第72ゲーム『2011号と母と大昔』
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リュフォーの視点。
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ここはどこ……。
なんで何も見えてないの?
何があったの?
「ここはおまんの意識の中ぜよ。」
誰?誰の声??
「……忘れられて悲しいなぁ……お母さんは悲しいぜよ!!」
違う、ボクのお母さんはこんな声じゃなかった……。
君は誰だ?声だけ聞こえる……君はいったい……。
「お母さん、いっちゅう!!
おまんが故障して、こうして語りかけちゅうに!!馬鹿がよぉ!!」
……ボクのお母さんはそんなに無理に若々しく声を作ったりしないし…………。
そもそもそのよくわからない方言?あってるの?
「…………おほん!せっかく久方ぶりに会えたというのにひどいじゃないの!
お母さんはプンプンです!あっしはあんたの本物のお母さんなの!
ピチピチで若いんだよ~~!」
…………それでイマジナリー自称本物のお母さんはボクの意識の中で何をしようと思ってここにいるの?
なんだかそのノリが知り合いのお姉さんにそっくりなんだけど……。
「あ、それ。あんたの妹。」
……………………??
「あんたの本当の名前は2011号。
知り合いのお姉さんことケムリは2561号。
今、外の世界で3066号が修復プログラムを作動させてあんたの過去を見せようとしている。
そのプログラムが作動したから意識下に紛れ込んだあっしが強制修復されたって感じかな?」
修復プログラム??
え、ボクは2011号??
まって何?
――ボクは龍流寺隆々丸……リュフォーだ!!そんな名前じゃない!!
「ユーザー登録情報を読み上げているだけって気が付かないなんて……。
まぁープログラムを施したあっしが言うことじゃないんだけど……。
流石あっし!」
…………認めないぞ!蒲公英の人達と兄弟姉妹関係とか!
ボクが2011号とか!そんなの認めないからな!
「事実ぜよ……。
それに兄弟姉妹関係って言ってもね……。
2011号。あんたと2561号……ケムリとの年齢差はね『3656.5歳』もあるんだよ。」
は…………え…………??
「文句が言いたいなら答えなさい。
あんたは子供の時の記憶はあるの?
あんたが親に叱られた記憶は?甘えた記憶は?
妹とされている少女が生まれた時の記憶は?
子供の頃、親の作ってくれた料理の味は?
答えて見なさい。」
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「答えられないのは、あんたはゲームの装置の一部だから。
本来は猫の形をしていて現実世界の情勢の情報を収集し、ゲームに反映させるための前段階の端末。
プレイヤーがあんたを見つけたらカタストロフィが作動するようにあっしがプログラムを施した。
人に変化したら適当な家に住み着き人と自身の記憶を操り、プレイヤーをゲームへ誘導する舞台装置。
ターンカウンターや王様のコマと同じ、付属品の一つ。
そしてゲームをリセットするたび、お前はフォーマット……ようは初期化される。
あんたはそういう『物』なの。」
ちが、違う!!
「そう、現代だと違う。
現代だとあっしが封印されたのち恐らく数百の人種戦争とかあって、人権的にあんたは人間扱いされる。
あっしの生きていた3600年前の時代と違ってね。」
あんた……すきかって言って!!姿すら見えないあんたは何者なんだ!!
「あっしはあんたの本当のお母さん、ハナビたちの親でもあり原初六道旅団が一道『天道』
正式名称『機工聖皇太子天和金河』。
またの名を機械人の祖、文明へ至る甘美なる知恵の実。
数多の遺物を産みだし、超常を起こす歴史の裏にいる天から落ちた始まりの機械人。
それがあっし。
そろそろ、思い出す時ぜよ。
3600年前おまん自身が生まれた時のことを……。」
なんだ……光が…………。
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「かつて我らは旅をした。
ハナビと同じような旅だ。
その時の道中だった。」
森だ……なんだか懐かしい気がする……。
これはボクの記憶なのか……?
「我らが旅をしたとき、程よく遊べる遊戯が欲しかった。
あまりに仲間が騒ぐもんで作ってやった。
だが、賭け事好きの馬鹿共がさらに騒ぐんでいくつかの面白そうな仕掛けを用意してやった。
その一つがお前。
目の前にいるあの猫だ。」
ボクの目の前を、猫が通り過ぎる……どこかで見たことがある子猫だ。
「遊戯の名前は『三つ柱』。お前は我らの賭け事を執行するもの。
『選別と徴収するもの』。」
徴収……?
「力、金、土地。
古代の時代にそれを俯瞰し中立的にこなすものが欲しかった。
その際に作られたのがお前だ。
猫の姿なら戦が起こりどさくさの中、逃げ切って賭けで負けたものを駆り立てることができる。
お前は遊戯の審判を執行するもの『本当のゲームマスター』。
贄を払うことで簡易的な願いをかなえることができる遊戯、本来の裁定者。
お前がいなければあっしの仲間である馬鹿達の間で争いごとが起こって極めて面倒だったんだよ~。」
ボクがゲームマスター…………。
「そう。
でも、あっしが事故にあってからコクちゃ…………地獄道の阿呆が、お前とゲームを封印しどこかにやっちゃったんだよね。
結果として『トクシキの茶屋町』で目覚めては眠りを何百何千年かの周期で繰り返してたみたいだけど……。」
…………なんだろう……?
心のどこかに心当たりがあるみたいだ。
それにここは昔、『トクシキの茶屋町』って言われていた気がする。
「で、地獄道がお前を何百年か前に回収し、20年以上前にお前は身体やらをリニューアルされて『2011号』としてよみがえったんだ。
ただゲーム盤は本体は『再現したもの』しか見つからず、付属品のお前だけしか本物がなくがっかりだったらしいけど……。
その後、お前はついこの間まで猫の姿のままだったけどね。」
まって!……さっきからどういうことなんだ?
ボクはずっとこの姿じゃあないのか?
「あっしの愛しい娘たちは20年以上前、設計図段階だった。
地獄道の阿呆はああ見えて女の子大好きで、寝取られあまり好きじゃないからね~。
だから男であるお前に将来、自分がかわいがる女の子を取られるのが嫌だったのか、とりあえず猫の姿のままでロックをかけて研究所に閉じ込めたんだよ。」
ボクそんな理由で研究所に閉じ込められてたの!?
「……たぶん。
で、6年前研究所で3066号ことハナビ達が大暴れした際に、お前の人型ボディの封印と研究所の鍵が外れて、お前はプレイヤーに認証されず猫の姿のまま6年間この町をさまよっていたんだ。
お前なりに言うなら『ニャンタ』として……。」
……あ、あの猫…………。
ニャンタ…………。
「お前は『自分がニャンタを可愛がっていた』というが違う。
ニャンタとして可愛がっていてくれたのは、お前が住んでいる今の家族達だ。
お前がユーザー認証しプレイヤーがカタストロフィを起動した際、猫の身体からお前のこのボディにデータが送信された時。
彼らに家族として暗示をかけたのだ。
だから正確には『家族としていた人々がお前を可愛がっていた』だ。」
じゃあ……。
じゃあボクはリュフォーで、2011号で、ニャンタってことなのか……?
「……ああ、そしてあっしの優秀な息子だよ。
2011号……いや『リュフォー』。
お前は執行者としてプレイヤーの命令には逆らうことができない。
プレイヤーが操作している間、お前は無意識になり特殊な光を出しゲームから除外するんだ。
それがカタストロフィデバイス。
この状況になるとお前は自我を喪失する。」
まるでゲームキャラみたいに……いや『まるで』ではないのか……。
「そうだよ……だけど、お前が倒れた時、探偵団部屋でメルカっていう女の子が襲撃者に襲われ、実はお前はプレイヤーに操られたんだ。
だがその時、お前はプレイヤーへ抵抗して倒れたんだ。動けないはずの命令に逆らってね。
そしてエラーが重なって今、こうして動けないって感じなの!
その心意気!我が息子としてよくやったわ!」
メルカは……?無事なのか……?
「起きてから友達に聞きなさい!あっしは何でも知るわけじゃねぇぜよ!
デバイスは最終的に作動したってログはあるけど……。」
あ、はい……。
「でも知ってんのはリュフォー。
あなたはとてもよくできた息子!自慢の息子よ!」
「うん……ありがと。お、お母さん。」
あ、声が出た……。
▽ ▽ ▽
「……3066号が接続してきているわね。こっちに来ているわ。」
「え……。」
ボクの視界には何も映らないけど……。
昔の古い映像がランダムで蘇ってきている感じの光景ばかりだ。
『あ~~……リュフォー君、聞こえる?』
ハナビさんの声だ!
「聞こえます!!」
「きゃ~~娘ぇ~~!!お母さんでしゅよ~!!」
『その声は……お母さん!?
6年ぶりじゃん!!いや、私の中に入っていたお母さんとは違うお母さんなんだろうけど!!』
「やっぱり男の子もいいけど!あっしは女の子のほうがいいッ!!」
ボクの中にいるお母さんに遠回しに自分を否定されたんだけど!?
さっきの感動のセリフ何だったんだ!?
『いろいろ言いたいことあるけど!お母さん!リュフォー君の体調はどうなの!?』
「え……ふつーに元気だけど?
変数なら直したし、今記憶をもとに戻してる最中。
リュフォーが起きようと思えば再起動、余裕だよ。
全ての遺物だのオーパーツだのの祖の力を舐めるなぜよ~!
それより娘~~!いい人は見つけたの~~?
あっしは孫の顔が見たいわ~~!!」
『話が本当にこじれるからやめて!!
そしてなんでどのお母さんも、このうッざい母親ムーブしてくるの!?
孫ができても彼氏ができても、ハナビはお母さんにだけは言いたくないんだよ!!』
「おい!
お前、お母さんになんちゅう言葉で言っちゅうに!!
まっこと許せんぜよ!」
『だああああ!!
6年ぶりに聞いた!そのよくわからない方言!
何言ってるのかわからないから、標準語で話してよ!
今、お母さんと話している場合じゃないから!』
ボクの頭の中で真のお母さんとハナビさんが喧嘩してる……。
なんだかすごい状況だな…………。
っていうかハナビさんってもしかして、ボクの妹に当たる人なんだよな……。
年上の……妹……か……いやボクの方が3000歳くらい上らしいけど……。
あとボクの頭の中で喧嘩しているのは大丈夫なんだろうか……。
脳?に異常が出たりしないだろうか……。
『改めて聞くけどリュフォー君を起動させることができるんだね!』
「起動できるけど~~!
お母さんは娘ともうちょっと話していたいっていうか~~!」
『無駄話してる暇なんてないんだよ!!リュフォー君!!
今、そっちに君の再起動コマンド送ったから、それを使えば起きれるから!』
ボクの目の前に『再起動』と書かれたウィンドウが出現する。
これに触れれば……。
「だぁ~~め!娘とお話しするの!!」
再起動ウィンドウに触れようとすると姿が見えないくせに、お母さんがずらして妨害してくる。
「あの……ボクも起きたいんだけど……。」
「やぁ~だ!
男である君の中にいたせいか、娘と話すのすごく気分がいいっていうか~~!」
『お母さん!妨害しないでよ!』
「ちぇ~~……。じゃ、頑張ってねリュフォー。」
「……うん。」
ボクは返事をすると元の位置にウィンドウが戻ってくる。
まぁ色々とあったけどこのお母さんと話せてよかったな……。
色々と知れたし……また会ったら、もう少し長く話してあげよう…………。
「ゲームは嫌いになってもお母さんは嫌いにならないでね!
あとお母さんとしては、もう少し触手もの以外のエ□本を読ん」
問答無用で再起動ウィンドウを今世紀最大の速度で連続でぶっ叩く!
何で知ってるのかわからないけどこの場にいたくない!!
そして、できることならお母さんにはもう二度と会いたくない!!
会いませんように!!二度と会ってたまるかッ!!
さよならグッバイッッ!!
※ブックマーク、評価、レビュー、いいね、やさしい感想待ってます…!!
この物語の『更新』は現状『毎週金、土、日』に各曜日1部ずつとなります。
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~FrG豆知識のコーナー~
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リュフォー「お母さんって、どういう見た目だったんですか?」
ハナビ「デッサン人形みたいな感じよ。単眼でよくわからな方言を話すの。」
リュフォー「予想以上に衝撃的な見た目だった……。」
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作者の独り言。
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※皆様!うれしい報告です!本作を脱稿しましたアアア!!
指が痛い!!腕も痛い!!仕事もある中、私頑張った!!
7月いっぱいで本作は終わります!!
例のごとく文章力はgdgdですが、自分なりに納得はできるものに仕上がりました。
本作が終了したら感想を開放します!!(ネタバレはやめてね……。)
最後まで何卒お付き合いくださいませ!!




