おじさんね、三歳になったの。
あまりにね、変化のない生活だったからおじさんが以下省略しちゃうね。
おじさんね、三歳になったの。今まで名前についての話題に触れてなかったけど、コタくんは僕のこと“八神”って呼んでるでしょ? そのことについてこれを期に教えようと思うの~!
八神はおじさんの通り名なのよ。あ、チートだからと言う理由ではなくて、本名がバレたら死に関わる仕事をしてたからね、いつの間にかついてた通り名を偽名として使わせて貰っていただけなの。
そう言われるようになった理由は単純におじさんには八つの顔があるって言われるくらい、別人になりきることが出来るから八神って言われるようになっただけ。
おじさんは本名を誰にも明かしたことがなかったから、家族以外は知らないんじゃないかなぁ~。
おじさんの本名はコタくんでさえも知らない。何処で誰に聞かれているかわからないからね~。彼を信頼してない訳じゃないのだけど仕事上、仕方がないよねって諦めてるの。
実はね、おじさんは前世では情報屋をしていたのよ。パソコンもなかなか得意ではあったし、……まあ得意と言えるまでたくさんの努力をしたけどさ。
あとは集めた情報を守るために護身術を習ったりしたよ。おじさん、結構優秀な情報屋だったのよ。あまりお金を使うようなタイプじゃないし、遺産は結構残ってたんじゃないかな?
話が違う話になっちゃってたね。話は戻すけどまあ、一応は護身術を習ってはいたものの、おじさんはめったに狙われることはなかったんだよね。普段からふわふわしてるから、危機感がないと言う先入観で狙われたことはなかったの。
でも、狙われやすいのは変わりはないから、コタくんがおじさんを守ってくれてたんだぁ。彼は意外なことに喧嘩慣れしてるんだよねぇ。元々は警察官だったらしいけど退職して、僕が勤めてた大学の警備課に移動してきたみたい~。
何故、僕がコタくんの部下だと言うと~、警備課の奴らには彼を指導するのが難しかったみたい。試しに情報を集めてみたところ、コタくんは刑事として優秀な仕事振りだったみたいだしぃ~、矛盾点をズバリと遠慮なく言っちゃうからね、仕方がないから何の課にも属していないおじさんが部下になった訳よ。
でも、おじさんの部下になってからは大人しくなっちゃったのよ。仕事面では大人しく従い、生活面では面倒を見てもらっちゃっていた訳だけど。
そんなコタくんから、一年前くらいだろうか。連絡がなくなっちゃった。
――寂しいなぁ。と、考えながら呆然と過ごしていると、
「クラトちゃん、聞いてちょうだい! 貴方に弟が出来たわよ!」
と、母上はそう言う。その言葉を聞いたと同時に、おじさんはこう思う。
――あ、その弟はコタくんだ、と。
おじさんの我儘を何でも叶えてしまうコタくんだ、産まれてくるのは彼で間違えない。僕がほわほわと飛んでいってしまいそうになるのを止めにきたんだろうね、……きっと。
ちなみに現世では名前を隠す必要がないし、教えちゃうね!
クラトル キリシアと言うらしいよ。現在、住んでいるのはリノアノ大陸のカノンと言う島国に住んでいるんだよ~。家系的には一応は貴族みたいだよぉ。
あっ、そうそう。クラトちゃんは母上だけが呼んでる愛称らしいよぉ~。
◇◆◇◆◇◆
おじさんに弟が出来るとわかって、数日後。三歳になったため、自分に与えられている加護を知らなければならなくなった。
おじさんが前世、なかなか上位の成績だったことと言えば英語や文系科目、パソコン。……護身術はまあまあな実力だ。仕事上、メイクの仕方も知っている。だけど、この“得意”は無双してしまうくらい群を抜いている訳じゃない。
何年も何年も、トチ狂ったんじゃないかと思われるくらいに努力をした結果、手に入れることの出来た実力なのよ〜。
おじさんは感受性の豊からしい。一時期、長い間見続けた夢に出てきた人に分かりやすく言えば、なりきっていた時期が幼い頃にあったんだのよ。
でも、おじさん的には憑依されていたと言った表現の方が感覚的に正しい。
おじさんにとって、情報屋と言う仕事は天職だったと言えると思う。大変だったから現世では再びその職に就こうとは思わないけどね~。
おじさんは絶対音感も持ってるし、聴覚も鋭い。ほわほわとのんきだから、大体のことでは焦ることはないから、冷静に物事を判断することが出来た。
幼い頃の経験があってか、演技力もなかなか優れていたことも、おじさんにとっては情報屋と言う仕事を長い間続けることが出来た理由でもあるし、天職だと思った理由でもあるの。
そんなおじさんに与えられている加護は謎なんだけど、ちょっとだけ楽しみかもしれない。えへへ〜!
と、考えているうちに中世風の街並みを走っていたおじさんが乗っている馬車は、白で統一された教会の前で止まったため、ぴょこんと馬車から降りれば僕の他にも加護を調べるために同年代の子達がいた。
が、おじさんの視界に入ったのは何をするのか分かっておらず、「やだ」と愚図っている一人の男の子だった。
おじさんは母上の制止を気にせず、その男の子に駆け寄りこう言った。
「ふふ〜、怖いのぉ? 大丈夫、おじさんもここに行くの。一緒には受けたあげられないけど、おじさんがそれまで一緒にいたあげるからねぇ」
と、よしよしとほわほわとしながら言いながら、その男の子の頭を撫でればその子はにっこぉと花が咲いたように笑って、
「喋り方面白いね!」
と、そう言われたから、おじさんが自分のことを“おじさん”と言っていることを言っているんだろうと思った。
だから、男の子の手を取り、手を繋いだ後、おじさんはこう言った。
「そうでしょ? おじさんもそう思う〜」
と、そう言葉を出せば、何をされるのかわからず、今まで怖がっていたことを忘れ、その男の子は笑っていた。
おじさんの母上も、その男の子の母上も安心したようにため息をついていた。