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ダンジョン奴隷だった俺、封印魔人と融合して美少女になり、最奥から這い上がる復讐譚  作者: あきお


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第1話 ダンジョン奴隷、宝箱を開ける

※本作にはTS要素があります。

もしかしたら、今日ここで、俺の命は尽きてしまうかもしれない。


冒険者の男が宝箱を指差しながら言い放った一言を聞いて、そう思った。



「おいお前、この宝箱を開けろ」



「へ?」



ここはダンジョンの中層。


俺は、予想もしていなかった冒険者からの言葉に、素で返してしまった。


「奴隷のくせにいい態度してんな?舐めてんのか、ガキ」


「す、すいません!そんなつもりじゃなくて…だって、俺ですか?」


「そうだよ、お前だ」


リーダー格の冒険者、剣士の男はよどみなく答えた。

正直、今まで仲良くやれていた、自負がある。


突然の裏切りとも言える宣告。

俺は、焦りと恐怖で顔が引きつり、声が震える。


「いやいや……お互い、信頼関係を築けていたじゃないですか」


「クク、今のお前みたいな顔を見るのが楽しくてよぉ」


残酷な宣言とともにピッキングツールを投げてよこし、ニヤついた顔で剣士が言う。

受け取った俺の姿を見て、奴の口角は更に上がった。

……どうやら本気のようだ。


宝箱には罠がある。

しかも、高確率で死に繋がるような罠が。

みんな知っている。


だけど、俺は死にたくない。

こんな理不尽な扱いをされたまま死ぬのは嫌だ。


「ハハ……ちょっと冗談キツイですよご主人〜」


「ハッハッハッ。……こういう時、俺が冗談を言った試しがあったか?」


無い。

囮にせよ宝箱の解錠にせよ、一度指名した奴隷を変えるなんてことをした試しはない。


「さ、分かったらサッサとやれ。俺たちは離れたところで見守ってやる。気が向いたら骨は拾ってやるよ」


「気が向いたらな!」


「死んだら補充すればいいだけだしな!」


冒険者どもは好き勝手言い終わると、俺を残して踵を返し、充分な距離を取る。

中には俺と同じ、いわゆる“ダンジョン奴隷”が何人も混ざっている。


――ダンジョン奴隷。

奴隷の中でもまともなスキルを持たず、“使えない”と判定をされた奴隷がダンジョン奴隷となる。


魔物の囮、宝箱の解錠、罠警戒のために先頭歩かせる。

ダンジョンで起こる、様々な危険な肩代わりをさせる奴隷のことだ。


斥候“スカウト”を雇えば、ダンジョン奴隷を使う必要もないんだが、そもそもスカウトは高い。

費用対効果を考えれば、ダンジョン奴隷の方が安上がりだ。

唯一の手間は、補充の手間だけだ。


「ごめん、アレックス……」


奴隷の一人が俺に向けて、謝罪の言葉を呟く。

他のみんなも罪悪感と安堵が入り混じった、複雑な表情をしている。


「いや、こればっかりはね……」


俺だって別のやつが選ばれてたら、きっと同じ顔になる。


「俺の悪運もここまでかなぁ……」


村の事件のときも、奴隷商に捕まったときも、死ぬかと思ったが、何とか命を繋げてきた。

だが、年貢の納め時って奴かも知れない。


「何とかなりますように……」


俺は覚悟を決め、ピッキングツールを構えて、宝箱の前にしゃがみ込む。


どうやら鍵がかかっている。

罠は……あるのかないのか、よくわからない。

せめて使えるスキルがあればいいんだけど、そんなものがあれば奴隷になっていない。


「……こうか?」


ツールを鍵穴に差し込み、慎重に捻ったり回したり。

そりゃあ死にたくはないから慎重にやるものの、


“こんな感じ?”


でやるしかないから、意味があるのかどうか。


……選ばれることが無いよう、冒険者たちとはいい関係だったと思ってたんだけどな。


そんな矢先、


「!?」


カチリ


鍵穴から音がした。

これは……開いたっぽい?


「開いた、開きましたよ!流石じゃないですか!?」


「そのまま箱を開けろ!」


……まだ鍵が開いただけで、罠の解除はできていない。


「えーと……罠は?」


宝箱の罠は、様々な種類がある。

石つぶてから大爆発まで、非常にバラエティに富んでいる。

そんなバラエティ、いらないって。


「おい、早く開けろ!」


やはり、罠の解除の時間は頂けないらしい。


野郎、安全なところから偉そうにしやがって!


「さっさとしねえとぶっ殺すぞ!」


駄目だ。

このまま宝箱を開けなければ、どちらにせよ死ぬ。

なら、宝箱の罠の方がまだ生存率は高い……気がする。


「……もうどうにでもなれ」


俺はヤケクソで、勢いよく宝箱を開いた。


「どうだ……あああああぁ!?」


瞬間、目の前に虹色の光が広がり、俺を包み込む。

すると俺、アレックスは、その場から忽然と姿を消した。


「テレポーターかよ……あっぶねえ。ま、運が良ければアイツも生きてるんじゃねえか?」


「いやあ、あんな奴、壁の中がせいぜいだろ」


「ガッハッハ!違いねえ。おっ、結構入ってるじゃねえか」


所詮は使い捨て。

箱の中の財宝に目を奪われた奴らの脳内から、俺という存在はあっさりと、綺麗さっぱり消えたのだった。



――――――



光が収まり、地に足が付く感触。

俺は、ゆっくりと目を開けた。


そこは、元いたダンジョンの中層……確か、七層。

その場所とはまるで違う、大きく開けた玄室だった。


空気は重く、暗い。

ダンジョンに関しては素人の俺にも、かなり奥の階層だと予感させる雰囲気だ。


「ここはどこだ……?」


思わず見回すが、もちろん見覚えなんてあるはずもない。

生理現象みたいなもんだ。


そして俺は、台座に大切そうに置かれたそれに目を奪われた。


「すげぇ綺麗だ……いや、待て待て待て。ああいうのこそ、罠があるのが普通なんじゃねえの?」


吸い寄せられるという表現が似合う、黒く輝く、妖しい魅力を感じる宝石。


これこそが、このダンジョンの“秘宝”と呼ばれるものに違いない。

そう思わせる迫力が、それにはあった。


「これさえ持ち帰れれば……自由になれるんじゃないか?俺!?」


これを手に入れられれば、もう殴られない。

もう命乞いも、媚びる必要もない。

そんな気がする。


「やった、やった!」


気分が高揚する。

居ても立っても居られず、俺が秘宝へと駆け出したその時――



グルルルアオオオオウゥッ!!!



部屋全体をビリビリと震わせる、獣の咆哮。


その、死を予感させる絶叫に振り返ると――見上げるほどの巨大な狼が、そこにいた。


俺を見下ろすその視線は、氷のように冷ややかに光る。

それは、射殺さんとばかりの殺意に、溢れかえっていた。


だが、せっかくの秘宝を前に、死ぬわけにはいかない。


何としてでも――生き残るんだ。

読んでいただきありがとうございます。

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