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旋律の闇色勇者(トラペゾへドロン)  作者: 傘ㇻ戯 エンリ
ヴェイング大陸バルケイト篇
19/28

十九話 誰の仕業か推理してみよう!

こんにちはっす。

体育で長距離走ったから、半ニートの俺には辛い…………。

実際家では毎日パソコンを触ってる人間には1,500メートルは地獄であり、走ること自体考えられない。

それにニートに付きまとう筋肉痛というものが俺の足をむしばむ!


と、ここまで小説には関係ない事を書きました。

では楽しんで頂ければ嬉しい限りです。


そういえば夏休み明けはキャラが変わるっていうけど、俺ってこんなこと書くキャラだったなぁ。

「なぁ、アリシア」


俺がそう言った瞬間、リューシアとミリーは少なからず驚きの表情を見せていた。

しかしなにを言うでもなく、ミリーは事の成り行きを見守っている感じだ。リューシアはただオロオロとしているだけなのだが、


「なんの事かさっぱり分かんないっすよぉ。勘弁してくださいよ兄貴~」

「俺とお前は会ったばかりだがな。

 しかし、俺はお前のなにに勘弁すればいいんだ?」


俺の指摘にアリシアは気づいたようで、悔しげな顔をして俯くばかりだ。


「分かりやすかったのはこの村を見回した時だったな。集落が多い割に死体が無かった。勿論家の中で死んでいる、あるいは逃げ切れたという可能性もあったんだが、死体は全てが家の玄関に転がっていた。つまり、人間は妖精族が家の中に入らないといけない状況を作った。多分一帯にガスでも撒いたんだろう。気分が悪くなる程度のな。

 そして人間は全ての妖精族が家の中に入ったことを確認し、そして家の玄関の前にスタンバイ。気付けるのはエックスライが使える奴くらいだろう。そして家から出てきたところをザックリって訳だ」

「つまり、人間の目的は顔を見られないように殺すこと?」

「違うな。さっき言っただろ、集落の数の割には死体の数が少ないって。そりゃ家族や居候って形で一緒に住んでる奴も居るだろうが、割合が1:1、もしくはそれよりも妖精族の数が少なかった。

 即ち……」

「人間は死体を持ち帰った?」

「かもしれん。それともうひとつ、生きたまま連れて行った可能性も。

 いや、後者の方が可能性が高いな。殺すのなら圧倒的な戦力で攻めればいいだけだし、俺の予想した方法からして、不意打ちっつうのは一番半殺しがやりやすいだろ?」

「確かに。でも、持ち帰った目的は?」

「そこは、アリシアに直接聞こうじゃないか」


俺が首を動かしてアリシアを見た。

リューシアとミリーもそれにつられる。

しかし、気づいていながらなのか、もしくは気づいていないのかアリシアは俯いたままだ。

じれったくなって俺はこっちから質問することにした。


「アリシア。俺は妖精族に思い入れがある訳じゃないし、お前を裁く権利があるとは思ってない。だから話は聞かせてくれないか?」


俺の声を聞いたからなのか、ピクッと一瞬だけ動かした身体を、その後すぐに真っ直ぐと起こした。

その顔に涙は無い。


「別に君に言われたから、言うんじゃないよ。でも、これは誰かに言っておきたかったから……」

「……」

「ねぇ


私を助けて…………」


消え入りそうな声は、俺の耳に辛うじて届いた。











「じゃあ全員揃ったか。じゃあ、現在起きている異常事態に対しての対処を我らで話し合っていこう」


アルダイトの中にある政府塔、その中の議会には人が大量に集まっていた。

まずは議会の最高責任者である議長。この会議の収集をかけるように命令したのもこの人である。

次は議会に所属している人間の代表三人。この三人にも、議長ほどじゃないがそれなりの貫録を感じさせるものがある。

そして一番の比率を占めているのが、世界中に点在するギルドに所属する実力者、SSSランクの冒険者だ。

ある人は輝く剣を持っていたり、ある人は議会に似つかわしくない大きな斧を持っていたり、話し合いという場には不釣り合いなメンバーだ。


「君たちをここに呼んだのは他でもない。先日の魔法、あるいは魔付加具の実験跡と思われるものが見つかってな。その規模が尋常じゃないと聞いたので、足を運んでもらったわけなのだが。

 勿論急ぎの用があるのなら途中で出ていっても構わない。しかし君たちを呼んだ意味を考えてくれ」

「つまりぃ、俺たちの意見が聞きたいってことっすかぁ?」

「その通り、ザーゼス殿。勘が良くて助かる」


ダルそうに放ったその言葉は場の雰囲気を少し変えた。

議会代表の三人が怒りの顔を見せたからだ。それは、尊敬している議長を馬鹿にされたのだと思ったからであり、それなりに正当なものだったのだが、冒険者たちは別になんとも思ってない風に椅子に座っているだけだ。

張本人であるザーゼスでさえ隣の冒険者と話を始めているから、三人の怒りはさらに増す。


「きさま……」

「落ち着け。別に怒るほどのことでもあるまい。そもそも遠くから足を運んでもらったのだ。こちらが文句を言う資格はあるまい?」

「くっ……分かりました。しかし、あまりにも礼を欠くようでしたら、その時は口を挟ませていただきます」


三人の怒りもひとまずは引き、場は一瞬にして会議の雰囲気になった。

議長が目つきを変えたからだ。

おっとりとしたどこにでも居るようなお祖父ちゃんの目つきから、人の上にたつ者の目に。


「さて話を戻そう。今日は意見を出し合って、あの大きな被害の正体と原因を推測していきたいと思う。では実物を見ていただくとしよう」


――――――――――――――――――――


「こりゃひでぇっすね……」


ザーゼスは話に聞いていた跡地を見て、思わず声を漏らした。

他の冒険者は平然としているが、恐らくは反応を表に出していないだけで、内心はザーゼスと同じようなものだろう。

議長は話に聞いていただけの跡を見て、腰を抜かしそうになったが、冒険者の前で情けない姿を見せるわけにはいかないと思い、老体に鞭を打ち踏みとどまっていた。


議長とザーゼスが驚いている中、早速その跡に触れたり、目を閉じて意識を集中させたりと調査している者達がいる。

そこは流石SSSランクといったところだ。


「どうですか、クラーク殿。なにか分かりそうですか?」

「………今詠み取っているので、ちょっと待ってください」


クラークと呼ばれた冒険者は剣を跡に刺し、その剣に意識を集中させることで、間接的に跡の分析をしていた。

クラークはエックスライを持ってはいないが、剣には特殊能力【摂理詠み】が備わっている。

自然に属するもの、もしくは自然に溶け込んだものを感知する能力だ。

人間の中にある魔力や魔法は感知できなくとも、残滓を詠み取ることが出来る。


「これは……!!」


小さな声で、しかし確かに声と顔は驚愕の色に染まり、クラークは言った。

その周りにいた人間は自然にその声が漏れた方向を見て、それにつられて結局は全員がクラークを見た。

伝染した、声を上げたクラークに対する驚きには気づかずに、本人は議長に告げる。


「議長、これは人類にとっての危機かもしれない」

「は……。それはどういう事だ!?」

「気づいている奴もいるみたいだが、俺が代表して言おう。

 簡潔に述べると、これは魔法によってもたらされたもので、魔付加具なんてものじゃない。そもそもそんな魔付加具があるなら、それをつくることが出来る奴は世界中で有名になっているだろ?」

「確かに一利ある」

「自然に魔法になったから、俺は魔法一点の可能性に絞って調べたんだが、これは最悪だ」

「だからそれがなんと……!」

「闇属性です」


クラークがお構いなしに放ったその言葉は、一瞬どころか何秒、何十秒と随分と長い静寂を呼び寄せた。

しかしいつまでも黙っている訳にはいかないと思った議長は、なんとか意識を戻してクラークに尋ねた。


「闇属性というのは、魔物と魔族しか持たないと言う」

「その通りです。しかしただの魔物じゃ、あるいは魔族でもこの規模の魔力を持っていることは考えられません。なら答えは簡単」

「…………! まさかっ!」

「そうこれは魔王の魔力によるものかもしれない」


その場の全員が困惑した。

魔王とは、大昔に魔物と魔族を引き連れて他種族と多くの戦争を繰り広げた原因となった人間・・である。

人間族の主な損害は、コルマス王国の滅亡だ。

これは魔王からの宣戦布告であり、人類の最大にして最初の被害だった。

その際には魔王は大量の魔族を引き連れ攻め込んできたという。

これら全ては伝説上の空想だと思っている種族が大体だが、各国の王族と、王族が認めた人間には伝え続けられてきた真実・・だ。

議長はそれを知っている人間のひとりなので、周りの三人、そして冒険者よりも驚きと恐怖は大きかった。


「しかし確証もない。ただ、大きな闇属性の魔力がここで使われたのは確か。聞いた話では、これが見つかったのは一昨日だそうですね。それなのにまだ大量の魔力の残滓がここに残留している。一番実力のまる魔族でもこんなことは不可能です」


確かにそこは括目するべきところだ。

しかし、議長が懸念し、心配していることなそんな事ではない。


「じゃ、じゃあ世界のどこかの人間種の中に、魔王並みの闇属性を使う者が居るってことなのか?」

「そうなりますね、残念ながら

 魔族に生まれたという可能性のなくもないですが、過去存在していた魔王が人間だと言うなら、今回も人間である可能性の方が高いと考えた方が良いでしょう」


冷静に、しかし少しばかりの焦りを見せて早口になりながら言ったクラークの言葉は、その場の全員の発言を許さなかった」


――――――――――――――――――――


場所は戻って会議室。

全員が重苦しい雰囲気を出して椅子に座っている。

ノリの軽いザーゼスでさえなにかを言おうとするたびに言葉が詰まる。


「さて、話し合いをする雰囲気でもないが、ひとつ決めなければいけないことがある」

「闇属性を持つ人間が居るとしたら、その者の処遇ですね」

「その通りだ。さて、意見を聞こうか」


議長が部屋中を見渡し、そしてひとりの女が手を上げた。


「ティメリス殿、どうぞ」

「はい。私は、ここに居る人間の間だけに留めて、私たちSSSランクの人間で調査する事を提案します」

「どういう意図が?」

「確証がない今、この事を公表しても世界中の人々に無駄な混乱を招くだけです。もし悪人であれば、そうなった時ボロは出さないでしょう。

 だったら実力者である私たちが極秘で調査し、いつの間にか解決してました、というのが理想的だと思います」

「なるほど。貴重なご意見感謝する」


議長はティメリスの意見を聞いた上で考え込む。

確かに世界中が混乱するのは避けなければならない。ティメリスが言うように犯人が出てこないからだ。それにそもそも存在しなかった場合、各国の損害はどれほどのものになるか分からない。

本人にやる気があるならぜひ任せたい、そう思った。


「他に意見はありますかな?」


部屋は防音が聞いていて、議長の声が反響する以外の音は聞こえない。

その静寂を無いと取った議長は結論を出した。


「ではティメリス殿の案を採用する。しかしこれは無理に参加しなくてもいい作戦である。出来るだけ参加してほしいのだが……。

 参加してくれる人は手を上げてくれ」


議長がそう言うと、SSSランクのほぼ全員が手を上げた。

しかしあるひとりの男以外。


「成程。セミリア殿は不参加か。後は全員参加で良いのですかな?」


全員が一斉に頷いた。

セミリアが手を上げないことに関してなにかを言う人はひとりも居ない。


「では、極秘に闇属性を持つ人間を探してもらう。しかし出来るだけ殺さずにここに連れてきてほしい。作戦終了までここにいる者以外には他言無用だ」











「きっかけは昔あたしのママがバルケイトの貴族の人と結婚したことだった」

「へぇ、妖精族と人間族が結婚ねぇ。お前はふたりの子どもか?」

「いや、あたしはパパが死ぬ前にパパとママの間に生まれた子ども。だから純粋に妖精族。

 ママは再婚に積極的じゃなかったけど、貴族の人のアプローチを受けて結婚しても良いと思ったみたいで、結局ふたりは結婚した。私は反対だったから皆について行ったんだけど」


アリシアは今回の事の発端を話し出した。

顔は暗く重い話であるが、聞かない事には助けられない。リューシアもミリーも空気を読んで黙って聞いていた。


リョーカは今回のことは、今起こっている魔物襲撃となにか関係があるかもしれないと思い、耳をアリシアの方にむけるようにして聞き入っていた。


「そんな時にね、手紙が届いたんだ。方法が矢文だったけど。

 その手紙には『お前の母親は預かっている。返してほしくば我々の言う通りにしろ』と会う場所の指定が書いてあって。勿論あたしは指定された場所に急いだ。そこにはひとりのフードを深くかぶった人間が居て、『これからは俺がお前に指示を出す。まずは妖精族の転移魔法について聞かせろ』ってドスの利いた声で言ってきたから、手紙のことは本当なんだなって思って、そのまま教えちゃった。

 ホントは今もその契約は続いてるんだよ近くに見張りがいるかも……」

「いや大丈夫だ、俺が確認したからな」

「じゃあ今日したことに見張りだった人たちも必要だったんだ」

「で、その今日したことってのは?」

「分からない」


アリシアはそう告げた。

リョーカは一瞬眉を細めたが、あり得ない話ではないとも思い黙って聞くことにする。


「分からないの! 事前に、次はここに転移するって言ってたからなのか、今日急に指令が来て、『とにかく十二時になったらそこからそこから出ていけ』って」

「十二時、なるほど。昼時ってことか」

「妖精族は全員で集まって食事をする習慣があってね。今日の作戦ってやつには有効だったんだろうね」

 私は誰にも言わずに出てった。慌ててたから、色々あったんだ」

「で、俺と会った時に気絶してたのか」

「そう。

 そして私はここに着いた時に絶望した。周りにはみんなの死体が転がっているから、すぐにここで殺戮が行われたことが分かった。数が合わないのには気づいてたけど……。

 ねぇ、ここに居ないみんなは生きてるかもしれないんだよね」

「そうだ。お前が三十人って言ってたから、大体十五人は連れていかれてるな」

「さっきさ、私を助けてって言ったけどさ、撤回して良い?」

「……………」

「私の仲間とママを、みんなを助けてっ!!」


……………………………

……………


「了解っ」


リョーカはいつの間にか泣いていたアリシアの頭をポンポンと叩きながら、そう言った。

アリシアは一層涙の量を増やし、後からどんどん雫が垂れてくる。

頬を伝い、そして地面に落ちそうなそれを、リョーカは指ですくった。


「行くぞっリューシア、ミリー」


声をかけられたふたり、リューシアは嬉しそうな顔を、ミリーは納得したような顔で答えた。


「やっぱりお兄ちゃんだもんね。ほっとけるわけないよ。私はカッコいいお兄ちゃんを持てて幸せだよ」


「お父さんも、中々の女タラシ。助けて、その子をハーレムに取り込もうとしてる、魂胆が丸見え。でも、その子も私みたいにちゃんと話聞いて、救ってあげてね」


「保証は出来ないけどな、いっちょやったるかっ!」


リョーカ、リューシア、ミリー、アリシアの四人は近くの村を目指して歩き出した。

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