初等科編13
不思議だった。……おじさんはなかなかの怪力であるはずなのに、訓練メニューをこなし終わった後に苦しそうにしていたのに、抱きつかれてもアルトくんが平気そうだったのが。
五、六時間目にアオトとクロトとコンビネーションを磨くために鍛練を重ねつつ、ノーリ達ともタイミングを合わせて攻撃出来るようになるようにしながらも時折ぼんやりと空を見上げながら、切なくて悲しいと言ったような表情を浮かべつつ、空を睨みつけるような視線で見つめているアルトくんは……、十歳児には見えなかった。
そして放課後。
夕食を食べる前に少し時間があり、膝の上に乗せられながら後ろから抱きしめられ、どうしたのー? とそう言いつつも甘えてくるノーリの頭を片手で撫でているとー……、何度も何度も首筋に額を押し付けられた後、こう言ってきた。
「予知で何を見たのかを、お前にまだ話してなかったよな……」
と、疲れきった声でノーリはそう言って、抱きしめてくる力を強くした。
無理して言わなくても良いんだよ? とそう言おうとした瞬間、わざと言葉を重ねてくるかのように深く息を吐いて、淡々とした口調でこう言ったの。
「紫髪の少女は復讐するつもりなんだよ。
自分を受け入れなかったこの世界に復讐をして、紫髪の少女が望んだ通りになる世界を創り上げるつもりなんだよ。彼女はこの世界の独裁者になるつもりなんだ。
そしてそれは完全に彼女を受け入れたたった一人のとある男のためでもある」
話した内容はいつも以上に、ノーリの夢で見た予知が鮮明だった。
だから、いつもよりも後遺症の頭痛が酷かったのかとおじさんは納得したし、……大切な人が出来て悪い方向へと狂ってしまったのかともそう思った。
本当にその人が、独裁者になると望んでいるとも限らないのにね……と大切な人のためにそうしてしまう気持ちを何処か共感出来る部分もありながらも、相手側の真意を聞かずに突っ走っているような気がしてならないのよ……。
「あの時、父上が姫様を守りきることが出来なかったら紫髪の少女はこの国を拠点にするつもりだったみたいで、今戦争している大陸が二つあるだろ? 王の護衛が手薄になっているところを狙って、その大陸を占拠するつもりなんだ。
その目的は時期に達成させられる。いや……、もう占拠する目的を達成させているかもしれない、父上は悪運が強かっただけで紫髪の少女を止められるくらいに強い人がこの世界にはいない。……だからそうなった時、世界の理を守るために“人ではない者”が違う世界から“本当はこの世界にいるはずだった強者”を四人を呼び寄せる……、そんな未来を見たんだ。
きっと、この未来をわかっていても変えられないと思う。ここまではっきりと鮮明に覚えていると言うことは……、そうなる可能性が大きいってことだ。
多分さ、この話をして王族の竜騎士や魔法騎士は信じてくれて手を貸してと言えば、快く手を貸してくれると思う、だけど下手に協力して後々のことを考えれば今動くべきじゃない」
珍しく、ノーリが自らの意見を言ったことに驚きながらもおじさんは、……そうねと自分でもまた少し驚くくらいに穏やかで柔らかい声でそう同意した。




