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第11ゲーム『4日後と時計』




 ――あれから、4日後。





 ……僕らはあれからずっとロウスを探していた。





 だがどこにもいなかった。ロウスの親である警察も探したが、まったくどこにもいなかったらしい。

 昨日、僕らは事情聴取を受けたが、成果はなかったらしい。

 警察官であるロウスの親御さんは相当焦ってた。うわごとのように『公私混同はよくない』と呟いていた。

 ……本当に不安そうな大人の顔は、ずいぶんと久しぶりに見た気がした。

 だが、僕がログアウトをしてからロウスが何をして失踪したかもわからなかった。

 事情聴取が終わったのが、昨日だ……。

 カルビのプレイヤーであるルビからそれを聞かされた一昨日から、ゲームにはここ数日ログインできずじまいで予言を確認する暇もなかった。





 僕らは仲間が消えてから、だいぶ不安になっていた。





 リュフォーの言っていたことが事実だとようやく身に染みて実感したのだ。

 仲間が消えてから、気が付くなんて……。母さんの時と同じだと、僕は再度実感したのだ。



 ――……これからどうしようか……。





「で、あるゥからすィてぇッ!2000年代で最大の重要な事件はいろいるォあるが~!

…………おい!聞いているゥのかァ!双子ォン!」

「「あ……すいません……。」」

 歴史の授業をしていたホーリーに僕と隣に座っていたナミカともども叱られる。

 おそらく気分が晴れていないナミカも同じことを考えていたのだろう……。



「社会に出たらァ!人の話をしっかり聞いておくゥ!これァ!常識だァ!

人の話を聞かずに何が起こるかわからない社会に飛び出て、後悔するなんて許さないからなァ!

双子ォ!昨日休んだ分、話を聞いて社会への糧にしろォ!」

「「は~い……。」」

 それどころじゃないっての……。

「おっほん!んじゃ改めてェ!

2000年に入ってからの旭我国(この国)の最大の事件と言えば貴様らァも、覚えがあるよな?

弥生ィ!答えろ!」

 ホーリーに言われてメルカが教科書を見ながら答える。





「……えっと……『九・一八事変』……?」

「そう!2021年!今から6年前の9月15日~19日に起こった『九・一八事変』

通称『エイドスドアルーム事変』だ。

エイドスドアルームに突入した日からこの呼び名が付いたとされる。

夜にニュースで速報が出て!首都、東協都トーキョート郊外の地中より巨大な未確認不明物体出現ってなってなァ!

そして、空が真っ赤に染まったんだよ!

その物体が世界をぶっ壊すような代物だと判明し、国中大騒ぎだ!」

 ホーリーは6年前の時のことを熱弁する。





 あの時は大人達が騒いでたくらいしか覚えがない。

 なんだか世界崩壊させるような機械が地下から現れたって……。

 学校が休みになったりした。







「その時、普段都市外にいる危険生物を倒したり、危険な環境下を護衛したり、遺跡を漁っているアウトゥロォーな冒険社連合が600平方キロメートルの巨大球体を攻略したんだ。

画面の中ではなく実物のモンスターと戦っている彼らを見習って、貴様らァにはもっとォ世界を見て成長して欲しい(ほすィー)ね!」

 はいはい……と心の中で毒づく。

 僕らの世界にはモンスターがいる恐ろしい環境が都市の外に広がっている……らしいが都市内にいる限り、その脅威にさらされることはない。

 僕らには無関係の話だ。どちらかと言えば人の方が恐ろしいよ。

 そう思い平穏に浸っているかと言われれば、ロウスの件でそうなのかと少し疑念が生じるんだけど……。






「そういえば、アカリ先生(せんせィー)!『九・一八事変』は当時あなたから見てどう思われましたか?」

「…………う”ぇェッ……!?

ッーー……。

えー……っと。」

 ……突然当てられたのか、妙にアカリ先生が挙動不審だ……。

 声も上ずっているし……。





「あーーすごく大きかったデス……。」

「まさァか!実物を見たことがァァ?」

「……アーうん……はい。中はアホみたいに広……そうデシタ。

いやーきっと中に超文明のスーパーすげーロボットとか、怪獣とかがいてもおかしくない物々しい雰囲気デシタ~。

当時、あそこの近くに姉妹ともどもいましたし……。いろんな人に迷惑かけて何とかしたことを覚えてます。

あはは~……今では世界が崩壊しなくてよかったな~……っておもってマス。」

「やはり……外で見ただけでこういう雰囲気がつたわるゥ!

というのが歴史の転換期を目撃するゥということだァ!

貴様らァわかったかねェ?」

「「「「は~い。」」」」

 にしても今日のアカリ先生歯切れ悪いな……。





 ▽ ▽ ▽ 





「さてと……次は……。

ん?もうこんな時間か……チャイムが鳴らないじゃないかァ。

……教頭に言っておかなければ……。

続きは来週ゥだァ!今日はこれまでェ!」

 ホーリーが時計を確認したかと思えば教材をサッとまとめて教室を足早に去っていく。

 そして僕は些細な疑問を抱く。



 ――あれ?授業ってこんなにも早く終わったっけ?

 体感時間が早く感じる……。







 ――時間??そういえば確か……予言は……。





【明日、教室の時計が壊れる。】





 もしそうだとして、4日経った今も時計が壊れているんだとしたら……。

 そう考え、スマホを見てみる……。

 …………短針とスマホの"分"が合わない…。



 ――8分!8分ズレているんだ!あの時計!



 それにやけに金属でできた短針がねっとりと、ぎこちない動きをしている……。

 ズレているんじゃなくて本当に故障しているんだ!

 予言が当たった……第二の予言が当たってしまった……。

「ナオト……時計……。」

「うん、気が付いた。」

 ナミカも気づいたらしい。

「私、今朝友達に確認したんだけど……。

あれ、この前買ったばかりでさらに言えば昨日、ちょっとおかしいってことにホーリーが気が付いて時間を合わせたばかりらしいよ。」

「え……それ元々不良品だったのかな……。」

「どうなんだろ?針の動きも怪しいし。そうかもね……。」

 なるほど、昨日ホーリーが自分自身で合わせたから、時計がずれていることに気にかけようがなかったんだな……。

 まぁ僕らが時間を合わせる必要性はない。

 これをうまく利用できれば8分授業が短縮できるからね。





 ――だけど『予言書』に載っていた予言が当たって、さらに言えばロウスもいなくなるなんて……。

 本格的にフロントライゲーム・オンラインを調べる必要性が出てきたな……。





 ここ最近起こった異常事態はゲーム慣れしていない大人に任せてもわからない気がする。

 何より予言書が僕の手元にある以上、僕も『当事者』と言って差し支えないだろう。

 大人にはいずれ任せるにしても僕らがまず行動を起こさなくてはきっと始まらない。





 ▽ ▽ ▽ 



 そうして僕らの1日は過ぎていった。

 アカリ先生は女子グループの席でご飯を食べていたからタクローが昼休み悔しがっていたけど。





 気が付けば放課後。





「私、ドリンクバーとチョコパフェで。」

「メルカは同じくドリンクバーとイチゴパフェ。」

「アタシはメルカと同じので…………。」

「俺様は豪快なガーリックステーキ!」

「晩飯前だというのによく食べるな……。僕はコーンポタージュ。」

「……バニラアイスを一つ……。」

 僕ら4人は、隣のクラスにいるカルビのプレイヤーであるルビとリュフォーを呼び止めて、六人で近場のファミレスでリュフォーの返事を聞くついでに僕らの現状をまとめることにした。



「リュフォー……同じ学年なら君も知っているんじゃないのか?隣のクラスで僕らの遊び仲間ロウスが失踪したこと……。」

「……ああ、知ってる。」

「それを知ったうえで答えてほしい。僕らも他人事とは言えなくなってしまった。

仲間が失踪した。ゲーム側から協力させてくれないか?」



「…………ボクもあれから考えていたんだ。

危機を承知で君らも同じような目に合うかもしれないけど、それでも協力を申し込んでくるなら……。」



 リュフォーは覚悟が宿った目つきで僕らを見つめる。



 そして頭を軽く下げ……ただ一言を告げる。







「改めて一緒に妹を探してくれ。」




※ブックマーク、評価、レビュー、いいね、やさしい感想待ってます…!!

この物語の『更新』は現状『毎週金、土、日』に各曜日1部ずつとなります。



■ ■ ■ ■

~FrG豆知識のコーナー~

■ ■ ■ ■

ナオト「リュフォーはゲームはしないのかい?」

リュフォー「レトロゲームくらいしかしてないんだよね。ドットが好きだから。」

ナオト「……少しわかる気がする。」

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