表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン奴隷だった俺、封印魔人と融合して美少女になり、最奥から強者を叩き潰す  作者: あきお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/17

第16話 右か左か

※本作にはTS要素があります。

「あ、そうだ」



鎧野郎と戦った場所まで辿り着いた俺はふと思いついた。

石畳の小さい破片をいくつか拾い上げ、バッグにしまい込む。


『そんなもの、どうするのじゃ?』


「こういうものが、意外と役に立つんだよ」


『そういうものかのう?』


罠の解除にも役に立ったんだ。

かさばる物でもないし、持っていたって損はない。


「そういうものなんだよ。じゃ、進もうか」


いくつか破片を拾い終わった俺は、通路全体を見渡し、床や壁に罠はないか、魔物が潜んでいないかを確認しながら、慎重に進んで行く。


『のう、慎重なのは構わないのじゃが、この短剣を使う気はないのか?』


「そいつは、最後の手段でいいんだよ。だってさ、出会った魔物全てを斬り倒すなんて、俺には無理だと思わないか?」


『カカカ、それもそうじゃな』


「お前が常に力を貸してくれたら、大丈夫だと思うんだけどなー」


『……そうでもないと思うがな』


む、なんか引っかかるな。

バルフェリアの力を借りてもどうにもならない相手がいる?

いや……それは考えにくい気がする。


「ここってもしかして、お前でも勝てないような魔物がいたりする?」


『そんなことある訳なかろう!』


「じゃあ何が、そうでもないんだよ」


バルフェリアは悩んでいるように見える。

危険な事でもあるのか?

何か、言いづらいことが?


「なあ、教えてくれよ。俺の生死に関わるんだ」


『……うむ。実はな』


いつになく真剣なバルフェリアの言葉に、俺は息を呑む。


『……分からないのじゃ』


「へ?」


分からないって、何がだ?

俺は、歯切れの悪いバルフェリアの次の言葉を待つ。


『……その短剣に、どれほどの魔力を流せるのかが分からんのじゃ』


「どゆこと?」


『貴様の体に魔力を流すのと同じじゃ。この短剣も、妾の全力には確実に耐えられぬ』


「あー……。でも、ほんのちょっとだけ流して、俺を悶絶させただろ?あれと同じで調整すればいいじゃん」


封印されるほどの強大な魔人。

流された魔力量からも、コイツの存在感からも、それは疑いようがない。

そんな奴が、この程度のことに何をそんなに心配してるんだ?


『……苦手なのじゃ。微細な魔力操作が』


「え?」


『ほんのちょっとであったり、全力であるなら問題ないんじゃ。だが、精密なコントロールというのは、どうも苦手での』


得心がいった。

だから、歯切れが悪かったのか。


「つまり、短剣を破壊してしまわないか不安ってことか?」


『たわけ!そのようなことが……何を笑っておる!』


尊大で強力な魔人にも、苦手なことがあるんだと思うと、妙に親近感が湧く。

やっぱり弱点がある方が、可愛げがあるというか……。

気がついたら、俺の口角は上がっていた。


「いや、可愛いとこあるんだなって」


『貴様ごときが妾をからかうでないわ!痴れ者め!』


「わかりましたよ、お姫様」


俺の返答は、含み笑いで震えていた。

言葉は強いが、ただの照れ隠しであることが明白のバルフェリアが、妙に面白い。

もちろん俺は、こうして笑いながらも、視線だけは通路の奥を追っていた。



――――――



「なあ、どっちがいいと思う?」


『妾はどちらでも構わぬが?』


案の定の答え、期待はしてなかったけどな。

目の前には分かれ道。

一本道はここで終わり、二本の分岐が目の前に広がっている。


「ま、お前はそうだよなあ……」


しかし、俺としては死活問題だ。

右か、左か。

選んだルートによって、生存率が大きく変化する予感がする。


「どっちが正解か……」


右からは何か、微かにすえた臭いを感じる。

左からは、微かに風を感じる。

――そんな気がする。


重大な問題だからこそ、悩む。

だが、時間をかけてどれだけ悩んでも、通路を睨みつけてるだけでは何も起こらない。

生きるためには、行くしかない。


だが、自分の勘も信用しきれない。


――ならば。



「……よし」



俺は深呼吸をして、バッグに手を入れる。

中に仕舞い込んでいた、小さな石畳の破片をひとつ取り出した。


「早速役に立つときがきたな」


『それをどうするのじゃ?』


「こうするんだ、よっ」


ピシッ


指で弾いた破片は、空中で踊る。

そのまま落下した破片は地面を転がり、やがて左手の通路前で動きを止める。


「じゃ、左だな」


『……そんな運任せで良いのか?』


バルフェリアはあきれ半分、といった様子で言う。


「考えて何とかなるものは、全力で何とかするけどな。考えても答えが出ないなら、こういうのも悪くないだろ?」


『ううむ……ま、貴様が良いなら、それで良いがな』


「何にせよ、どっちかには進まないといけないんだし」


もちろん、不安がゼロという訳ではない。

これで失敗したなら、後悔するかも知れない。

ただ、それでも足を止めずに進むためには、無理矢理にでも選択するしかない。


今は足を止めることが一番まずい。

前進を止めてしまえば、また歩き出せる保証がない。


俺は右の通路に未練を残しつつも、左の通路へ足を踏み出した。



――頬を撫でた風が、俺を嘲笑った気がした。

読んでいただきありがとうございます。

よければブクマ・評価・感想いただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ