高等科編5
ノーリの頬を両手で包み込んで、おじさんは数秒間額と額を合わせたその時間はとてもゆったりとしているように感じた。
それにつられるかのようにゆっくりとした動きで触れるくらいに近くに近づいていた顔を離して行く。
そして神妙な顔をして静かな声で、
「必ずおじさん達が師匠を捕まえないといけない、……紫髪の少女の近くにいた師匠を死刑にする訳にはいかないから。例え滅亡の危機を今回救うことが出来ても必ず、再びこの世界は滅亡の危機が現れるとおじさんはそう思うの。
あの時の師匠は選ぶ選択肢を間違えた、でもこれから先のことを考えると必ず現れるだろう紫髪の少女よりも強い第二の存在にとってきっと必要な存在になるはずなの。おじさん達が生きているうちに現れてくれたなら、養子にして正しい魔法の使い方だって教えてあげることだって出来る。でも、自分達が長生きするかどうかはおじさん達にはわからないこと。
師匠を捕まえた後こそがおじさん達が本気で行動する時、それまでは息を潜めなければいけないの。
下手に動いて計画をバレる訳にはいかない、だから今は我慢して?」
成功させるためには確実に達成させる。
……今はその時じゃない、軍師としての勉強を積み重ね、実戦形式で積み重ねた経験のおかげで、動くべきではないとおじさんの勘が教えてくれている。
何も言わないで不安にさせたなら、おじさんが言葉ったらずだったからいけないと反省するわ。
でもね、この目的だけは必ず達成させる。それだけは確かなことよ。
「ノーリ、この子達の才能を育ててあげなくちゃ。例えそれが裏切られたとしても、それがあの子達の選択だったの。師匠みたいな立場だったとしてもあの子達の意志を反してまでも止めることはおじさんには出来ないわ。その気持ちが伝わるって信じて今はただ、あの子達が無事に生き残れる術を教えることしか出来ないんだから、今はやれることをやりましょ?
焦ったところで結末が良い方向へと行けば良いけど、そうじゃないことをノーリが一番理解してるでしょ?」
顔色を変えることなく笑みを浮かべながらそう言えば、ノーリは目元だけ笑っているように見せた。
そんな表情をしてノーリが何を伝えたかったのかわからなかったけど……、何かを悟ったような表情をしたのだけはわかった。そして何故だろうか、おじさんは不安になったのだ。
……ノーリが消えてしまいそうだと思うくらいに気配が儚くなったから。
「ごめんな、クラ」
消えてしまうくらいの声で、ノーリは理由もわからない謝罪をした。
その謝罪の意味は、何年経ってもわからないままとなるのは別の話。
次の日のこと。
初めての訓練だからだろうか弱々しく、おどおどとするしのくん。
当たり前よね、しのくん達は魔法なんてなく魔物もいない世界で生きていたんだもの、未知なことをするのは誰だって不安になると思うし、しっかりなさいなんて言ったりはしない。
ましてや逃げずにここに来たことはしのくんにとって大きな進歩だと思う。
「しのくん、自信を持って。君に合わせた訓練メニューを大幅な流れで作ってきたから、今日は君の運動神経を見て細かいところまで決めていく作業だから、今日はあまり訓練メニューをさせたりはしないわ。だから、リラックスして今日の課題をこなしていきましょ。……大丈夫、適合検査を見る限り君は努力を怠ることなく訓練メニューをこなしていけば生き抜ける。
あとは自分に自信を持つだけよ、おじさんと一緒に頑張っていきましょ」
なるべく怖がらせないように、いつも以上に笑顔を絶さないようき気を付けながらおじさんはそう言葉をかけてから、今日の特訓を始めるのだった。
しのくんは意外にも、丸っきりそうとは言えないけれどおじさんみたいな才能+攻撃的にも優れる魔法を使うことが出来る。なかなか前世で体験したことを一学生が体験しないしね、似ているのは意外にも判断力(つまりは推理力)が優れていると言うことと作り出す魔法が得意と言う点が良く似ている。流石に情報屋として必要な才能は持ち合わせていなかったみたいだけどね?
攻撃系の魔法はシィに指導を頼むしかないけど、出来るところまではおじさんが指導してあげたいと思っている。この子にも軍師としての授業に参加させるつもり、別に軍師になれとは言わないけど少しでも自信が持てる要素となれば良いかなと言う意味で理事長に頼んでみたらあっさり了承されたから、腰が抜けてもいないのに腰が抜けたような感覚に陥ったわぁ。
まあ、やる気が削がれない程度に厳しめな訓練をしていきましょうかね?




