初等科編22
身体を怪我しても薬や回復魔法で治せるけれど、傷ついた心はなかなか癒えることはないとセンリ先生は切なそうな悲しそうな表情を浮かべながらそう言った。
そう話し始めたきっかけは、流石にここまでの怪我になるとセンリ先生に診察してもらった方が良いと言われ、保健室まで行って診察されていた時、首辺りの怪我を診察になった瞬間に無意識のうちにおじさんの身体が硬直してしまったことにより、そう静かに話し始めたの……。
心が傷ついた時、逃げることは間違っていないけれど、逃げてばかりでは駄目だともそう言われた。いつか立ち向かうことをしなければ、その現状から離れることは出来ないと。
おじさんはね、勉強は何歳からでもやり直すことが出来ると思うの、後は本人のやる気次第だから。
でもね、立ち向かうことにしたの。自分の容姿は変えられないし、おじさんは誰かと連携することでその能力を活かすことが出来るタイプだから……、単独行動になってしまえばその状態を打開するための手段が少なくなってしまうから、誘拐された時にどう対処していくことで心の傷、トラウマを最小限にしていくのが今すべきことでもあり、それが現実と立ち向かうと言うことだと思うから。
でも、今は一部の人以外の人と会うのは無謀な挑戦かも知れないとそう言えば、ルト先生が理事長と話し合って一ヶ月だけ今はもう使っていない旧校舎の体育館を貸してくれることになった。また、そこを狙われて誘拐されるといけないため、ほぼ卒業したと同然の学力を持っている高等科の生徒に保健室の管理や仕事を任せて、おじさんの付き添いをセンリ先生が行ってくれることになった。
こう言う措置がされるのは特に珍しいことではないらしい。……まあ男子生徒では初めてらしいけど、生徒の精神状態を考慮してそれぞれにあった対処をすると契約書にも書いてあったらしいし、その措置に対して他の保護者や生徒が何かクレームをつけることも禁止ことを承諾すること……みたいな契約をした上で入学を認めているみたい。
それを聞いて安心した、あの件から人から向けられる視線に周りには気づかれないように営業スマイルで隠しているものの、恐怖に感じるようになったからその措置が終わってからのことを今から考え過ぎてしまわずに済んだからねぇ。
何故、そのことを考えていたかと言えば今日からその措置が始まる訳です。
さて、おじさんはまず何から始めるかと言うと〜……、まずは銃の造形で作り出すことの出来る種類を増やそうと思うの。今までは中距離攻撃に長けている銃だけのみで使っていたから、遠距離攻撃に長けている銃や攻撃に威力のある銃、銃の構造を覚えておじさんの使える魔法の特性を活かした攻撃が出来る銃を作ったり、回復系の効果向上するための鍛練をするが午前中にやること。
午後から称号者会議までの時間、拳銃の撃つ練習やアオトやクロトとの連携の練習、魔法の威力向上をするための鍛練、怪力を活かした攻撃の思案をしようと思っているの。
一ヶ月の間で効果が出るかと言うとー……、師匠式の修行方法でしていくので充分に期待が出来るね。
過保護な二人からも、師匠式の修行方法をするのを許可出てるので、この一ヶ月の間は自分の限界など気にすることなく、全力で鍛練に励もうと思う〜。
「予め言っておきます、これがおじさんの師匠式修行方法なので、ドクターストップをかけないでください。大丈夫です、数年近くこの方法で修行をしていましたが生きていたので、センリ先生は傍観だけしておいてください」
と、おじさんのその発言に複雑そうな表情を浮かべながらも、それでも頷いてくれるセンリ先生。
そんなセンリ先生に内心でお礼を言いつつも、これから見るであろう地獄を見せることに申し訳なさを感じつつ、おじさんは自分の持つ術の効力向上のためにも、これ以上トラウマを増やさないためにも鍛練をすることに集中し始めたのだった。
◇◆◇◆◇◆
「……次は文化祭と武道祭ですね。行事を行う時に今度は王族直属の竜騎士、魔法騎士から警備員になると立候補する書類が送られてきましたし、今まで以上に私達生徒の身の安全は確かなものとなるでしょう。
ですが、だからと言って気を抜いてはいけません。称号者を名乗る資格を与えられたとは言え、我々にも得意不得意があります。それを補う最低限以上の努力が出来る学生を目指し、身体を壊さない程度に努力をすること。良いですね?
それと……、クラトルくんに対して心のない発言をしている生徒を見つけた場合、即ルト先生および私に報告することを義務とします。……ただし、トーゴくんのみハリセンを手にし、その生徒を説教することだけは許可します」
と、称号者会議の冒頭にジーシェ先輩のその発言から会議が始まった。
珍しく口説くような口調ではなく、真剣な淡々とした口調で真面目な表情をして話していた。おじさんのことを“女の子”だと勝手に思い込んだことがあってだろうか、いつもなら口説き文句から始まるのが会議の冒頭だと言うのに。……まあ今の精神状態では、この対応が凄く助かったのも事実だけど。
……良かった、称号者会議だけはこの一ヶ月でも出れそうな気がする。
と、そう考えた後、無自覚に硬直させていた身体の力が抜けたような気がした。
そんなおじさんの様子を気がついているのか、いないのかはわからないけど……、トーゴ先輩が何処からともなくハリセンを取り出して歯を見せて笑った後、さっき笑顔を見せていたことが幻かと思わせるくらいの鋭さを感じさせる声色でこう言っていた。
「任せとけ、心の傷をわざわざ抉るような悪趣味な奴等はハリセンで軽く攻撃した後、説教してやるからな」
そんなトーゴ先輩の言葉を聞いた途端、隣に座るノーリに手を握られながらも内心の何処かで抱く恐怖心で小刻みに震えていた手が少しだけ取れたような気がした。




