初等科編21
助けにきてくれた安心したおじさんは、恐る恐ると言ったように柱の影に隠れるのをやめると、物凄い形相で父上とトールが気絶させたあの男を睨み付けている二人の姿があった。
それでも二人の目の前に行く勇気がなく、柱に寄りかかって隠れていれば肩を叩かれ、思わずその方向へと振り返ればにっこりと微笑んだシィが居て、本当は嬉しくて抱きつきたいのに足は地面と縫いついたように動かなくて、名前を呼びたいのに今更恐怖心が沸いてきたのか声も出てはくれない。
そんなおじさんを安心させるためか、手首を優しく掴んだ後、懐へと引き寄せられ……、包み込むようにまるで恐怖を抱いたら拒めるように優しく、シィは抱きしめてくれた。
「……体育祭は……?」
「そんなの飽き飽きするくらいするんだ、クラの方が重要だよ」
友愛に満ちた、シィの優しく柔らかいその声におじさんは安心した。
……この人はおじさんのことを、女の子だって思い込んでいないと。
◇◆◇◆◇◆
「……ごめんなさい!」
ノーリは何故か、あの場には来ていなくて勘違いして彼女らを問い詰めていないかと思い、シィに付き添ってもらいながら三人の元へと向かえば、目を合わせたと同時に謝られた。
――なんで、彼女らに謝れなければならないのだろうか? とそう思った。
だって、悪いのは全てあの男だと言うのに、あの時彼女らに引き止められて、裏庭に連れて行かれなかったら、誘拐されなかったりしなかったのに! と、そんなもしものことで責めたりはしない。……いや、責めたくない。
案の定、
「私達があの裏庭に呼ばなければ、貴方はそんな傷つかなくて済んだのに」
と、自分のあの時の行動を悔やんだような言葉を言う三人の女子生徒。
そんな三人に対しておじさんは、首を横に振ってこう言い聞かせる。
「君達も誘拐されなくて良かったよ。おじさんはね、君達のせいで誘拐されただなんて思ってない。
むしろ感謝してるよ、君達がおじさんが誘拐されたことシィやノーリに教えてくれたんでしょ? だから謝らないで、いつも遠目で嫉妬する視線を向けられているだけだったから、嫉妬されている理由が知れて嬉しかったよ?」
と、シィの腕を掴んでいる手が未だに震えていることをバレないようにしながらそう言ったその瞬間、三人の女子生徒の後ろから必死な表情を浮かべたノーリが走ってきて、おじさんを包み込むようにとても優しく抱きしめた。
「……ごめんな……」
とても悲しそうに、絶望したような声でノーリはそう謝ってきた。
おじさんは何でノーリが謝るの……? とそう言おうと思った瞬間……、
「父上から聞いた。
……お前を誘拐した男はクラを女だって思い込んでいたと。そう思い込ませたのが、俺の婚約者だった。
……ごめん、俺がちゃんとあの子にいつか恋愛的に好きになるような気がするって! クラに恋愛感情を抱いてないって説明してればお前は誘拐されずに済んだのに、結果的に俺が原因でクラを傷つけてしまうことにはならなかったのに!
それを父上達に言ってきた。……あの人達は気にするなって、俺が悪くないって言ってくれたけど……、お前が俺が側にいることが嫌だと感じるなら、俺はクラの側から直ぐに消えるって誓うから……、正直に言ってくれ!」
と、ノーリのそんな発言におじさんは、自分の態度であの子にあんな行動をさせるくらいに苦しめたのかと思うと、心臓が捕まれたかのように自分の心に苦しさを感じた。
それでも、おじさんは親友としてノーリに取り返しのつかないくらいに依存してしまってるから、今更望めば側から消えると言われても困るだけなのだ。
「ノーリ……?」
と、シィの腕から手を離した後に包み込むようにノーリの顔に手を添えながら彼の名前を呼んだ。
その後、わざと険しい顔をした後……、
「おじさんの側から……、消え去るだなんて言わないでよ」
と、険しい表情から一変して営業スマイルではない、本心からの微笑みを浮かべながらそう言った。
その後、ノーリの耳元で“おじさんもノーリが悪いだなんて思ってないよ”とそう呟けば、しばらく抱きついたまま離れようとはしてくれなかった。




