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ダンジョン奴隷だった俺、封印魔人と融合して美少女になり、最奥から強者を叩き潰す  作者: あきお
第二章 オークリッジの街で

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第62話 売られた笑顔

※本作にはTS要素があります。

「次」



パラッ



「次」



パラッ



俺は、言われるがままにページをめくっていく。

……1ページに使われる時間は、ごく短い。

正直、1ページに1秒程度しか使われていない。


とは言え、不安に駆られて手を止めたりすると……



バチィ!!



「痛ってぇ!!」



不意に全身に鋭い痛みが走り、俺の体が大きく跳ねる。

体内で何かが破裂したかのような、鋭く激しい衝撃。

まるで偏頭痛が全身に走ったかのような痛みに、俺は手を動かさざるを得ない。



「手を止めるでないわ阿呆。早うせんか」



……このように、無言で魔力を流された上に罵倒される。

魔力には多少なれたとは言え、こんな使い方をされてはたまらない。


が、魔力を流せば流すほどに馴染んでいくのは間違いない。

とは言え、痛いものは痛い。

……せめて何か予告をして欲しいんだが。



「――ふむ」



帳簿を読み終えたバルフェリアが、ひと心地つく。

……バルフェリアには悪いが、こんなので本当に読み終えたのだろうか?



「残念じゃが、エリスの名前はなかった」



徒労だったのか……。

せっかく金まで出したのに、情報なしは精神的にキツい。



「まあ、宿はもう一つあるんだ。気を取り直して――」


「しかし」



バルフェリアの一言が、俺の徒労感に釘を刺す。



「ヴェロニカの名前があった」


「……ヴェロニカの?」



俺は急いで帳簿を開き、パラパラとめくっていく。



「そのページじゃ」



言われて止めたそのページに、注意深く目を走らせる。

そこには、確かに書いてあった。

“ヴェロニカ”と。



「エリスじゃなくて、何でヴェロニカが……?」


「さてな。しかし読み進めてみよ」



ヴェロニカの名前が書かれている近場を読み進めると、



“家族三人で宿泊。三人とも青い髪が特徴的。父、ガンツ。母、エルダ。娘、ヴェロニカ。”



と書かれている。



「家族で?じゃあ、両親も奴隷に……?」


「それはどうかのう」



バルフェリアは意味深に告げると、さらに文章の先を指差す。

そこには、



“家族の退室完了。”



との文字が走っていた。

ここに書かれていることが正しければ、何の問題もなくヴェロニカは家族と共に退室したことになる。

だが……



「おかみさん」


「何だい?」


「この一家なんですが」


「ああ、これが?」



おかみさんの表情に動揺は見えない。



「退室は特に問題なく?」


「別に何もなかったけどねえ」


「そうですか……」



本当に何もなかったのか……。

しかしそうなると、疑問が出てくる。


なぜヴェロニカは、自分がこの宿に泊まっていたことを黙っていたのか?

なぜ自身が奴隷になった経緯を話してくれなかったのか?

もちろんエリスと関係がない話だからなのかも知れないが、それにしても、だ。


落ち着いたら、また話を聞かなければいけないかも知れないな……。



「そう言えば――」



そうして俺が頭を悩ませていると、おかみさんが思い出したように声を上げた。



「退室の時はだいぶ表情が暗かったね」


「どういうことです?」


「来たときも両親は暗い顔をしててね。それで帰る時は、より一層暗い表情になってた気がしたんだよ」


「どんな感じだったんですか?」



……両親に一体何があったのか。

人の感情の動きは非常に重要な情報になる。

ここは掘り下げるしかない。



「うーん、何か思い詰めたような感じだったねえ。まるで家族の誰かでも死んじまったみたいに。

なのに、無理やり楽しんでるような……娘さんに合わせてさ」


「ヴェロニカ……娘さんは楽しそうだったんですか?」


「そうだね、親子での旅行がとっても嬉しそうでねぇ。あの子の笑顔はこっちも嬉しくなっちまったよ。

表情がコロコロ変わる、楽しい娘さんだと思ったよ」



笑顔、コロコロ表情が変わる――

どうにも俺が知っているヴェロニカと結びつかない。


奴隷落ちになってショックを受けたのかも知れないが、それにしてもキャラが違う。

俺が知っているヴェロニカは、冷静で表情があまり動かないクールな女性だ。


……どういうことだ?



「おかみよ、ひとつ良いか?」


「何だい?ちっちゃい嬢ちゃん」


「ちっちゃ……まあ良い。その娘は、退室時にはどういう表情をしておった?」


「……いなかったよ」



え?



「いなかったんだ。先に行ったって言われて」


「退室時にいなかった、ということで相違ないか?」


「ああ、間違いないよ」



俺とバルフェリアは顔を見合わせる。

恐らく、間違いない。


ヴェロニカは――両親に売られたんだ。


問題はどうやって売られたのか。

そしてなぜ、この宿の近くで殺人事件が起きたのか。


……どうにもこの二つは、無関係ではない気がする。

そして――



「バルフェリア」


「うむ」



この宿を不穏な気配が取り囲む。

俺の首を粟立たせる、ダンジョンで何度も感じた気配。

これは――殺気だ。



「カイル」


「はい」


「ここに隠れていて」


「!?」



このままここにいては、おかみにも迷惑を掛けかねない。



「おかみさん、私ちょっとここを離れます。

戻ってくるまでカイルをここに置いて行ってもよろしいですか?」


「別に構わないよ?結構お金も貰えたしね」


「ありがとうございます。では、ちょっと行ってきます」



俺は扉の方へと向き直り、息を殺して様子を伺う。

……特に動きはない。


なるほどな。

まだ陽が高いうちに、街中で無差別に襲いかかってくることはなさそうだ。



「行くべき場所は、路地裏だな」


「うむ。エリスの足取りを調べるのと、この殺気の相手は誰なのかを知る良い機会じゃ」


「――行くぞ!」



俺は勢いよく静かなる犬亭の扉を開け、通りへと飛び出した。

読んでいただきありがとうございます。

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