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おじさんね、護衛が出来たの

 父上は抱きしめるのをやめ、おじさんの頭を優しく撫で始める。

 そんな行動をしているのにも関わらず、やっぱり父上は無表情のままで。

 でも、おじさんに向けてくる父上の視線はとても優しくて、温かくて。こんな視線を向け慣れてないから、思わず珍しく真顔になった。

 それから数分後、タイミングをはかったように父上が乗ってきたであろう馬車から、騎士服を着た男性と女性が遠慮がちに降りてきて、ごく自然な仕草であるように見せつつも、何処か鋭さがあり威厳のある敬礼を父上に向けていた。

 ――わぁお、父上って凄い人なんだぁ。と、自分でも考えることがずれているんじゃないかと思いつつも、呆然とその二人の様子を眺めていれば、騎士服を着た男性の方がおじさんと視線を合わせるようにしゃがみ込み、堅さのある笑みを浮かべてこう言った。


「本日より未熟者ながらも貴方の第一従者を務めさせて頂きます、シルフ シフォンと申します。……よろしくお願い致します、クラトル様」

 と、まるで王子様のような華やかな容姿を持つ彼は、感情を殺したような声で機械的な自己紹介をおじさんにした。そんな彼に対して、隣にいる騎士服を着た女性は若干苦笑しながらも直ぐに顔を真剣な表情へと戻し、こう言う。

「初めまして。シルバー様の部下であります、アイリス リンドーと申します。この度はクラトル様の第二従者として務めさせて頂くことになりました。よろしくお願い致します、クラトル様」

 と、一見第一印象としては良い自己紹介をしているアイリスさん。父上の部下なら信頼出来るかも知れないけど~……、おじさん身の回りのことは一人で出来るしぃ、父上のことだから母上から聞いているはずなんだけどなぁ。

 と、おじさんが内心思っていることを読み取ったように、父上はこう言う。


「……クラトル、彼らは護衛だと思ってくれれば良い。君は無茶をしない子だとはわかってる。だけどな、万が一の考えての保険だ。世の中、何があるかわからないからな……、彼らは護衛だと考えてくれれば良い。勿論、君にあった鍛練の仕方も考えるつもりだが、今の時点では事件に巻き込まれた時、抵抗する手段をまだ持っていないからな。父上を安心させる為だと思って、彼らを出来るだけ側においといてくれ」

 と、そんな父上の言葉に、別に従者が側にいることに対しては立場上仕方がないと思ってるから構わないんだけどねぇ〜と考えつつも、この世で三歳児にして立場を気にする子はいないだろうから、そのことは自分の心の中で呟くことだけにしておいた。

 賢い子と認識されても、今後かかるであろう重いプレッシャーに耐えられるくらいに頑丈なメンタルを持っている訳じゃないからね、若干大人っぽい三歳児をおじさんは目指しているのよ〜。

 と、関係のないことを考え始めながらも、表情だけは満面の笑みを欠かさず浮かべながら、父上を安心させる為に従者を自分の側にいて良いよと伝える為にコクンと縦に頷けば、アイリスさんは安心したように柔らかく優しい微笑みを浮かべていた。


 ――従者を側につけることを父上は拒否されると思っていたんだろうか? いや、内心では誰かに縛られるとか嫌だって考えてはいたけどねー。だけどねぇ、流石にあそこまで心配されているなら断れないって。流石の自由人なおじさんでもね。

 と、考えた後、久しぶりに母上以外の人と会った為、おじさんは眠くなり、あくびをしながら何も言わず自分の部屋へと戻るのであった。


◇◆◇◆◇◆


 朝、目を覚ませば、おじさんの顔を覗き込み、表情から一切感情が伝わって来ず、目からも覇気を感じないシルフくんの華やかな顔が目の前にある。一方、おじさんは口元を緩ませながら「お早う」と挨拶すれば、彼は何故か戸惑ったように顔を覗き込むのをやめ、直ぐに動揺は隠れ、機械的な口調で朝の挨拶をし返してくれたの。

 おじさんは特にそのことを気にもせず、パジャマから素早く着替えた後、食事を摂る為に部屋から出れば、シルフくんは三歩後ろを歩いて着いてくる。

 当たり前か、シルフくんは父上に頼まれて護衛しているんだものねぇ〜。

 と、のんきにそう考えていれば、シルフくんはおじさんに話しかけてくる。


「あの、クラトル様」

 と、そう何かを聞きたそうに話しかけて来たからおじさんは振り返り、

「ん? な〜に?」

 いつも以上に柔らかく、優しい口調でおじさんはそう言えば、やはり機械的な口調のまま、シルフくんはこう言ったの。

「……どうしたら感情を表に出すことが出来るのでしょうか……?」

 と、そうシルフくんはそう聞いてきたから、おじさんはこう言うだけにしておく。


「焦る必要はないの。ゆっくりと感情を戻していけば良いよ。君が機械的な口調でしか話せなくてもね、おじさんはシルフくんが優しい子だって思っているから。気にしないでゆっくり、感情を表に出していく練習をしたら良いんだよぉ」



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