子供には無い可愛げだと思いながら“ⅱ”は頭を撫でてやる。

 甘やかして育てるのも悪くはないが、こういう偶に見せる優しさの方が子供には有効だろうと思いながら“ⅱ”は直ぐに頭を撫でるのを辞めて、魔力を立ち昇らせ戦闘の意識に向け直させる。


「お前には、一つ“魔法”を見せよう」


 いきなりの事でもきちんと対応したハイエルフに再び笑顔を向けたくなるのを堪えて、“ⅱ”は魔力を手の平に集めていく。やがてソレは小さな明かりを灯し、白き輝きを伴って膨張していく。


「これが魔力圧縮の臨界点――白色魔力。通常よりも二倍の爆発力を有した魔力コントロールの最奥とでも呼ぶべき現象」


 ハイエルフもソレは知識として有している。だがそんな事を今更する先生でも無いと、“ⅱ”の手の平を注視する。そして、やがて膨張を続けていた魔力は次第に圧縮されていき、白い輝きが濁り、灰色に変じる。

 膨張と圧縮の均衡に至ったソレを無理矢理魔力を供給して圧縮させる事で灰色が濃くなり、次第に漆黒の魔力に成っていく。


「そして魔力圧縮の臨界点を“奇跡”的に越えた限界点こそが、黒色魔力。その威力は込められた魔力本来の累乗を越える爆発力を有している。私の魔力であれば三乗といったところだろうか」

「これが、マホウ……」

「基本的な戦闘はここ数日で身につけている。魔力コントロールを磨きなさい。尤も、これは本当に奇跡を起こさなくては成し得ない力だが、お前なら出来ると信じている」

「……はいっ!」


 じゃあ先生はどうやって――その言葉を飲み込んだと判断した“ⅱ”は苦笑いを浮かべる。こんな子供に気を遣わせてしまったかなと少し反省してハイエルフの身体を解していく。体操の後のケアは忘れないのが“ⅱ”の育て方であり、ソレは間違っていないというのはかつての子供から得た知識でもある。

 今頃あの子は――カルハリアスとの間に出来た半神はどうしているのだろうかと思うも、親子の縁は切ってあるから目の前のハイエルフに注力すべきと判断して“ⅱ”は何も言わずにハイエルフに接していく。


 柔軟などが一通り終わると“ⅱ”はその日の出来事を魔導書に書き記す事を日課としている。一文字で何行もの情報を詰め込む魔法文字を解読出来る存在は中々生まれないと思うが、このハイエルフが全てを翻訳していれば、誰でも読む事が出来る。

 そんな事はしないと分かっているから書いている、というのが“ⅱ”の意見である。故に“ⅱ”は何も隠さずに書き記していく。未来のコレを読む人物が私と敵対するであろう事を含めて、包み隠さずに全てをかいていく。


 陽が沈み夜となった今はハイエルフの自習時間でもある。“ⅱ”が使っていない魔導書を再び読み直したりして時間を潰しており、今日は早速“ⅱ”に言われた魔力コントロールを重点的に磨いているのか、圧縮や解放を繰り返している。

 その様子も“ⅱ”はいつか劣化した時の為に書き記していく。解読が先か、“魔法”に至るのが先か、それは“ⅱ”の興味の範囲外だからと知ろうとしなかったが、ハイエルフを見ていれば劣化はしないだろうと“ⅱ”は思う。


 『照明』の魔術で辺りを照らしながら行っていたハイエルフだが、“ⅱ”は天体の動きを見て土の椅子から立ち上がる。


「そろそろ眠れ。明日に響く」

「……もうそんな時間ですか?」

「そうだ」

「分かりました」


 エルフの集落にあった藁に眠るハイエルフを見て“ⅱ”は天体を観察する。どこにどんな星があるのかを僅かに使える“星”の力で把握し、『天体図』を組み上げていく。魔力の象徴でもある月以外からも魔力は注がれており、その属性は様々である。それをきちんと把握する為に作っており、“ⅱ”は角度や距離を正確に算出してから星を一つ追加する。

 いずれ完成すればハイエルフに贈る魔術であるが、“魔法”の使用制限が掛かっている今は簡単に作れない。数年かけて完成させようと思っている“ⅱ”は『天体図』にまた星を一つ追加して、自らの魔力を小さな球に圧縮形成しながら星の観察を続けた。

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