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初等科編18

 上庭に連れて来させられたおじさんは、逃げられないように彼女らに囲まれて威圧のある視線を向けられた。何でだろうねぇ、ナナセくん以外の女子からは何故か敵視されちゃうのよね、望んでこのような容姿で生まれてきた訳じゃないのに理不尽だよ、側にいたい親友の隣でさえも居させてくれないだなんて。

「ノーリ待たせてるんだよね、用があるならさっさと済ませてくれない〜?」

 本当は怒りをぶつけたいところを営業スマイル浮かべて耐えていれば……、

「……もうノーリ様を巻き込むのはやめてくれないかしら」

 ……ノーリのこと何も知らないくせに三人のうちの一人がそう決めつけるようなことを言ったから、不愉快なあまりおじさんは彼女らを睨み付けた。


 いつもの口調なはずなのに、自分でも吃驚するくらいに冷たい声色で、

「……君達はノーリの何を知ってるの?

“僕”がノーリを巻き込んでる? どうしてそんな風に言い切れるの、だったら本人に直接それを言ってみてごらんよ。ノーリはきっとそれを拒絶するから。

僕はね、ノーリに幸せになって欲しいよ。だから、恋人が出来たら応援してあげたいと思ってる……。

でもさ、ノーリが誰と居て幸せだとかわからないくらいに恋に盲目になっているなら、僕は君らの恋を応援してあげたくない。だから勘違いしないで、この感情は家族愛に近い友情なのだから。見た目が少女に見えるから不安になるのもわかる、だけど! 深く想う気持ちが恋愛感情だけだと勘違いしないで欲しい」

 そう言った時の窓に映ったおじさんの顔は、……自分でも吃驚してしまうくらいに無表情だった。

 そんな表情を見た彼女らは怯んだのか、一歩下がるような素振りを見せた後、とても動揺をしているのか三人の女子生徒の一人が叫ぶようにこう言った。

「嘘よ!」

 その一言におじさんは最初から理解されないとわかっていたから、冷静に淡々とこう言い切った。


「理解されないならそれで良いよ、理解されたいとも思ってないし。

でもさ、君達は別に嫌いじゃないよ? 暴力に訴えず、正々堂々と僕に面と向かって言ってきた。嫉妬の視線を向けるだけでそんな視線を向けてくる理由を教えてくれない女子らよりはよっぽど良いし、その勇気を僕的には尊敬するよ。

でもね、巻き込むなと言うなら言う相手を間違えてる。言うならノーリに言ってよ、お互いに側にいることは本人が望んだことであり、僕が変えることなど出来ないんだから、その意思を変えたいのなら他人に任せず行動をなさい。

君達から見た僕らの親友関係は異常なのかもしれない、でも僕らにとってはそんな関係であることが普通であり、他人に言われたところで引き返せなくなるくらいにお互いに依存しているんだ。その気持ちを変えたいと思うなら、楽をせずに人の心を変化させるくらいに努力をしなさい」

 と、そう言えばやっと話が通じてくれたのか、囲むように並んでいた三人は解放してくれて、無表情になっていたおじさんはニッコリと営業スマイルを浮かべた後、ありがとうとお礼を言ってこの裏庭からしばらく歩いた時だった。

 ……誰からか、後頭部を殴られて痛みのあまり地面に崩れ落ちるように座り込み、鈍い痛みを感じる中、米俵を運ぶように軽々と持たれ、誘拐されるのかとおじさんはそう悟る。

 小さな声で悲鳴を上げるような声が聞こえてきて、気絶しそうになる中、必死でこう叫んだのだった。


「早く、逃げて!」


 そう叫んだ瞬間、痛みが頭に響き、痛みに耐えられず気絶したのだった。



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