表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/30

11月29日

 ※この話は本編と時間軸に差があります。





 11月29日。

 いい、にく。

 いい肉の日。


「はぁ……」


 今日はいい肉の日です、ニュースの特集でもどうせ肉のわだいかばかりでしょう。

 私はそれが納得いかない!

 私の家はお金がなくてお肉なんて高いものは食べられませんからね!

 学校の友達とはあまり話題になりませんが、教師の雑談ではわりとテーマになって萎えました。


 キキィッ!!


「ん?」

「見つけたぞ!マティルダ嬢ちゃん!」

「へ!?アラステッドさん!?」


 突然校門の前に黒い高そうな車がとまったと思ったら、アラステッドさんですか。いい車乗ってますね。

 で、なんで私!?


「嬢ちゃん、この俺がいい肉を御馳走してやろう」

「な、なんでアラステッドさんがここに」

「高校くらい仲のいい人物は知ってて当然だろう」


 まぁそうですけど。

 金髪のチャラそうなアラステッドさん、それだけでも注目を集めるのに校内でも赤髪で有名な私も一緒、しかも黒い高そうな車がありますからね。

 ほらぁ、生徒が集まってきたぁ。

 注目を浴びるのはいけないとフリュウさんから言われてるのに。

 こら!そこ!アラステッドさんは彼氏じゃないです!


「離してください!フリュウさんたちが心配しますよ!」

「それは問題ないぞ、嬢ちゃんだけに肉を食わせてやると伝えたら笑顔で『たくさん食べてきてね』と伝えろと言われた」

「くっ」

「なんで嫌な顔をする、フリュウのやついい父親になったもんだな、こんなに娘に愛されて」


 フリュウさんはすごくいい人です。いい肉の日にお肉を食べれない家計ですが、私だけでも食べられるようにしてくれました。でもそれにつけこむアラステッドさんですよ。


「力が弱まったぞ嬢ちゃん、隙ありだな!」

「へ?わあぁぁ!!」


 ズドン!

 車内に放り込まれました。

 さすがは最高神の一人天罰神です、普通の人間では魔王の私に力では勝てませんからね。

 ですがこれ……人間社会でやるのはまずい行為ですよ。


「だせ!運転手!」

「かしこまりました」

「こら!だせー!誘拐ですよ!」


 というかアラステッドさん従者見つかったんですね、おめでとうございます。

 じゃなくて私を外に出しなさい!

 もう無理矢理でますからね、魔王の体なら運転中に外に投げ出されても傷つかないでしょう。


「おっと、それはやめておけよ」

「なぜですか、私は怪我なんてしませんよ」

「違う違う、ここは大通りだ、人にバレるのはまずいだろう」

「むー」


 足元見てきましたねアラステッドさんめー。


「出しなさい!犯罪ですよ誘拐は!」

「ハッハッハ!そんなポカポカ殴る程度じゃまったく効かんぞ嬢ちゃん」

「くらえ!くらえ!」

「おうっ。というかなぜそんなに嫌がる?犯罪だから正義感からくるのか?」


 なんとなくですね。私はフリュウさんと一緒に食べるご飯ならどんなに豪華な食事より美味しくなる自信がありますからね。


「ふんっ。天罰神が犯罪を犯すようでは、見損ないましたよ」

「なるほどな、だが生物なら皆等しくどこかで罪を犯しているものだ」


 生物ならって、範囲ひろーい。


「生まれた時から誰かの場所を奪っている、罪だな。食事は生命をいただくもの、罪だな。こうやって俺がしている誘拐擬きも生物の生理現象のようなものだ」

「アラステッドさんの感覚で語らないでください」

「俺だけの感覚ではないぞ、皆罪を犯しているのは事実だ。そうだ、暇潰しに俺の神としての能力を少し見せてやろうか」


 天罰神の能力?ちょっと気になります。

 あ、交差点で車が停止しました。


「ちょうどいい。そこのカップル、男は浮気、女は彼氏からもらったネックレスを質屋に売った」

「え!?ええ!?」

「そこの主婦は夫に黙ってAV出演、子供は今日蟻をつぶして遊んだ」

「蟻って……」

「ちなみにこの運転手、最近SMプレイにはまり中」

「なぜわかった」

「やめてください」


 なに他人の本性を暴露してるんですか。


 お肉専門店。


「ここの料理長、毎日牛と豚をさばいてる罪」

「それ仕事です」

「そこの客、出世争いで何人も蹴落とした」

「それ仕方ないです」

「このステーキ、仲間のエサを何度も奪った」

「ステーキに罪はないでしょ」


 なんで死んだ生物からもわかるんですか。


「この店は何人もの客から諭吉さんを奪った罪、しかも原価率は半分くらい」


 それ言っちゃ商売なんてできませんよ。


「嬢ちゃん、昨日駆逐艦ひとつ沈めただろう、罪」

「……黙ってください」


 あれは事故だったんです。

 ボタンの押し間違えで、撤退するつもりだったんです。






「ご馳走さまでした」

「俺も久しぶりに嬢ちゃんとゆっくりできて楽しかったぞ」

「ゆっくりできました?」


 まったく気を休めれませんでしたけどね。


「俺の能力、他人の犯した罪を知ることができる、なかなか楽しかっただろう?」

「まぁ」

「ちなみに、俺と嬢ちゃんついさっき牛の命を食した、罪の数がまた増えたな」

「それも罪なんですか」

「今日はいい肉の日。そして欲深い人間が稼ぐために語呂合わせで作った罪の日でもある、ゆめゆめ忘れることがないようにな」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ